アンビシャスが分譲を開始した「アンビシャス南柏」を見学した。リーマン・ショックの直前に用地を取得した物件で、紆余曲折を経て、難局を乗り切って満を持して分譲するものだ。建物は2月末に完成した。
物件は、JR常磐線・東京メトロ千代田線南柏駅から徒歩15分、流山市向小金四丁目に位置する6階建て全58戸。専有面積は66.17~88.94㎡、第1期(28戸)の価格は4,180万~4.860万円、坪単価は195万円。設計はアクシス環境デザイン。監理はアートプランニング。施工は住協建設。建物は平成30年2月末に完成済み。
現地は、麗澤大学の約42万㎡の森に隣接している住宅地の一角で、戸建て住宅街とは比高差にして約4m高いヒルトップ。
建物は東西に長いコの字型で、南面は麗澤大学の森、西側は小学校、東側は道路を挟んで小公園と麗澤大学の学生寮などに隣接。東側のエリアは同社のマンションが建築確認を取得したあと、条例により高さ12m規制が施行されている。
住戸プランは、間口6.4~6.6mの70㎡台のファミリー型が中心で、両面バルコニー、ワイドスパン、多面採光、専用庭付き、ビューバス、ベイウィンドウ、出窓付きなど多彩な25プラン。
基本性能・設備仕様では二重床・二重天井、リビング天井高2,500ミリ、天然大理石玄関床など。
販売を担当する同社営業第一部第三課課長・鈴木好美氏は「これから本格的に販売する。目標は半年で完売」と話した。
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この物件は、リーマン・ショックのすぐあと、同社関係者から存在を知らされた。商品化は難しいだろうと思っていた。何と10年後のいま分譲されるとは夢にも思わなかった。
現地のモデルルームを見学して、同社の商品企画は健在であることを確認した。ベイウィンドウ、出窓付きは建築費の高騰でほとんど姿を消したが、同社が得意とするものだった。窓などの開口・採光部が6~9カ所ある住戸は17戸、ビューバス付は9戸ある。
感心したのは、敷地南側の奥行約20m×幅約60mが空き地になっていることで、麗澤大学に依頼して実現したのだという。樹木が植わっていたら少なくとも4階あたりまではまず日照を確保することが難しかったはずだ。
坪単価について。195万円が高いか安いか、これは市場が判断することだからあまり書かないが、いま読んでいる小説、箒木蓬生著「悲素」(新潮文庫)には「法医学では、異常値だと騒いだところで、何と比較して異常な値なのか明確にしない限り、相手にされない」とある。
なので、少し書くと、少なくともいま首都圏郊外で分譲されている一次取得層向けマンションよりはるかにプランが優れており、住宅地から4m以上の高台立地、東側は高さ12m規制、南側は約42万㎡の麗澤大の森-この価値を考慮すれば決して高くないと思う。
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同社の安倍徹夫社長とは、記者が駆け出しのころ、安倍氏が大京(当時大京観光)の東京支店長を務めていた時だから40年近くのお付き合いになる。書きたいことは個人的なことを含めて山ほどあるのだが、記者が大好きな獺祭と生ガキとアメーラ、刺身などを前に「個人的なことは書かない」と約束させられたので書かない。ついでだが、酒を飲む前に「絶対二日酔いしない」ともらった薬を飲んだが、これは全く効果がなかった。
一つ二つ、これは個人的なことではないので紹介する。リーマン・ショックで多くのデベロッパーが破綻したことは周知の通りだが、同社が生き残ってきたのは、「弊社の営業哲学を理解して購入していただいたお客様、弊社を応援していただいた取引先、そして汗を流し懸命に働いてきた弊社幹部と社員のお蔭」と安倍氏は話すが、記者は安倍社長のパッションが取引先など関係者の心に響いたのだろうと思う。
実需向けのマンション事業一筋で、商品企画にこれほどこだわる社長はまずいない。
首都圏初の低床バス採用、バルコニー、外廊下の両側のアウトフレーム設計、建築基準法の改正に伴う外廊下の容積不算入部分の活用、タイヤメーカーと組んだ強化ゴムを活用した二重床(浮床)工法の採用、安全性を強化した立駐機の開発、環境共生住宅認定第1号マンションの開発などはいずれも安倍氏が大京の専務時代から扶桑レクセル社長時代に企画してきたものだ。
〝大京の7人の侍〟(記者がこう呼ぶ)の中で現在も経営トップとして活躍されているのは安倍氏のみだ。
そして今、ピーク時には120億円もあった借入金などの負債は今期末には15億円に圧縮するという。