三菱地所は9月8日、同社グループが〝都市と農山村がお互い元気になる社会〟の実現を目指し取り組んでいる山梨県北杜市のCSR活動「空と土プロジェクト」が10周年を迎えるのを記念して、純米酒「丸の内」」に加え純米焼酎「大手町」を販売開始するとともに、木材供給を行う「三菱地所グループの森」を始動させたと発表した。
「空と土プロジェクト」は、同社グループが2008年度に「地域社会との共生」をテーマとした取り組みとして始動。山梨県北杜市で活動を行うNPO法人「えがおつなげて」と連携し、限界集落地域である増富地区を中心にともに支えあう持続可能な社会の実現を目指し活動を行っている。2011年には山梨県と「山梨県産材の利用拡大の推進に関する協定」を締結し、国産木材、山梨県産材の活用を積極的に行っている。
これまでグループ社員や顧客などを対象とした体験ツアーを81回実施し、延べ参加者は2,331名に上っている。
純米酒「丸の内」は、耕作放棄地を開墾し、棚田を復活させ、有機農法で酒米をつくり地元の蔵元で醸造。2011年から丸の内のレストランやショップで販売開始。2013年には約4,700本を販売したが、近年の天候不順や獣害により2016年は約3,000本に減少している。
純米焼酎「大手町」は、食品ロス削減の観点に立ち、純米酒原料の使用基準に満たない酒米と東京農業大学が開発した天然酵母(花酵母)を使用して、地元の武の井酒造と共に開発。9月15日(金)、はせがわ酒店パレスホテル東京店で販売開始する。4合入り1,689円(税抜)。
収益の一部はNPO法人「えがおつなげて」に寄付される予定(2015年は約36万円、2016年は約28万円)。
「三菱地所グループの森」は、北杜市市内の管理が行き届いていない山林を再生し、三菱地所グループへの木材供給及び社員研修の場として利用するもの。
会見に臨んだ三菱地所執行役社長・吉田淳一氏は、「私は小学生のころ、山口県下関の親戚の田んぼで田植えをしたことがある」と自らの体験を交え、「今年3月までCSRの担当役員をしていた関係で、6回ほど体験ツアーに参加し、田植えも経験した。田んぼの泥があたたかく包んでくれる感動を思い出させてくれた。今後も持続可能な社会の実現のため取り組みを強化する」と話した。
また、純米焼酎「大手町」で乾杯の音頭を取った同社取締役会長・杉山博孝氏は、「10年前にプロジェクトを立ち上げたとき、私が担当役員を務めた。やるんだったらずっと継続し、事業に結びつけるような活動をしないといけないと考えてきた。このように活動が発展してきたのがとてもうれしい」と語り、「私どもは〝大・丸・有〟を掲げているので、〝有楽町〟が欠けているは残念」と参加者を笑わせた。
NPO 法人えがおつなげて代表理事・曽根原久司氏は、「耕作放棄地、森林、空き家の資源を活用して10兆円市場にするのが私の夢。夢の実現のためさらに活動を強化する」と力を込めた。
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記者は過去2回、田植えと稲刈りの体験ツアーを取材している。吉田氏が小さいころ、田んぼにある肥溜めに落ち糞尿まみれになったことまで聞き出し、感動的な記事を書いた。今回の発表会を楽しみにしていた。
聞きたいことがたくさんあった。今回の空土プロジェクトも含めデベロッパーのCSR活動はどうあるべきか課題は何か、メディアは何を伝えるべきか、獣害をどう防ぐのか、北杜市の市花ヒマワリをテーマにした〝有楽町〟の商品を加えるべきではないかなどだ。残念ながら吉田社長も杉山会長も質疑応答の前に退席されたので聞けなかった。
ヒマワリといえばあのソフィア・ローレンの「ひまわり」畑が目に浮かぶ。あれは悲恋物語だったか。〝有楽町で逢いましょう〟もまた古いか。
曽根原氏にはシカ、イノシシなどの獣害のほか山ヒルについて聞きたかった。
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CSRを含めてデベロッパーの広報活動に参考になる記事をハウジングライター・藤原利彦氏が9月4日付「週刊住宅」のコラムで書かれている。
メディアモニタリング業務や広報効果度分析を主業務とするデスクワンが、全国紙5紙に掲載された記事スペースを金額に換算してランキングとしてまとめたもので、デベロッパーでは昨年度は3億3,000万円の三菱地所がトップで、2億6,000万円の三井不動産、2億2,600万円の森ビルがベスト3。以下、住友不動産、東京建物、東急不動産、野村不動産、コスモスイニシア、大京、東急不動産ホールディングスの順だ。
三菱地所、三井不動産が1、2位を争っているのは納得できる。しかし、記者は売上高に比して森ビルとコスモスイニシアが突出しているのに注目したい。何かと話題が多い森ビルはともかく、主力のマンションや戸建て以外にリノベーションやアパートメントホテル事業など話題を提供しているのが評価されているようだ。
さらに言えば、上場企業のCSR活動に対する拠出金(お金では換算できないものも多いのは承知するが)はバブル崩壊後一貫して減少しているはずだ。経常利益のせめて1%、できれば3%くらい拠出してもいいのではないか。CSR活動が企業価値を計る重要な指標になる社会にしなければならないし、企業もまた、CSR活動が投資家やメディア、一般の人に正当に評価されるように広報活動を強化すべきだ。
三菱地所グループ 山梨県産FSC認証木材の企画提案コンペに当選(2015/12/11)