三井ホームは4月19日、グループ会社の三井ホームコンポーネントが実質的に施工したテレビ神奈川の多目的倉庫「(仮称)tvk ecom park」が上棟したのに伴いメディア向け見学会を行った。
施設は、横浜市西区西平沼町6(tvkハウジングプラザ横浜に隣接)に位置する木造枠組壁工法2階建て延床面積約713㎡の準防火建築物。着工は2017年1月、完成予定は2017年6月。建築主はテレビ神奈川。設計はtvk コミュニケーションズ 一級建築士事務所、施工はtvk コミュニケーションズ。部材供給と建て方施工は三井ホームコンポーネント。
建築主が地球環境にやさしく周辺環境にも調和する建築を希望し、木材を使用した建築工法を望んだために実現した。単なる倉庫でなく事務所も併設した建物で、太陽光発電設備の搭載も視野に入れた緩やかな片流れ屋根が特徴。
建物全体の高さを抑え、かつ内部の有効率を高めるために耐震性に優れたステンレス製接合金物「コネック」を採用した「コネックトラス構造」とし、吹き抜け部分の最大天井高5.8m、スパン16.2m、長さ18.9mの大空間を実現した。
同社はまた、2×4材を用いた軸組工法の簡易型倉庫を計画しており、液体ガラスを採用することで現しに見せる工夫も行うことも明らかにした。
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美しい。冒頭の2×6の壁と屋根部分の「コネックトラス」の写真を見ていただきたい。下手な記事などいらない。
美しさを堪能して帰ろうとしたら、別の記者の方が「コストはどうか」という質問をした。大事なことだ。記者の仕事も含めあらゆる取材対象の〝コスパ〟(コストパフォーマンス)を意識しないといけない。
しかし、質問した方の「コスト」とは、鉄やコンクリとの比較においてどうかという、つまり鉄やコンクリのモノサシで「木」の値段を計ろうとしている魂胆が透けて見える。
鉄やコンクリが美しくない、劣っているというのではない。それぞれ美しい。鉄は森羅万象を撥ね返す凛とした美しさがあるし、コンクリは何ごとも吸収してしまいそうな堅牢な美しさがある。
しかし、木が持つ美しさは単に美しいというだけでなく、人や地球環境にやさしい特長を持つ。そのトータルな美の価値、効用の価値を金額に換算したらはるかに鉄やコンクリに勝る。この価値を念頭に置かないで、鉄やコンクリと比較し〝安いほうがいい〟という結論を出すとすれば、結局は〝賃金だって安いほうがいい〟という極論を導きかねない。極めて危険な思考方法だと思う。
そこで、法の壁は2×6より厚くて(同社は反論するかもしれないが)無慈悲なのは百も承知で、返ってくる答えも分かっていたが、質問された記者の方にもわかってもらいたくて皮肉を込めて質問した。「着衣のマハもいいが、裸のマハがいいに決まっている。どうして外観はトタン(ガルバニウム鋼板など)にして美しさを覆い隠さないといけないのか」と。担当者は予想した通り「現しにするのはこれから」と答えた。
さらに言えば、全ての木造を手掛けるメーカーにお願いだ。もうメディアの質問意図を忖度して鉄やコンクリの土俵に素っ裸で上がるような真似は止めていただきたい。(理論武装してという意味ですから誤解しないでください)
参考までに。先の「コストはどうか」という問いに担当者は「鉄と比較して坪あたり2万円安い」と答えた。もちろん、これには木の美しさや人と地球にやさしい価値は含まれていない。もう一つ言っておきますが、わが第三企画の印刷工場の屋内の壁は本物の杉の無垢材ですからね。