「木材ストロー」(ザ・キャピトルホテル東急で)
アキュラホームとザ・キャピトルホテル東急は12月11日、世界初の「木材ストロー」を企画・開発し、住宅展示場やホテルレストランなどに順次導入すると発表した。
「Wood Straw Project」と名付けたもので、環境ジャーナリスト・竹田有里氏が今年7月豪雨の被災地を取材した際、適切な森林管理が行われていないことが大きな災害をもたらしていることに心を痛め、間伐材の製品化を思いつき、〝カンナ社長〟として知られるアキュラホームに話を持ち込み、自然の恵みを提供している同ホテルが賛同して商品化したもの。
「木材ストロー」は、直径4ミリ、長さ21センチ、厚さ0.15ミリ。何度も試行錯誤を繰り返し、国産材のスギをスライスし、らせん状に仕上げることで、使用時の抵抗感をなくし、安全であることが確認されている。意匠登録申請も受理されている。
同ホテルは来年1月16日、3階レストラン「ORIGAMI」で試験導入するのを皮切りに、順次採用していく。
会見に臨んだ竹田氏は、「プラスチック製のストローは世界で1日1億本使われている。間伐材も放置され、森が死んでしまっている。脱プラスチックなどの環境問題や防災、持続的な森林経営の一助になればと考えている。1本1本手作りなので、障がい者の雇用にもつなげたい」と述べた。
アキュラホーム住生活研究所所長・伊藤圭子氏は「当社は、天板に間伐材を利用した机をこれまで11,000脚以上小学校に寄贈しており、社長自らがカンナを削り、名刺や辞令に採用している。匠の心を持っている会社として協力した。1本数十円のコストがかかり、安いストローと戦えないが、環境にやさしくCO2を固定し、森林・林業再生にも寄与する付加価値を伝えたい」と話した。
また、同ホテル総支配人・末吉孝弘氏は、「わたしたちは自然の恵みを提供するのが仕事。常に継続して何ができるかを考えている。素敵な取り組みに参画出来て嬉しい。製品は完成度の高いものに仕上がった。当ホテルは年間8万本のストローを使用しているが、順次木材ストローに切り替えていく。宿泊客の70%が海外でVIPも多い。実際に使っていただいて感動につなげたい」と語った。
左から竹田氏、伊藤氏、末吉氏
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脱プラスチックの動きは世界的になってきた。竹田氏の意を受けてアキュラホームと記者がもっとも好きなホテルの一つであるザ・キャピトルホテル東急が手を組んだことが何より嬉しい。拍手喝采。
記者団からはコストの質問が多く寄せられたが、伊藤氏が「安い(プラスチックの)ストローとは戦えない」と話したように、そもそもが環境=人と生態系に有害なものと、地球環境にやさしい森林・林業の再生にもつながるものを同じ俎上に載せ論じるべきではない。
確かに価格からしたら一般家庭への普及には時間がかかるだろうが、飲食店などが取り組もうと思えばすぐにでもできることだ。若い方は知らないだろうが、記者が小さい頃はストローといえばムギワラで出来ていた。いまもたまに飲む野菜ジュースとか牛乳以外にプラスチック製のストローを使用することはない。
そのうちにプラスチックを使用する店が消えてなくなることを期待したい。酒や味噌の樽はスギ材だし、ワイン樽はオークなので、関係者にヒノキはダメなのかクスノキもいいのではと質問したが、ヒノキは問題があり、クスノキは香りが強すぎて使えないとのことだった。