三井不動産は1月30日、事務所、店舗、文化交流施設、産業支援施設などからなる複合開発「東京ミッドタウン日比谷」(事業者:同社)が竣工するのに伴う記者会見・見学会を行った。
施設は、旧三信ビルと旧日比谷三井ビルの跡地で、東京メトロ日比谷線・千代田線に直結。都市再生特別地区制度などを活用して、双方のビルの間にあった道路を廃道にし一体開発した。敷地面積約10,700㎡、地下4階地上35階建て延べ床面積約189,000㎡の複合ビル。マスターデザインアーキテクトはホプキンスアーキテクツ、都市計画・基本設計・デザイン監修は日建設計、実施設計・監理はKAJIMA DESING。施工は鹿島建設。地下から7階が商業施設、11階から34階がオフィス、6階がビジネス連携拠点。3月29日にオープンする。
会見に臨んだ同社・菰田正信社長は、「グローバルな都市間競争が激化し、成熟した社会への対応が求められ、ライフスタイルの急激な変化が起きている中で、様々な問題を解決し、街固有の歴史、文化、伝統を活かし、魅力ある街づくりが求められる。当社が掲げる〝経年優化〟の街づくりをここでも実現した。『日比谷』はは霞が関、大手町・丸の内、銀座、虎ノ門・新橋の各エリアの結節点であり、JAPAN VALUEを世界に発信し続ける街、質の高いミクストユースの街づくりがコンセプトである『東京ミッドタウン』にふさわしい立地。エンターテイメントの聖地、都心のオアシス、近代化をけん引した歴史を継承し、サスティナブルな街づくりを進めていく」などと述べた。
また、「『東京ミッドタウン』を冠せる案件は数件ある」と今後の同様な街づくりに意欲を見せた。テナントの入居については「極めて良好。(当社の)トップクラス」と語った。
日比谷通り側
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完成した建物を初めて見た。感動で胸が震えた。寒さでは断じてない。写真を見ていただきたい。なにより美しい。伝統的な100尺ラインを踏襲しながら、緩やかなアール・曲線を描いたガラスファサードが、隣のやはり曲線が美しい日比谷シャンテと見事に調和し、双方の空間・空気さえもデザインに取り込んでいるではないか。これを見て、すぐあの曲線美が特徴の「パークコート青山ザ・タワー」を思い出した。
曲線は、オフィス空間も同じで、図面を見ただけではその曲線部分がデッドスペースになるのではと考えたが、実際はそのようなことはない。むしろ、同社 日比谷街づくり推進部部長・山下和則氏が話したように「サード・プレイス、コミュニティ空間として多様な使い方ができる」はずだ。
全体の外観デザインは、見る角度によって2つに分かれても見え、微妙に表情を変える〝ダンシングタワー〟というのがコンセプト。配布資料には「柔らかな印象のファサードはいかなるビルとも一線を画し、どこから見ても目立つランドマークとして唯一無二の存在感を発揮します」(ホプキンスアーキテクツ サイモン・フレーザー氏)とある。
このほか、高さ20mもある1階のアトリウム、6階の緑のパノラマ空間「パークビューガーデン」、9階の2層スカイロビーもなかなかいいが、8階のパークウェルネスが素敵だ。
同じような施設は昨年、三菱地所の「大手町パークビルディング」でも見学したが、比較すれば今回の「日比谷」に軍配を上げる。なにがすごいかといえば、女性専用パウダーコーナー・シャワーブースだ。男性用のシャワーブース(4室)もあるのだが、これは普通のシャワー室だ。一方の女性用パウダーコーナーは、10人以上が同時に化粧できそうな大きさだった。これには絶句した。例えていえば電線に並んだスズメかツバメのような壮観が展開されるのは間違いない(東急不動産の日比谷のビルは、夜の顔に変身できる鏡付きのパウダールームもあったが)。化粧室に入ったまま職場に戻らない女性が激増しないか心配。
さらにそれより驚いたのがシャワー室だ。4室のうちの1室は何と日比谷公園が眼下に見降ろせ、その向こうのビル群も眺めながらシャワーを浴びられるようになっている。これは日比谷公園だからできる芸当で、皇居だったら記者は許さないし、宮内庁から撤去を申し立てられるはずだ。
たまたま通りかかったいささか薹が立った女性に声を掛けたら、「いいんじゃないですか、魅せたい人には」とそっけない返事が返ってきた(「あなたはどうですか」とはさすがに聞き返せなかった)。
なにはともあれ、「東京ミッドタウン日比谷」が日比谷の新しい顔になるのは間違いない。以下、街で拾った声も紹介する。
「よく母と一緒に宝塚を観に来ます。わたしは地震の時、ガラスが(落ちないか)心配。母はどう? 」(大丈夫、鹿島の最新の制震技術が採用されている=記者注)「(工事用の)幕が外れる前は圧迫感を感じましたが、幕が外れたらとても素敵」(60歳代と30歳代の母子)
「(外観の)カーブが美しい」(30歳代の男性)
「仕事場が近いので楽しみにしていた。曲線がきれい」(30歳代と40歳代の女性)
「日比谷は食事や買い物でよく来ます。近くに住んでいますので(どこですか)築地です。確かに『六本木』(ミッドタウンのことか)に似てますよね。曲線がいい。必ず一度利用します。広場にカフェがあるといいわね」(40歳代の女性)「(70歳代ですよね)いいえ、68ですのよ。ホホホ。これができて線路の向こう(有楽町)から人の流れが変わるんじゃないかしら」(これはまずかった。記者はいつも見た目より10歳若くおべっかを使いインタビューすることにしている。「人の流れが変わる」ことについては、前出の山下氏は「街を訪れる人の行動範囲が広がることを願っている。目指すのは共存共栄」と話した)
「仕事が近いのでよく通ります。素敵、すごい。変ったわね。公園に合う」(70歳代と60歳代の女性)
「うーん、なんとなくインパクトに欠ける。丸の内みたいじゃない」(40歳代女性⇒「丸の内」とはコンセプトが違います)