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2018/10/15(月) 17:15

〝世界に類をみない書店〟 台湾「誠品」初出店 三井不「日本橋室町三井タワー」に

投稿者:  牧田司

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「日本橋室町三井タワー」完成予想図

 三井不動産は10月15日、同社が参加組合員として参画している「日本橋室町三丁目地区第一種市街地再開発事業A地区」の名称を「日本橋室町三井タワー」とし、商業施設「COREDO室町テラス」を2019年秋にグランドオープンすると発表した。約100名の報道陣が詰めかけた。

 約30店舗からなる商業施設「COREDO室町テラス」のメインテナントには、 “アジアで最も優れた書店”(2004年「TIME」誌)に選ばれた「誠品」が手掛ける日本第一号店舗「誠品生活日本橋」が入居する。約300坪で、運営は有隣堂。

 オフィスフロアには、TRI-AD(トヨタグループの自動運転ソフトウェア開発新会社)ほか、世界をリードする様々な業種の先端企業の入居が決定している。

 同社取締役常務執行役員商業施設本部長・石神裕之氏は、「日本橋の新たな文化の発信基地として、1階には大屋根空間を備えた広場空間を設け、商業施設には、4年間の協議を経て、『誠品』さんに出店していただくことが決定した。創業者の呉清友氏(1950-2017)には、われわれの日本橋再生の取り組みに深く共鳴していただいた。運営を担当する有隣堂さんと3者で新たなサード・プレイス、ライフスタイルを提案していく」と話した。

 「日本橋室町三井タワー」は、敷地面積約11,480㎡、延床面積約168,000㎡、地上26階、地下3階建ての大規模複合開発。「三井日本橋タワー」に隣接。基本設計は日本設計。施工は鹿島・清水・佐藤工業。地下1階~地上2階は商業施設、地上5~25階はオフィス、3階はホール&カンファレンス、また、地上1階には大規模な屋外広場空間を設置。地下1階では地下歩道を通じて東京メトロ銀座線・半蔵門線三越前駅、JR横須賀線・総武快速線新日本橋駅に直結する。

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大屋根を配した広場空間

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1階イメージ図

◇       ◆     ◇

 心が震える感動的な記者発表会だった。登壇した石神氏のほか、同社アーバン事業部長・斎藤裕氏、共同事業者の誠品生活股份有限公司董事長・呉旻潔(マーシー・ウー)氏、運営会社の有隣堂専務取締役・松信健太郎氏のそれぞれの挨拶・プレゼンに〝本好き〟の一人としてワクワクした。

 各氏が話したことを逐一伝えられないが、石神氏は「最初に『誠品』を見たとき、これほどのものはないと確信した。われわれの目指す日本橋再生とコンセプトが同じだと。4年間もの協議を重ね、呉清友氏から『出しましょう』と承諾をいただいた。世界に類を見ないものになる」と話し、斎藤氏も「間違いなくオンリーワンの書店になる」と力説した。

 日本語で挨拶した呉氏は、「歴史的にも文化的にも意義深いプロジェクト。亡き父は、三井さんが300年にわたって取り組んできた人と人、人と街、人と環境・文化事業は、我々の精神性を重視する理念と一致すると考え、出店を決断した。文化の香りがする心温まる店づくりを行っていく」と述べた。

 松信氏は、三井不動産の「東京ミッドタウン日比谷」の新業態「ヒビヤセントラルマーケット」などにも触れ、今回の出店が「疲弊する書店に刺激となる」ことを確信しているようだった。

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左から斎藤氏、石神氏、呉氏、松信氏

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 書店・出版界の惨状を書くのが目的でないので最小限にとどめるが、わが国の出版・書店はバブル崩壊後、急坂を転げ落ちるように売り上げが右肩下がりになっている。

 学生も本を読まなくなったらしい。だからか、安倍晋三総理の「腹心の友」の加計学園・加計孝太郎氏が理事長を務める加計獣医学部図書館の蔵書が8,715冊と聞いたとき、一ケタ違うのではないかとわが耳を疑った。ある図書館は大量の読まれなくなった図書を焼却処分したというニュースもあるが…。

 しかし、一方ではけた違いの〝本好き〟もいる。弊社の久米信廣社長がそうだ。いつも難しい哲学書を4~5冊抱えている。「1万5,000冊くらいまでは数えていたが…」と蔵書数は分からないようだが、蔵書は2万冊を突破しているのではないか。「年間500冊読む」業界関係者もいる。

 もっとすごい人もいる。最近読んだ高島俊男氏の「本が好き、悪口言うのはもっと好き」(ちくま文庫)には、明治時代の学者・狩野亨吉は貧乏暮らしではあったが、明治45年から大正2年にかけて、江戸時代の貴重書約4万冊をたったの3万円で当時の東北帝大に売ったとある。大学の蔵書が1万4000冊で、その4分の3が狩野文庫だったと書かれている。「千円あったら東京で立派な庭付きの家が買えた」時代だ。

 呉氏に〝疲弊する書店〟について「どうすればまた盛り上げることができるか」と質問したら、「日本の人口は台湾の5倍で、出版の売上高は10倍。活字離れと言われるが、もともと日本人は本好き。新しい視点で見直せば数字をあげることは可能。腕次第。父は人生の中で大きな病を経験しています。本を読むことで人生の再スタートが切れると言っていました。わたしたちも全員、本を読むこと(読んでいただくことも)に責任を持っています。毎日来ていただき、心を落ち着かせ、価値のある時間を持っていただくような店舗にします」と頼もしい答えが返ってきた。

 酒を飲みながら本が読め(記者はときどきするのだが〝行儀が悪い〟と怒られるのでやめた。そんなに悪いことか)、散髪もできる「ヒビヤ」もいいが、「誠品生活」がわが国の書店・出版界に革命的な変革をもたらすことを期待しよう。果たしてどのような書店になるのか。

 

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