東レ建設と総合地所が共同で11月下旬に分譲する「The FORESIS(ザ・フォレシス)」を見学した。JR我孫子駅エリアで実に9年ぶりの供給という全263戸の大規模マンションで、3LDKで3,000万円台の前半という価格の安さもさることながら、シニア層からの反響も約3割と多いのが特徴だ。
物件は、JR常磐線我孫子駅から徒歩10分、千葉県我孫子市台田一丁目に位置する14階建て全263戸。専有面積は68.88~83.85㎡、予定価格は2,900万円台〜4,200万円台(最多価格帯3,300万円台)。設計・監理・施工は長谷工コーポレーション。竣工予定は平成31年2月下旬。販売代理は東レハウジング、長谷工アーベスト。
現地は、約20年前から10年間くらいの間に「エールの丘」(482戸)「シティア」(851戸)「グラン・レジデンス」(731戸)「アクア・レジデンス」(424戸)の4棟約2,500戸が次々分譲され、概ね好調に売れたマンション街区に近接。
建物は、全戸南東向きで、駐車場は全戸分確保。住戸プランはファミリー向けの3LDKが中心。ディスポーザー、食洗機、床暖房が標準装備。天井高は2550~2600ミリ。1階住戸は専用サイクルポート付き。
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我孫子エリアで9年ぶりのマンション供給ということは、リーマンショック後は皆無ということだ。
上野東京ラインを利用すれば北千住駅まで22分、上野駅まで34分、東京駅まで40分。東武伊勢崎線なら南越谷駅圏あたりか。にもかかわらず9年間に1件のマンションも分譲されていないとは信じられない。
記者は昭和50年代から60年代、我孫子はもちろん、マンションや建売住宅の取材でJR成田線の布佐、木下、小林、安食などを頻繁に訪れた。多い時では年間に数百戸から1,000戸は分譲され、人気にもなった。
バブル崩壊後でも、前出の我孫子駅から徒歩6分の「エールの丘」(482戸、2000年竣工)が瞬く間に売れたのをよく覚えている。「売れたら頭を剃ってやる」と施工・分譲会社の長谷工コーポの広報担当者と賭けをし、その通り3分刈りしたからだ。坪単価は128万円だった。
そして今回。価格もまた信じられないくらい安い。時代が変わったといえばそれまでだが、かつて「北の鎌倉」と称され、明治から大正にかけ白樺派の文人が多く住んだ「我孫子」のポテンシャルはどうなったのか。
反響の3割が60歳以上というのも考えさせられる材料だ。先に書いたように、我孫子以遠の成田線沿線では昭和50~60年代に1万戸を下らない建売住宅が分譲された。それらのエリア居住者の需要を吸収する可能性もあると見た。
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一つ、驚いたことがある。パンフレットとシアターに星野順一郎市長が「市長インタビュー」として登場し、市の住宅地としての魅力、行政サービスの充実、住宅購入を検討しているユーザーへのメッセージなどを語っている。同市は人口減少を深刻に受け止めており、何とか歯止めをかけようと必死の取り組みを行っていることがうかがえる。
例えば行政サービス。同市は平成29年度まで31年間待機児童がゼロという。少子高齢化で要保育児童が減少しているからと思ったが、全然そうではない。1985年の保育園の定員は1,260人で、要保育児童は1,047人。その後、保育園の定員も要保育児童数も漸減しているが、定員は1998年の1,080人を、要保育児童は1992年の734人をそれぞれ底に増加傾向にあり、2017年度の保育園定員は2,217人、要保育児童は2,024人となっている。要保育児童はこの25年間で実に約2.8倍に増加している。厚労省の専業主婦世帯と共働き世帯の推移データとほぼ同じだ。
ここでまた考えた。仮に夫あるいは妻が東京に勤務すると考えると、ドアツードアまで約1時間だ。保育園に子どもを預ける時間を考慮すると1時間30分はかかりそうだ。いま保育料の無料化が検討されている。これはこれで結構だが、働き方改革を一層進め、保育士の確保なども同時に進めないと、子育てファミリー層の都心・駅近志向の動きは止まらない。
もはや価格が高い・安いの問題ではない。一方で都心のアッパーミドル・富裕層向けの価格上昇が著しく、物件によっては飛ぶように売れている-格差是正も喫緊の課題だと思う。
我孫子市の現在人口は約132,000人。同市の人口は平成23年の約136,000人をピークに減少に転じており、平成33年には約127,000人に減少すると推計されている。何もしなければ、それ以降は間違いなく加速度的に減少するはずだ。