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2018/01/31(水) 16:38

既存建築物の有効活用、木造の規制緩和が進む 国交省・建築基準制度改正へ

投稿者:  牧田司

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第16回建築基準制度部会

 国土交通省は1月30日、「今後の建築基準制度のあり方」について第16回建築基準制度部会と第41回建築分科会をそれぞれ開催し、第三次報告案を論議し最終報告書として取りまとめた。

 今回の第三次報告では、新たな技術開発の促進と更なる性能規定化に向けた建築規制のあり方や、既存建築ストックを有効に活用する観点から、今後の建築基準制度のあり方を示したもの。

 既存建築ストックの有効活用については、安全性を確保しつつ防耐火性能などの建築規制の合理化を求めている。

 木造建築については、現行制度では一律に耐火性能などの性能を要求され、木材らしい外観を実現することが難しいが、安全性が確保されれば対象となる建築物の対象を合理化し、設計の自由度の拡大を図るべきとするなど、規制の適切な見直しを行うべきとしている。

◇       ◆     ◇

 木造ファンの記者としては、規制が緩和されそうで画期的な報告だと受け止めた。

 ただ、厳密にいえばこれは正確ではない。全15ページにわたる報告書の中には「建蔽率を緩和」とい文言は1カ所あるが、「建築規制を緩和」するとは一言も触れられていない。「規制が緩和されそう」というのはあくまでも記者の解釈だ。

 それでは、全くの憶測にすぎないかといえばそうでもない。「緩和」の文言はないけれども「合理化」の言葉は16カ所あり、このほか「支障」「課題」「問題」「簡素化」「見直し」「過度な負担」「ニーズに対応」「整備」「除外」などの言葉が頻繁に使用されていることと合わせ解釈すれば「合理化」=「緩和」と受け取れなくもないというのが記者の結論だ。

 会合の後、双方の部会長を務める深尾精一氏(首都大学東京名誉教授)に「これは画期的な報告ではないか」と訊ねた。深尾氏は「具体のことについてコメントは差し控える。全体として世界に追いついてきたということ」と話した。 

 また、部会の最終報告について国土交通省住宅局長・伊藤明子氏は「安全性を確保しつつ、性能規定化を進め総合評価する、より一歩進んだ報告」と高く評価し、各委員をねぎらった。

 「世界に追いついてきた」「より一歩進んだ」をどう解釈するかだが、木造の「現し」(ゼネコンなどの研究開発が進んでおり、防火性能を備えた外壁材もある)が準防火でも実現する日も近いのではないかと、分科会を傍聴して強く感じた。

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 弁護士の齋藤拓生委員(日弁連消費者問題委員会土地住宅部会幹事、元日弁連副会長)が、第三次報告案の「今後の建築基準制度のあり方について」のサブタイトルについて疑義を唱えた。

 前回の会合までは「建築物の安全性確保と既存建築ストックの有効活用及び木造建築関連基準の合理化の両立に向けて」となっていたものが、最終案では「既存建築ストックの有効活用、木造建築を巡る多様なニーズへの対応並びに建築物・市街地の安全性及び良好な市街地環境の確保の総合的推進に向けて」へと「建築物の安全性確保」が削除されたことについてだった。

 この意見に対して、深尾部会長は「建築物の安全性確保は自明のこと。わざわざ書くと却ってわかりづらくなる」と話し、齋藤氏も「言わずもがなというのはわかる」と了承した。

 このやり取りを聞いていて、記者は別のことを考えた。国土交通省に限らず、どうしてこのような報告書はタイトルが長いのかということだ。今回のサブタイトルは68文字で、メインタイトルを含めると81文字にもなる。新聞1行の文字数を13字とすると実に7行にも及ぶ。

 誤解を招かないよう中身を正確に伝えようと、さらには各委員の意向を忖度して結果として長くなるのか理由はわからないが、深尾部会長の言葉のように却って分かりづらくなりはしないか。

 なぜこのようなことをいうかというと、かつて櫻井敬子・学習院大教授が「建基法関係の法律は窮屈。もっとおおらかでいい」と発言されたのが頭にこびりついているからだ。

 櫻井氏が言うようにもっと鷹揚に構え、サブタイトルはAKBやSKDにあやかって「より安全(A)で、より快適(K)に、より賢い(K)建築(K)制度に向けて」にでもすれば「AKKK」にするか、Kが3つ並ぶのがまずいのであれば「賢い」をスマート(S)にすれば「AKSK」となり、だれからも文句はつけられないはずだ。

 

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