積水ハウスと御園座は1月7日、積水ハウスの分譲マンションと御園座の建て替え複合再開発プロジェクト「御園座タワー」が竣工したのに伴い、監修を担当した建築家の隈研吾氏を招きメディア向け内覧会を行った。
同プロジェクトは、市営地下鉄東山線伏見駅から徒歩1分、名古屋市中区栄1丁目に位置する1896年(明治29年)の開業以来、名古屋市の芸能・文化を象徴する劇場として親しまれてきた「御園座」の建て替え商業施設と分譲マンションからなる40階建て延べ床面積約56,000㎡の複合再開発。監修は隈研吾建築都市設計事務所。施工は鹿島建設。工期は平成27年4月から29年11月。
計画に当たっては、新たな「賑わいのあるまち」を創出するため名古屋市総合設計制度を活用。劇場部分の外装は「なまこ壁」の意匠デザインを踏襲し、御園座の格式・伝統を受け継ぐ「朱色」「木調」「市松模様」を多用。客席数は1,298席、歌舞伎のほかコンサートなど幅広い演目に対応する。
分譲マンション「グランドメゾン御園座タワー」304戸は平均専有面積92.22㎡と広めに設定。坪単価は350万円と〝断トツ〟の高さであったが、ほとんどクローズで全戸が約1年で完売した。
内覧会に臨んだ御園座代表取締役会長・小笠原剛氏は「いよいよ4月に新生御園座の開業となるが、世界でもっとも著名な隈研吾先生に斬新で素晴らしいデザインの劇場につくり上げていただいた。隣接する岡崎信用金庫も先生が担当されており、二つの建物は街のシンボルとなるはずで、街の活性化につなげていきたい」と挨拶した。
コンセプトなどについて説明した隈研吾氏(東京大学教授)は、「中心市街地の活性化は世界の都市のテーマ。今回は、日本の伝統を継承し発展させるために御園座の歴史をリサーチ」し、「ファサードの白い格子のなまこ壁は、特殊な照明計画も用いて光をまとったユニークであざやかなデザインとした。名古屋の勢いを象徴する朱色の御園座レッドの祝祭空間はロビー・ホワイエから街路まであふれ出るようにデザインした。華やかな市松模様は音響にも効果があることが分かり客席全面に展開した。住宅部分も格式のある繊細なデザインにした」と語り、「これまでもたくさん劇場を手掛けてきたが、日本の伝統を未来につなぐこのような劇場は他にない。名古屋の新しい文化の核になり、さらにこれからの日本文化をけん引するコアになることを確信している」と締めた。
柿葺落(こけらおとし)は4月1日。二代目松本白鸚(松本幸四郎改め)と十代目松本幸四郎(市川染五郎改め)の襲名披露公演が行われる。
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「なまこ壁」は下段、中段、上段でそれぞれデザインが微妙に異なり、壁面から浮かせて張られているため、見る方向で表情が変る。夜間はLEDでライトアップされる。
内装の日本古来の大和壁、市松模様、格子もさることながら、「わが国伝統の祝祭空間」(隈氏)が演出されているエントランスアプローチ、ホワイエ、客席など全面展開されている鮮やかで明るい「御園座レッド」が圧巻だ。えも言われぬ朱赤が高揚感を誘う。
緞帳も、大丸松坂屋百貨店・トヨタ自動車寄贈の松村公嗣氏作「野分(のわけ)」、名古屋鉄道・三菱電機寄贈の杉本健吉氏作「天人奉楽」、積水ハウスの寄贈の絹谷幸二氏作「黄金旭日名古屋城」の3張が披露された。絹谷氏の作品は1億円近いそうだ。
「グランドメゾン御園座タワー」は2015年9月からクローズで販売開始され、2016年12月までに完売。同社は価格を公表していないが、坪単価は当時としては断トツの350万円。それでも「〇〇さん(著名な歌手)は1フロア丸ごと買った」(地元記者)ように関係者・富裕層中心に圧倒的な人気を呼んだ。