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2018/02/03(土) 10:49

課題山積〝玉石混交〟市場に百家争鳴 サ高住に関する国交省・有識者懇談会

投稿者:  牧田司

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「サービス付き高齢者向け住宅に関する懇談会」

 国土交通省は1月31日、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)について幅広い意見を聞く有識者からなる「サービス付き高齢者向け住宅に関する懇談会」を設置し、第1回懇談会を同日に開催した。

 サービス付き高齢者向け住宅については、平成23年の制度創設から6年経過し、この間、登録戸数は約23万戸まで増加しているが、一方では立地や地域の医療・介護サービスとの連携などの課題も指摘され、制度そのものが分かりづらいという声もあることから、懇談会ではこれまでの取組状況についてフォローアップを行うとともに、今後の取組の進め方について論議していく。

 国交省からは、登録要件となっている1戸当たりの床面積は原則25㎡以上となっているにも関わらず、実際は全体の4分の1にしかすぎず、当初想定した自立高齢者の入居が少なく、要介護3以上が3割に達すること、入居費用は大都市圏では平均約11.9万円に上っており、年金額では負担しきれない額であることなどが報告された。

 以下、各委員の主なコメントを紹介する。ほぼ発言順で、( )内は記者。

 髙橋紘士座長(高齢者住宅財団特別顧問・東京通信大学設置準備室) 国民にとって分かりづらい、老人ホームとどう違うのかという声もある。住まいとして捉える形と施設として考える両方があり課題も多い。早めの住み替えになっていない側面もある。何よりも分かりやすい仕組みにするため課題を整理し、老人ホームも含めて実のある懇談をしていただきたい

 園田眞理子氏(明治大学理工学部教授) 基本的な情報提供がされていない。サ高住は地域包括ケアシステムを担う要素の一つ。地域の医療・介護との連携の中で捉えないといけない。高齢者はやり直しがきかない、先がない。一方でわずかだが業者の倒産もある。きちんと検証する必要がある。金科玉条のように考えていると先に進めない

 小山健氏(高齢者住宅推進機構政策委員長、積和グランドマスト社長) データの平均値で取ると危険な論議になる。内付けサービスを拡大するとコスト上昇につながる。一方で労働力不足もある。IoTも進歩しており、セットで活用していく必要がある

 吉村直子氏(長谷工総合研究所主席研究員) 情報提供システムは使いづらい。ユーザーは知らない人も多い。専門職も使えるものにしないといけない。各種のアンケートは数値を合計してその数で割るものが多いが、これでは実態は把握できない面もある(吉村氏とは30年来のお付き合い。ずっと高齢者住宅について研究されてきた。マクロデータについて鋭い指摘をされた)

 三浦研氏(京都大学大学院工学研究科教授) 見守りは必要ないとか、安否は機械でできるとか、地域に出ていかない、支援しづらい問題がある。生活の質、クオリティをどう上げていくか。サービスとは何かを考える必要がある。器を広げて、地域ソリューション拠点として障がい者なども入居できるようにしてもいいのではないか

 寺嶋清氏(品川区福祉部高齢者福祉課長) 無届老人ホームが半分くらいあった時代と比べ、問題はそれほど改善されていない印象を受ける。サ高住も老人ホームも分かりづらい。一般方はまず特養を考える。現場はデータベースなど眼中にないのでは

 田村明孝氏(タムラプランニングアンドオペレーティング代表取締役) 高齢者住宅は16種類に分けられるが、ジャンル分けする意味があるのかどうか、介護を想定するのかしないのか、看取り、在宅介護も含めて整理しないといけない。表示制度は登録しっぱなしで更新せず、所在がないものもある。このままでは良心的な業者がシュリンクする懸念がある

 福山宣幸氏(全国有料老人ホーム協会副理事長) 利用者が特定施設をチョイスできる仕組み、情報提供できるようにしないといけない。見守りサービスは、自立はしているけれども見守ってほしいというニーズもある。機械に置き換えることができないサービスの見える化を進めることがポイント

 大月敏雄氏(東京大学大学院工学系研究科教授) セーフティネット制度を活用して家賃補助を行っていくことも可能ではないか

 小林宏彰氏(サービス付き高齢者向け住宅協会事務局) 行き過ぎ指導もある。いかがなものか。表示制度は業者負担が過重ならないようしていただきたい

◇       ◆     ◇

 サ高住は玉石混交だと思っていたが、懇談会でも百家争鳴、議論百出、その通りであることを裏付けた。個人的には「見守り」とは何かが明らかにされるのに期待していたが、今回は踏み込んだ発言はなかった。

 法律では、有資格者が居住部分への訪問、電話、入居者の動体を把握できる装置による確認、食事サービスなどの提供時における確認などを能動的にチェックすることが義務付けられている。

 【お断り】 各委員の発言は、記者の責任において紹介した。耳が遠くなり、聞き取り力は小学生並みになり、聞き間違え・見逃しなどで正確に伝えきれていないことを了解していただきたい。また、国交省は後ほど、発言者名を伏せてホームページに公表するが、この種の公的な会合では誰が何を話したかはとても重要だと思うので実名で紹介した。国交省からは実名を伏せるよう報道陣に対する要請はなかった。懇談会の模様は不動産流通研究所のWeb「R.E.port」が正確に伝えている。

 

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