ポラスグループのポラスは6月29日、「第4回POLUS-ポラス‐学生・建築デザインコンペティション」の公開審査会を行い、最優秀賞(賞金50万円)に永田琴乃氏(日本大学大学院)と稲葉来美氏(横浜国大大学院)の共同作品「生きる蔵を手伝う家」を選んだ。
コンペは、大学院や大学、高等専門学校、専修学校、高等学校などに通う学生を対象に、建築の道を志す学生の自由で新鮮な発想(アイデア)を表現・公表する機会を設け、応援するもの。今回のテーマは「土蔵をつつむ今、今をつつむ未来」で、南北15m、東西60m(900㎡)の土地に木造の建築物5棟を建設するのが条件となっていた。応募総数205件の中から第1次審査を通過した作品5点を公開で審査した。
審査委員長の青木淳氏(青木淳建築計画事務所)は、「各作品とも蔵をテーマに様々な答えを導き出していたのが面白かった。最優秀作品は想像力をかき立てるアイデアがよかった」と講評した。
優秀賞(賞金20万円)は笹尾浩二氏(近畿大大学院)の「路に住まい、路と暮らす町」で、入選(賞金各10万円)は土居大夏・加賀谷元希・坂口佳氏(京都工繊大大学院)の「イキモノの塒」、田中翔太氏(京都工繊大大学院)の「土蔵をぬけて」、藤岡宗杜氏(大阪工大大学院)・前岡光一氏(大阪工大)の「彩りサーカス」の3点。
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記者は5つの作品を比べて最優秀賞に輝いた作品が一番印象に残った。発酵蔵で麹菌を育て、住宅の中に麹菌を感染させて、人と菌が共に生き、やがて街全体を黒染めさせるという現実離れした奇想天外な発想が面白いと思った。
現実の世界では、麹菌に感染することなどありえないのではという疑問もあるが、麹菌ではなく他のものに置き換えたら住宅や暮らし、街並みを変える可能性を秘めていると考えた。
審査委員長の青木氏をはじめ審査委員の今井公太郎氏(東京大学生産技術研究所教授)、原田真宏氏(芝浦工業大学教授)、永山祐子氏(永山祐子建築設計)、 池ノ谷崇行氏(ポラスグループ)らの評価も高く、2位以下に大きな差をつけて受賞した。
最優秀賞に贈られる賞金50万円の遣いみちを二人に聞いた。永田氏は「新しいメガネを買いたい」、稲葉氏は「新しいマウスを買う」と喜びを語った。稲葉氏は作品を考えるにあたって小豆島の蔵を見に行ったという。
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いつも思うことだが、作品そのものの出来栄えはもちろんだが、与えられた7分のプレゼン時間の中で作品をいかにわかりやすくアピールする能力が問われる。今井氏も「みんな比較が難しかった。説明を聞いていていかに深く考えているかを説明する力が問われる」と話した。
今回よかったのは、「あー」「えーっと」などの機能語があまり飛び出さなかったことだ。
一つよくわからないのは、作品条件にはいっさい法規制が課されていないことだ。商品化を前提としないコンペだからこれでいいのだろうか。