三菱地所グループは6月28日、住宅事業グループ各社が運営している4つの住宅系会員組織を統合し、業界最大級の約60万世帯の顧客を対象とした「三菱地所のレジデンスクラブラウンジ」を発足させたと発表した。
当プロジェクトを通じ、事業主体やサービスの提供窓口に関する組織的障壁を取り払い、グループ一体での営業販促活動を実現するとともに、住まいに関するあらゆるニーズをワンストップでカバーするアクティブな会員組織を目指す。このような検討者と契約者の会員組織を統合するのは業界初の試み。
統合する組織は、マンション・戸建ての検討者向け「The Parkhouse Club」(会員約22万世帯)、マンション・戸建て居住者向け「三菱地所のResidence Club」(会員約38万世帯)、注文住宅オーナー向け「三菱地所ホーム倶楽部」(会員約2万世帯)、住まいの総合窓口「レジデンス ラウンジ」(会員約2万世帯)で、これによりサービス対象顧客数は約60万世帯となる。
新しい組織は、住まいに関するワンストップの相談窓口を設置(三菱地所のレジデンスクラブラウンジ、集中コールセンターなど)するほか、会員WEBサイト・アプリを通じて会員のニーズに合わせたサービス情報を提供し、よりきめ細かな対応をするとともに、会員限定イベント、会員優待特典など会員サービスの充実を図る。
2013年に開設した東京・有楽町の総合相談窓口(ラウンジ)での相談件数は、2014年度が約400件だったのが、2017年度は1,200件近くまで3倍近くに増加している。ラウンジは新しい組織「三菱地所のレジデンスクラブラウンジ」に生まれ変わる。
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最近の同社グループの動きからして、今回の「レジデンスクラブ」の立ち上げは十分予測できたことだ。同社の前社長・杉山博孝氏(現会長)は「バリューチェーンの強化」をことあるごとに話していた。「バリューチェーン」とは住宅系であることは言うまでもないことだ。
もともと三菱地所グループの住宅系は三井不動産、住友不動産、野村不動産などに大きく引き離されていた。マンションは藤和不動産を実質吸収するまでは年間数百戸くらいしか供給していなかった。戸建てもバブル崩壊後はほとんど〝撤退〟していた。不動産流通部門もリテール部門は同業他社の後塵を拝している。注文住宅は全館空調の先駆けである「エアロテック」を開発したにもかかわらず、これまた同業他社に比べ圧倒的に販売戸数は少ない。
最近は、マンション事業が三井、住友、野村とともに〝4強〟市場を形成しているが、抜け出すまでには至っていない。
こうした状況を記者ですら歯噛みしているのだから、同社関係者はそれこそ切歯扼腕、イライラを募らせていることは容易に想像できる。
そうした状況を一変させようという意気込みは〝業界最大級〟〝業界初〟という文言にも表れている。新しい竈と鍋は用意できた。そこからどんな煮物をつるのか、楽しみだ。ごった煮にはならないはずだ。
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検討者向けのワンストップサービスでは、やはり三井不動産が圧倒的優位に立っている。すまいとくらし選びにワンストップで対応する「三井のすまいモール」と様々なサービスを提供する「三井のすまいLOOP 」を立ち上げたのは2012年だ。
窓口は「目黒」駅前だったが、その後、同じような施設を「横浜」と「武蔵小杉」に開設した。
いま、同社に「三井のすまいモール」と「三井のすまいLOOP 」の会員数がどれくらいで、「三井のすまいモール」の相談件数はどれくらいかを問い合わせている。果たして返ってくるか。
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