「もはや、後発ではない。嫌悪施設ではない」-三井不動産は5月21日、ロジスティクス事業記者説明会を開き、常務執行役員ロジスティクス本部長・三木 孝行氏(58)が次のように約1時間40分にわたり熱く語った。
「2012年4月に事業参入して7年目を迎えたが、当初10人足らずだったスタッフは60人体制になり、稼働施設は18棟、開発中は14棟、総施設数は32棟、総延べ床面積約270万㎡、累計総投資額は約4,800億円に達した。そのうち12物件を投資法人へ分譲し、資産規模約1,000億円のポートフォリオを形成。当初は嫌悪施設を作るのかと思ったが、当社の強みである街づくりをコンセプトにし、オフィス・商業事業のノウハウを投入し、他社と競合しない相対取り引きで優良物件を仕入れてきた結果がこのような数値になった。もはや嫌悪施設ではなく、後発でもない。これからはイノベーションを起こし、切磋琢磨し、他のデベロッパー系の同業とも情報交換し、業界の発展に寄与し、さらに海外進出も視野にトライしたい」
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このロジスティクス事業に関する記者説明会に出席するのは3度目か。集まった記者の数は40~50人か。数自体はそれほど多くもないが、三木氏のパワフルでひたすら前を向く姿勢に触発されたのか、質問者は10人を突破した。予定時間は1時間と知らされていたが、発表会後の個別取材を含めると約1時間45分にわたった。
門外漢の記者は三木氏の話にただただ圧倒され、必死にメモをするのがやっとだった。ロジスティクスが何たるか分かりもしないで質問するのもためらわれ、ずっと黙っていた(質問者もたいした質問は出なかったように思うが)。
会見後、一つだけ聞いた。「三木さんのそのパワーの源は何ですか」と。三木氏は、やや間をおいて「何ですかね。三井の体質じゃないですか」と話した。
-待ってましたとばかり「わたしの知る限り、この部署には東大野球部の肥田さんと巨漢の溝口さん、(巨人を蹴った)志村さんが在籍していました。三木さんも体育会系? 」と畳み込んだが、「確かに。(体育会系は)多いですね。こっちもそう(と隣のがっしりした男性を指し示した)。わたし? わたしは、たいしたことはやっていません」と返ってきた。
その男性とは体重85キロの慶大ラグビー部出身だった。同じ部署にはサッカーやアメフト経験者など5~6人が所属しているという。三木氏は弓道(求道ではない)をやっていたそうだ。
同事業が急成長したのは、三木氏が何度も語ったように、同社のブランド力、街づくりやオフィス・商業施設のノウハウ、その人脈を最大限に生かしたからだと考えるが、人の2~3倍の体力がある(野球は馬鹿じゃできません)体育会系のスタッフをそろえたからではないかと記者は推測する。そんなに的を外していないはずだ。
少し、三木語録を紹介しておく。「この事業は立地、街なか、駅近、仕様、快適がキーワード」「これまでやってきたことは間違っていなかった。あそこ(同社の船橋Ⅰ)で働きたいという人が本当にいたんです」
「人が大事。人間が働くことで価値を見出す。機械は補助」「子育て環境、スポーツクラブ、スケート場、マシンにトライしたい」「物流に革命を起こしたいという経営者が多い、物流コストを以下に下げるかが生産性を向上させる肝」「市場規模は2020年にはコンビニを、そしてその先にはスーパーを超える」「この業界はまだまだ伸びしろがある」
「相対で取り引きした優位性を企画に反映した」「『茨木』のエントランスは『パークマンション』を手掛けたデザイナーに頼んた」「(茨木)世界に類がない従業員の働きやすい環境、施設として評価された」「従業員向けの様々な共用施設は日本初の取り組み」
「(免震構造を採用したのは)なにより人の命、大事な商品を守ること」「(羽田は)二度と手に入らない土地」「(川崎や立川立飛は)物流としてはあり得ない土地」「地域貢献のため、従業員のため、テナントのため」…。
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この日、新たに開発すると発表したのは次の4物件。
-「三井不動産ロジスティクスパーク広島Ⅰ(MFLP広島Ⅰ)」広島県広島市2019年8月竣工予定
-「三井不動産ロジスティクスパーク横浜港北(MFLP横浜港北)」神奈川県横浜市2019年10月竣工予定
-「三井不動産ロジスティクスパーク立川立飛(MFLP立川立飛)」東京都立川市2020年2月竣工予定
-「三井不動産ロジスティクスパーク船橋Ⅲ(MFLP船橋Ⅲ)」千葉県船橋市2021年秋竣工予定