国土交通省は12月5日、所有者不明土地問題に関する制度の方向性などを論議する国土審議会土地政策分科会特別部会(部会長:山野目章夫・早稲田大学大学院法務研究科教授)を開き、中間とりまとめ(案)を示した。
中間とりまとめ(案)は、バブル崩壊後の地価の下落や地縁・血縁関係の希薄化が進行し、資産としての土地に関する国民の意識も希薄化し、今後急速に進む人口減少、超高齢社会を迎えるわが国にとって、所有者不明土地問題は喫緊の政策課題と指摘。
その対策として、現行法では難しい固定資産課税台帳、地籍調査票、インフラ業者保有情報を行政機関が利用しやすくするよう土地収用手続きの合理化・円滑化を行い、都道府県知事が裁定できるようにする制度が必要としている。
具体的には、所有者不明土地の適切な管理のために財産管理人の選任申立権を地方公共団体の長に付与(民法の特例)するほか、登記官は長期相続登記未了土地の解消のための措置(不動産登記法の特例)を設けることなどを提言している。
さらに、今後の検討課題として土地所有の在り方、土地所有者の責務、土地の放棄やその受け皿について幅広く検討するよう求めている。
特別部会に提出された資料によると、平成28年度の地籍調査では不動産登記簿上で所有者の所在が確認できない土地の割合は約20%(所有者不明土地問題研究会の調査ではその面積は九州の368万㏊を上回る約410万㏊)にのぼっており、サンプル調査による探索の結果、最終的に所在が不明な土地は0.41%(最狭義の所有者不明土地)としている。
探索には多大な時間・費用・労力を費やすことが強いられており、公共事業や民間事業を実施しようにも「直ちに使えない」状況になっているという。
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緊急避難的、対症療法としての所有者不明土地問題は何らかの方策が示されるのだろうが、特別部会も指摘しているように「一般の財と異なる性格を持つ」土地の「所有者がどのような責務を負うべきかについて検討を行う必要がある」と思う。
「一般の財と異なる性格」とは、諸外国と比較しても強いわが国の絶対的排他的私有権のことだろう。しかし、特別部会も「土地を持つことが負担となる場合も存在する」と述べているように、絶対的排他的私有権が手かせ足かせになっており、「負動産」(朝日新聞の造語か)が一般名詞として通用する時代になっている。
このギャップをどう埋めるのか。権利と義務(責務)は等価のはずだ。だとすれば、所有権の放棄、寄付によって受け皿になる主体に負担がそのまま転嫁されたらどうなるのか…記者にはわからない。