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2017/04/01(土) 12:18

4月1日付 特報!「アンタロ」に匹敵する業界名物男を業界団体が公募

投稿者:  牧田司

 丸谷才一のエッセー集「月とメロン」(文芸春秋)に「人名の姓と名の一字づつを取つて、略称それとも愛称ないし綽名のやうにして呼ぶのはよくあることで、これは特にンがはいつてゐるときに好んで口にされる。俳優ではバンツマ=坂東妻三郎 エノケン=榎本健一 清水金一が好例だが…」とある。

 確かにわれわれは人を愛称で呼ぶのが好きだ。俳優・タレントではこのほかアラカン=嵐寛壽郎、マツケン=松平健、キムタク=木村拓哉など数え切れないほどあるはずで、プロ野球ではマエケン=前田健太が筆頭格で、競馬ではアンカツ=安藤勝己、指揮者ではコバケン=小林研一郎、小説家ではマルケン=丸山健二、政治家ではミヤケン=宮本顕治、シミタツ=清水達雄、実業界ではナベツネ=渡邉恒雄などが有名だ。

 このほか、アベサダ=阿部定(これは本名)、ロン・ヤス=中曽根康弘首相とレーガン米大統領、オグシオ=バドミントンの小椋久美子と潮田玲子ペア、キンツマ=金曜日の妻も流行した。ジャイアンツファンはハラタツ=原辰徳の時期もあったのではないか。あっ、出戻りのムネリン=川崎宗則を忘れていた。

 こうしてみるとやはり「ン」がつくものが多い。これは人名ではないが、わが業界にはシミケン=清水建設もあるし、エドケン=そのものずばりエドケン(かつての建売住宅業者)もあった。

 ところが、これほどたくさんの愛称、あだ名がつけられている人や会社が多いのに、わが住宅・不動産業界は極めて少ないというか、記者の知る限りアンタロ=安藤太郎(江戸英雄とともにわが国のデベロッパーの顔として世間に知られた住友不動産の会長・社長。2010年、100歳で死去)しかいない。(以上、敬称略)

 これでは情けない。それで暇に飽かしてアンタロをしのぐ業界人候補はいないかと考えた。

 真っ先に浮かんだのは大京の創業者・横山修二氏だ。愛称は「オヤジ」。これは身内だけしか使われなかったが、マンション業界に君臨した人にふさわしい呼び名だ。1925年生まれだから今年92歳。馬主としても知られており、記者は横山氏所有の馬でウマタン=馬単などなかったころ5万円の万馬券(100円の掛け金で配当が5万円)を取ったこともある。 

 他はどうか。これがなかなか見つからない。そもそも現役の社長で姓や名に「ン」が付く人物が少ない。なんとか調べたり同業の記者に聞いたりしたら、オノケン=小野寺研一氏(住友不動産副会長)、カメサン=中井加明三氏(野村不動産ホールディングス会長)、ヤナケン=谷中健太郎氏(日本RSP協会理事)、カトケン=加藤憲一郎氏(住宅評論家)が見つかった。

 ほかではゴロがよく、わが業界を代表する人物にふさわしい人としてヤノリュウ=矢野龍氏(住友林業会長)、アベテツ=安倍徹夫氏(アンビシャス社長)はどうか。

 矢野氏は昨年、木住協の会長を退くスピーチで「time flies like an arrow 光陰矢野如し」とおやじギャグを放ち、「わたしは76歳。立派な後期高齢者になりました。安田善次郎は『50、60は洟垂れ小僧、70は働き盛り、80、90は男盛り』と言った。その伝で言えばわたしは青春を謳歌する年齢。80、90で男盛りになれるかどうかは嫁さんとよく話し合う」と爆笑を誘った。

 安倍氏はアベシン=安倍晋三氏とは縁もゆかりもないが、「オヤジ」が采配を振るった大京時代の7人の侍の一人で、唯一今もなお現役社長として旗を振る。字は右でも左でも書け、首都圏全沿線の各駅をそらんじて見せる技の持ち主でもある。

 まだある。クマケン=隈研吾氏(建築家)、タネマキ=種橋牧夫氏(東京建物会長)、ハタボウ=畑中誠氏(東京建物相談役)、キヨチャン=金指潔氏(東急不動産ホールディングス会長)、ヒラコウ=平田恒一郎氏(ナイス社長)はどうか。

◇       ◆     ◇

 ゼンタク=全国宅地建物取引業協会連合会、フドウキョウ=不動産協会など数えれば20は下らない、まとまりがありそうで足並みがそろわないわが業界団体は4月1日、記者の記事に呼応したのか、混迷の度を深める時局の収拾を図ろうとする政府の考えを忖度したのか、はたまた不透明感が増す環境を一変させ、沈滞ムードを一掃する起死回生の策を打ち出した。

 「アンタロ」に匹敵する業界人の愛称(愛妾ではない)を自薦他薦問わず広く公募し、その名を顕彰する制度を新設することを決めた模様だ。

(RBA  4月1日発)

 

 

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