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2017/07/25(火) 16:37

「わが国の賃貸業はガラパゴス」 大和ハウス・堀専務 賃貸が伸びる理由を聞いた

投稿者:  牧田司

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「ロイジェントパークス四ツ谷」

 大和ハウス工業が「第6回 業界動向勉強会」を開催し、賃貸住宅事業について同社取締役専務執行役員・堀福次郎氏が講話したことを紹介し、その関連として新浦安のホテルついて書いた。今回は、その本題について書く。

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堀氏

◇            ◆     ◇

 わが国の住宅着工はここ数年、政府の景気刺激策、震災後の住宅再建、消費増税前の駆け込み、相続対策などの要因により意外と健闘しているが、人口・世帯減少が加速度的に進むことを考えれば賃貸市場が縮小するのは誰が考えても同じだ。堀専務も同じだ。

 「当社の2017年度の賃貸事業売上高はセグメント別で初めて1兆円を超える見通しで、売上高の85%は2階建て、3階建てだ。しかし、将来的には現商品のほかの改良商品、新商品、関連市場、新市場分野を伸ばし、現商品とその他の商品比率を50:50にしなければならない」とマトリックスを示しながら説明した。

 その通りだと思う。堀専務が伸ばしたい分野として例示したのは家具家電付き賃貸、外国人向けサービスアパートメント、シェアハウス、新築民泊、外国人留学生向け宿舎、サ高住、アパートメントホテルなど30近い事業を挙げた。

 堀氏が「ガラパゴス」と語ったように、従来型のレベルの低い利回り優先の賃貸事業は完全に曲がり角に来ている。(レベルが低いからこそ分譲が伸びる)

 同社が現商品の改良型として挙げたのが「S&SW仕様」の賃貸だ。女性向けにホームセキュリティシステムを標準装備とし、ワイドな洗面化粧台、1616サイズのバス、10%以上の収納率確保、女性に好まれるデザインなどを採用して飛躍的に伸ばしたのだそうだ。(わが家のかみさんが「ダイワハウスの賃貸はいいわよ」と絶賛していたが、記者は見たことがない)

 もう一つ、紹介したのが家具家電付き賃貸住宅だ。報道陣に公開した「ロイジェントパークス四ツ谷」だ。四谷三丁目駅から徒歩4分の14階建て全91戸。専用面積は約25~40㎡。賃料は15~20万円。家具、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、照明、炊飯器、ポットなどがついており、オプションで寝具や食器類も借りられる。キャスター付きトランク一つで引っ越しができるものだ。男性を中心に契約・申し込みが10件あり、1棟売りとしての話もあるようだ。

 立地条件からして分譲マンションにしたら坪単価は最低450万円だろう。グロスで3,400万円以上だ。投資用ならともかく、25㎡で3,400万円の分譲マンションが早期に売れるかどうかは疑問だ。リスクが大きすぎる。賃貸にしたのは正解だろうと思った。一等売りにすれば一定の利回りも確保できるはずだ。

 勉強会では、堀氏は全827戸の「パシフィックロイヤルコートみなとみらい」の100戸分を外国人居住向けに七面鳥が焼けるオーブンを採用したりしてプランを設定したのが大正解であったことも話した。

 企画段階で「私は面の皮が厚いので聞き流したが、827戸の賃貸などありえないなどと侃侃諤諤、喧喧囂囂の論議があった。企画はヒットしたが、こんなに外国人居住が増えるとは夢にも思わなかった」と語った。現在、827世帯のうち350世帯が外国人居住だという。

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「ロイジェントパークス四ツ谷」の室内(左にテレビ、天井には室内干しポールもあった)

◇       ◆     ◇

 堀専務の話は面白いと前回書いた。ものを見る目が人とは違うからだと思う。漫然と日々生起する出来事を眺めていては問題点など浮かばない。不動産業に限らずあらゆるビジネスはソリューションだ。「わが国の賃貸業はガラパゴス」という視点が新しい発想を生み出すのだろう。

 裏を返せば、圧倒的多数派を形成する賃貸の守旧派の存在が同社の賃貸を伸ばしている要因だ。堀氏は一方で守旧派を応援しているのではないか。記者もそうだ。時代遅れの賃貸が続く限り分譲市場は縮小はするけれども事業として継続できると考えている。

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