「大手町プレイス」ウエストタワー&イーストタワー
都市再生機構(UR都市機構)とNTT都市開発は8月23日、共同で開発を進めている「大手町二丁目地区第一種市街地再開発事業」(大手町プレイス ウエストタワー&イーストタワー)が竣工したのに伴うプレス向け内覧会を行った。
物件は、東京メトロ・都営地下鉄大手町駅から徒歩1分、JR東京駅から徒歩7分、千代田区大手町二丁目に位置する敷地面積約19,900㎡、延床面積約202,000㎡の35階建てウエストタワー、延床面積約152,000㎡の32階建てイーストタワーの2棟からなる延床面積約354,000㎡。容積率は100%の緩和を受けており1,570%。用途は事務所、店舗、カンファレンス、地域冷暖房施設、駐車場など。ウエストタワーの建築主はNTT都市開発で、設計が日本設計、施工が竹中工務店、監理が日本設計。イーストタワーの建築主はUR都市機構で、設計・施工は大林組、監理は日本設計・NTTファシリティーズ共同企業体。総事業費は約1,700億円。建物はCASBEE Sランク相当(自己評価)。
現地は、旧東京郵政局、旧逓信総合博物館、旧東京国際郵便局の建物が建っていたところで、施設の更新と街区の高度利用、地域貢献の観点から再開発することとなり、2013年にUR都市機構が施行代表として、NTT都市開発が共同施行者となり再開発施行認可を受けた。今年4月、名称が「大手町プレイス」に決定された。
建物の施工にあたっては、一般的な順打ち工法ではなく、工期短縮(約半年)の効果がある工事を地上階と地下階を同時に進める逆打ち工法を採用。開発コンセプトは、①国内最高水準の通信環境の整備による国際的ビジネスセンターの機能強化②大手町地区の業務継続能力の向上③うるおいのある都市基盤の創出。
①については、ウエストタワー低層部に約6,000㎡のインターネットデータセンター(IDC)を、イーストタワーにはエリア最大級の約750㎡のカンファレンスセンターを整備した。
②では、地域冷暖房施設のループ化、最大72時間非常用発電機能の確保を図り、③では大手町と神田をつなぐ「セントラルプロムナード」と「竜閑さくら橋」の整備などを行っている。
デザインコンセプトは、「地域をつなぐ」「人をつなぐ」「時をつなぐ」で、建物デザインでは従前の建物の水平ラインを継承・踏襲した庇状ルーバーを採用して日射制御を行っているのが特徴。
また、神田と大手町をつなぐ長さ200~300mに及ぶ「セントラルプロムナード」では、一般の人が建物の中で自由に座ったりくつろいだりする空間を演出しているほか、南西側交差点との接続部には開放的な地下空間(サンクンガーデン)を設置している。
ウエストタワーは地権者の日本郵政、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の郵政グループ4社が霞が関・日本郵政ビルから移転し、本社機能を移す。
イーストタワーは12階から31階までを住友商事が入居し、同社は本社機能を中央区のトリトンスクエアから移す。11階以下はみずほ信託銀行がリーシングなどを受託している。
南西側
南側
庇状ルーバー
北側
北側のグリーンプロムナード
南側の壁面緑化
◇ ◆ ◇
内覧時間は1時間30分くらいか。この間に敷地面積だけで約19,900㎡もある2つのビルのオフィスロビー、オフィス、カンファレンスホール、セントラルホール、サンクンガーデン、グリーンプロムナード、アートなどを見て回り、担当者から説明を受け、写真にも収めるわけだから取材はかなりハードだ。ましてや記者はビルには弱い。どこまで正確か分からないが、受けた印象を率直に伝えたい。
圧巻は、全長200~300m(ずいぶん幅があるが、担当者の説明をそのまま伝えるほかない)、幅にして約6mの歩行者空間「セントラルプロムナード」だ。ただ広いというだけでなく、タッチダウンできる空間(LAN環境は不明)やゆったりくつろげるソファ・椅子・ベンチなども備えられている。L字型の敷地・建物をつなぐためのサインや壁、床に工夫を凝らし、1階と2階、2階と3階、さらには外と内をつなぐ多層空間の演出は見事というほかない。
この歩行者空間を設けたことは、100%の容積緩和を受けた要素の一つだという。東京駅・大手町駅-神田駅の人の流れがどうなるのか興味深い。
床・壁・天井などの素材にも相当こだわっているという印象を受けた。なかでも高さ約12mの東エントランスホールと西エントランスホールの壁に採用されている障子をイメージした下見板張りの「シンボルウォール」が美しい。石は日本ではあまり見られないブラジル産とか。縦のスリットラインから光が漏れる工夫がされていた。
ウエストポールのサンクンガーデンを見渡せる2階の壁にはアール状の腰タイルが採用されていたが、金色に輝くように細かな細工が施されていた。
イーストタワーの4つのエレベータバンクホールの壁には春夏秋冬をイメージした和紙壁が採用されていたが、しっかり見ることができなかった。
グリーンプロムナードの舗道にはアルゼンチン産の斑岩が張られ、花台、シラカシの大木、木製のベンチなどを設置して、人の流れを誘導する仕掛けが施されていた。
オフィスワーカー向けのサポートフロアの有無は分からなかった。個別テナントで整備するとのことだった。
南西側エントランス前には杉本博司氏による高さ12mのアート「SUNDIAL.2018」が設置されているが、このころには疲れ果て、どのような仕掛けで日時計になっているのか全く分からなかった。
カンファレンスホール(天井高は約5m)
敷地東側の線路の騒音を完全にシャットアウトするためガラスは2重構造
オフィスフロアの庇状ルーバー(標準階の天井高は2900ミリ、専用面積はイーストが2920ミリ、ウエストが3800ミリ)
オフィスロビー(右がイースト、左がウエスト)
セントラルプロムナード(それぞれポートがある)
2階セントラルプロムナードから階下を写す(右の光っているのが腰タイル)
東エントランスホール(右の壁が「シンボルウォール」)
西エントランスホールの「シンボルウォール」
1階店舗ゾーン