ポラスグループの中央住宅は6月1日、グループ最大級のマンション「ルピアグランデ浦和美園」の第1期分譲(50戸)を6月16日(土)から販売開始すると発表した。坪単価は150万円。同社オリジナルの「ピアキッチン」付きを約4割に高め、食洗機、ディスポーザー、バックカウンター・吊戸棚、98センチの廊下幅、複層ガラスなどを標準装備。この単価でこれほどの設備仕様を確保しているマンションはまずない。それをいかに訴えられるかがカギを握る。
物件は、埼玉高速鉄道線浦和美園駅から徒歩8分、さいたま市岩槻区美園東一丁目に位置する15階建て全340戸。専有面積は65.41~83.39㎡、第1期(50戸)の予定価格は2,400万円台~4,500万円台、坪単価は150万円。竣工予定は2020年1月下旬。施工・設計は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。
現地は、総開発面積約313ヘクタールの「みそのウイングシティ」の一角で、徒歩1分には約14,000㎡の浦和美園4丁目公園が完成し、竣工までに保育園や学童クラブ、クリニック、小学校などが開設される。
建物は、ほぼ南東向きで、平置駐車場が238台、サイクルポートが340区画、近隣住民にも開放する「パームガーデン」、街とつながる「エントランスガーデン」などを整備する。敷地面積12,000㎡には約13,000本の樹木を植栽する。
住戸プランは、「ピアキッチン」付きを132戸(全体の約38%)採用。廊下幅約98センチを確保し、ダウンライトを天井の中央ではなく一方の壁側に寄せることで〝ギャラリー〟空間を演出。ディスポーザーもシンクの端に寄せることで、シンク下の収納スペースが有効に使えるようにしている。このほか、食洗機、「かくれんBOX」などを標準装備、埼玉県初のセキュリティシステム「ワイレモ」を導入している。
見学会に臨んだ同社取締役事業部長・金児正治氏は「12年前、イオンモールがオープンしたのと同時期に172棟の戸建てを分譲したエリア。ここで340戸の大規模マンションを分譲することになって感慨深い。街のランドマークになるよう隣接する戸建て街区との複合開発として位置づけた。2018年3月期のマンション事業の売上高は102億円となり、初めて100億円を突破した。近くシニア向け、コンパクト、つなぐをコンセプトにした新しいファミリー向けも投入し、果敢にチャレンジしていく」などと語った。
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この日は、梅雨入りはまだなのに初夏のように暑かったのだが、金児氏と同社マインドスクェア事業部 マンションディビジョン部長・中島教介氏、販売代理の長谷工アーベストの担当者がそれぞれ熱く語ったのに圧倒された。
中でも、中島氏がピアキッチンについて触れ、「これまで分譲したマンションのピアキッチン付きは人気が高く、早く売れてしまい、購入できなかったお客さん数十組から『次のピアキッチン付きを待つわ』と仰っていただいている」と語ったことに驚愕もし、さもありなんとも思った。
ピアキッチンは同社が初採用したときから称賛し、折に触れ記事にもしてきた。ショートスパンでは採用が難しいからだろうが、これまでの供給物件では3割くらいしか設置されてこなかったのではないか。
今回は一挙に4割近くに増やす。大正解だ。見出しにはあみんさんの「待つわ」を取った。ただ、いつまでも待たされたらそっぽを向かれるぞ!
キッチンの天井高もしかり。一般的なマンションのキッチンの天井高は2200ミリくらいしかない。床下に通す排水管は勾配を持たせなければならないからだが、ピアキッチン付きはリビング天井高(今回は2500ミリ)と同じ高さで設置できるのが特徴だ。その他の商品企画レベルも高い。
しかし、その一方で注文もある。記者は同社のマンションを8割くらいは見学している。最近では「新小岩」「西大宮」「妙典」などだが、きめの細かい商品企画は舌を巻くほどだ。
一つだけ例を示す。引き戸がいいのは言うまでもなく、最近はどこもソフトクローズ機能付きにしている。これをいち早く採用したのが同社だし、開閉両方をソフトクローズ式にしたのは同社が初めてではなかったかと記憶している。今回の物件はそうではなかった。収納もこれまでの物件と比べ仕上げレベルは明らかに劣る。
坪150万円だからと、他社と同じだからと納得してしまう部分もあるが、同社の戸建てと同様、マンションでも圧倒的な差別化を図り、今後参入する事業でも存在感を示そうとするのであれば、利益率を落としてでも仕様レベルを上げるべきだ。外観も、大規模マンションは分棟はともかく分節手法を用いたデザインにすべきというのが記者の持論だ。
さらに言えば、商品企画レベルの高さをパンフレットやホームページでは訴え切れていないと思う。それしかないのならともかく、価格の優位性だけでは訴求力は弱い。
ついでに、同業の記者にも一言。その商品が優れているか劣っているのか、判断するにはたくさん商品をみないと分からない。ハウスメーカーの記者はデベロッパーのマンションをほとんど見ないのではないか。
見る目を養わないと、いつまでたってもニュース・リリースを引き写すことしかできない。リライターに成り下がっていいのか。
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産休・育休から復帰したわが娘のようなマンションディビジョン部の西牟田奈津子氏に約1年ぶりにお会いし、二人の初々しい新入社員を紹介され舞い上がった。もう10年くらい前か、西牟田氏が商品企画開発に熱心だったので、当時、業界の最先端を走っていた大京に頼んで、あるマンションのモデルルームを一緒に見にいったことがある。いまは完全に立場が逆転した。教わるのは記者だ。
もう一つ。帰りの電車でも同社のこれまた育休明けのかわいい神田氏と話すことができたのが何よりうれしかった。阿波踊りより一緒に酒を飲みたい。
販売事務所の入口で、サッカーワールドカップ日本代表に選ばれた浦和レッズの槙野選手の等身大に近いボードに接することができたのは、フェイクの観葉植物を見たのと同程度の印象しか受けなかった。