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2017/03/14(火) 11:30

「女性が輝く社会」へつなげるトイレ環境は整うか 国交省 トイレ協議会

投稿者:  牧田司

 国土交通省は3月13日、第3回「女性が輝く社会づくりにつながるトイレ等の環境整備・利用のあり方に関する協議会」(座長:大森宣暁・宇都宮大学教授)を開催し、最終取りまとめ案について論議した。「トイレは女性活躍の象徴」(長井総和・国交省総合政策局安心生活政策課長)という観点から、外出先で利用するトイレ、授乳・調乳スペースやおむつ替えスペースのあり方について参考となるよう望ましい姿を示した。今年度末までに取りまとめが行われる予定。

 多くの不満が寄せられている女性トイレの行列解消については、用足し以外の目的で利用する人が多いことから、便器数を増やすとともに個室便房とは別のフィッティングルーム、パウダーコーナーを整備することも有効としている。

 トイレの清潔性・快適性の向上については、定期的な清掃の回数を増やし、快適性を向上させるための設備の充実が有効としている。

 安心・安全の確保では、死角をつくらないこと、個室便房内に防犯ブザーを設置するとともにキャリーケースなど荷物を置くことができる広さを確保することなどが望ましいとしている。

 授乳・調乳スペースの設置については、絶対的なスペース不足を解消するため他の既存のスペースを一時的に提供し、また、家族で使える個室スペースなどを整備して多様なニーズに対応することを提案している。

 おむつ替えスペースについては、男性トイレにも設置したり、ベビーカーや荷物などの置き場所を確保したりすることを求めている。

 大森氏は、「トイレは用足しの目的だけでなく多様な機能が求められている。とりまとめは公的な拘束力があるわけではないが、豊かな社会の実現に貢献できるよう期待している」と語った。

◇       ◆     ◇

 女性トイレに特別関心があるわけではない。ただ、マンション建設現場のトイレを見たり、現場で働く女性に話を聞いたりして、女性の建設現場への進出を阻む要因の一つにトイレの問題があることを知り傍聴した。

 その結果、建設現場だけではなく駅や公園、職場のトイレ環境が劣悪であることを知った。

 国交省のアンケートで職場のトイレを「ほとんど利用しない」「利用しない」女性が30.5%(男性は12.4%)もいることにショックを受けた。同省はその理由として「就労の有無が影響していると考えられる」としているが、これは意味不明というか認識不足だ。職場のトイレを利用しないというのは、自らが勤務する会社のトイレを利用しないと解するべきだ。それだけプライバシーが守れず、快適性に欠ける職場のトイレが多いと考えるべきだ。

 もう一つ。たくさん不満があるにも関わらず、女性委員が取りまとめ案に対して寛容な態度を取ったのは意外だった。

 取りまとめ案は16ページにわたるものだが、文末はほとんど「望ましい」「考えられる」「有効である」「必要がある」「意見がある(多い)」「留意する必要がある」という述語で締めくくられている。

 また、「各施設管理者には、トイレ等の質・量を向上させるためのスペースを確保するのが困難であることや、費用対効果等経営上の観点からコスト的な制約があることに留意すべき」という文言が何度も出てくる。

 一方で「女性が活躍できる」「女性が輝く」環境を整備すべきと言いながら、他方では管理者のコストに留意すべきだという。つまり、快適なトイレ環境を整備するかどうかは管理者に委ねられているとも受け取れる。協議会には建設業、鉄道会社、民鉄協、ショッピングセンター業界からも多数参加しており、これらの業界に配慮したものだろうが、これでは「女性が輝く社会づくり」が実現できるのか心もとない。

 女性委員から「最近の新幹線はきれいになった」とJRを喜ばせる声もあった。通常の列車よりはるかに料金が高く、航空会社とも争っている新幹線のトイレがきれいなのは当然ではないか。むしろ、38.4%の女性が駅のトイレをほとんど利用しないことを問題視すべきではないのか。コスト優先のためにトイレ整備が後回しになっても女性は耐え忍ぶのか。トイレは尊厳の問題でもある。それが費用対効果の対象になるのはどういうことか。

 この種の報告書によくある〝玉虫色〟の域を今回も出ていないというのが率直な印象だ。

女性輝けないトイレ「利用しない」公園90%、駅38%、職場30% 国交省アンケート(2017/1/21)

 

 

 

 

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