RBA OFFICIAL
 
2018/03/15(木) 22:38

さすが三菱 神戸の歴史的建物保存・復元「神戸タワー」 過去最高峰の坪単価266万円

投稿者:  牧田司

image002.png
「ザ・ パークハウス 神戸タワー」

 三菱地所レジデンスは3月15日、JR西日本不動産開発、三菱倉庫、安田不動産とともに開発を進めている兵庫県神戸市中央区の「景観形成重要建築物等」に指定されている「旧ファミリアホール」の一部を保存・復元する制振タワーマンション「ザ・ パークハウス 神戸タワー」のプロジェクト発表会・モデルルーム内覧会を行った。

 物件は、JR東海道本線神戸駅から徒歩5分、神戸市中央区相生町1丁目に位置する33階建て全352戸。専有面積は42.29~155.03㎡、予定価格は2,800万円台~2億4,800万円台、坪単価は266万円。施工は大林組。竣工予定は2019年11月下旬。

 従前の建物は、1900年(明治33年)に完成したジョサイア・コンドルの指導のもと、建築家の曽禰達蔵が設計した「三菱合資会社神戸支店」で、その後、地元の呉服店・ファミリアホールとして利用されてきた。市の都市景観条例に基づく「景観形成重要建築物等」に指定され、神戸の街並みのシンボルとして親しまれてきたことから、今回の建て替えに当たって基壇部の一部を保存・復元することにしたもの。

 保存・復元するのは高さ15m(一般的なマンションの5階相当)で、5,327点に及ぶ部材を保管し、 新築時に組み直す「生け捕り」という手法を採用して、外観のほか、旧三菱銀行時代の金庫扉や半円アーチをエントランスホールなどにも用い、クラシカルな空間を再現する。総合設計制度の適用を受けているが、市の条例では容積緩和を受けていない。

 同社執行役員関西支店長・加治屋倫浩氏は神戸市のマンション市況とプロジェクトについて、「職住近接、利便性、資産性を重視する傾向が高まっており、市場は堅調に推移している。当プロジェクトは、市の条例では保存・復元を義務付けているわけではないが、東洋のウォール街と呼ばれ、銀行や鈴木商店などの企業が集積していた当地の歴史的な価値だけでなく、市民のシンボルとして100年以上愛されてきた建物を継承したいということから一部を保存・復元することにした」と語った。

 昨年6月に物件ホームページを開設し、これまで約2,700件の問い合わせがあり、今年1月からのモデルルーム事前案内会には約500組の来場がある。分譲開始は4月上旬。

IMG_8711.jpg
加治屋氏
 

3.jpg
基壇部(完成予想図)

◇       ◆     ◇

 わざわざ神戸まで取材に行った価値があった。さすが三菱地所だ。この種のマンションは、大和ハウス工業「D’グラフォート横浜Cruising Tower」、オリックス不動産「グランサンクタス淀屋橋」があるが、5,327点にも及ぶ部材を手作業で保存し、洗浄したり修復したりして再現する「生け捕り」手法は珍しいと聞いた。いったいこの「価値」はいくらか。これは後述するとして、記者発表会に記者は感動した。

 冒頭、販売を担当する関西出身らしい三菱地所レジデンス関西支店販売第三グループ リーダー・花房豪氏は「坪単価266万円」と明かした。

 メディアが質問をしないのに単価を明らかにする東京のデベロッパーは総合地所以外ない。聞いてもうやむやに答える。お客さんの反応をうかがいながら値を上げたり下げたりするためだ。

 地元メディアの方は「坪266万円」の意味が分かったはずだが、記者はなにしろ神戸駅に降りるのは初めて。右も左もわからない。神戸牛と神戸大くらいは知っているが、前川清「そして神戸」と渡辺真知子「ハーバーランド」しかイメージにない。(「あのカモメが飛んだはハーバーライト、彼女は横浜出身」と、家に帰ってからかみさんに言われた)

 そこで聞いた。「わたしは266万円といわれても、神戸の市況が全く分かりません。高いのか安いのか」と。

 この質問に答えたのが同社執行役員関西支店長・加治屋倫浩氏だった。「大阪の中心部は坪300万円を超えており、坪400万円を突破するところがここ1年以内に出てくる。兵庫県では芦屋は坪400万円を突破するが、中央区は震災の影響もあり(再開発などが)遅れている。坪266万円は過去最高」と。

 簡にして要を得る-これほど分かりやすい説明はない。単価を聞かない記者も問題だが(聞いてもその価値が理解できない記者も多いが)、デベロッパーは進んで単価を公表すべきだ。スーパーがダイコンを「価格未定」と表示したら、翌日からお客さんは一人も来ないはずだ。

 単価と設備仕様については首都圏と比較しても意味がないので、あまり書かないが、物件を見学する前までは「坪300万円もあるかも」と考えていた。

 住友不動産などが神戸港開港150年プロジェクトとして、敷地面積約34,000㎡の「新港突堤西地区再開発事業」を行うことになっており、27階建ての約350戸のツインタワー2棟700戸を建設することを聞いていたからだ。着工はこれからで、同社は具体的なことは何も話していないが、記者は坪単価300万円を突破すると読んだ。

 なので、三菱もあるいはと考えたのだが、建設地は三方を高さ20mくらいの建物に囲まれているので、昨年末見た東急不動産「心斎橋」と同じ260万円くらいではないかとはじいた。当たらずとも遠からずだ。

 全体の設備仕様は高いと思う。2重床・2重天井は神戸ではよく採用されるそうだ。155㎡のモデルルームは2億4,800万円台になりそうで、これは東京のどこの億ションと比較してもそん色ない。

解体風景(2).jpg 解体した外壁素材.jpg
解体作業

金庫扉.jpg
金庫扉

石造りの半円アーチ.jpg
石造りの半円アーチ

◇       ◆     ◇

 ジョサイア・コンドルが建設に関わっていると聞いてびっくりした。同社関西支店計画第二グーループリーダー・高橋隆治氏によると、コンドルは建物を設計した曽禰達蔵の師匠で、コンドルは建設時に工事現場で曽禰にアドバイスし、しばらく神戸に逗留したそうだ。

 コンドル彼が設計し、現存している建築物は、御茶ノ水のニコライ堂と三田綱町の三井倶楽部くらいだ。現在、コンドルが居住した六本木の敷地が東急不動産ほかの億ションとして建設されている。

 それにしても5,000点を超える石などを保存し・復元するという大変な作業を行うものだ。いくらかかるか聞いたが、当然答えは返ってこなかった。この価値はものすごく高いと思う。

 石は江戸城にも使用されているという山口県の黒髪島で採石された花崗岩だ。販売事務所に見本が置かれているのを触った。

 蛇足。「ファミリア」は神戸の老舗呉服屋で、かつて三井不動産が第一次取得者層向けに分譲していた「パーク・ファミリア」とは全然関係ないそうだ。

IMG_8705.jpg
現場

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン