わが業界紙へいつもの愛情たっぷりのメッセージ。
住宅新報が3月から年間購読料を約9%値上げし、税・送料込み17,280円(消費増税前の価格)にすると発表した。年間50回として1部約346円、12ページだから1ページ約29円だ。週刊住宅は8ページで19,980円(同)。1ページだと新報が29円、週刊住宅は50円。新報が圧勝なのか完敗なのか、敵に塩なのか、それとも徹底して潰しにかかる戦略なのか。不思議だ。
値上げ後は「引き続き経費の削減に努める一方、紙面づくりでは〝企画主義〟を掲げ、紙面の充実に取り組みます」とあるから、業界関係者も応援すべきだろう。コーヒー代と思えばものすごく安いと思う。
だが、記事そのものには注文を付けざるを得ない。小生の取材フィールドであるマンション・戸建てでいえば、新報の1月29日号、週刊住宅の2月4日号はそれぞれ1面で今年のマンション市場展望記事を掲載している。
はっきり言えば、新報はひどい。あれやこれやのマクロデータを寄せ集めているだけに過ぎない。競馬予想だってもっとましなことを書く。同紙はもともと分譲分野の記事は精彩を欠くが、これでは〝企画主義〟が泣く。
ついでに言えば、今年に入って三菱地所レジデンスは「本厚木」「高輪」「北千住」のマンション見学会を行ったが、同紙の記事は他のニュース・リリース記事と同じか少ないくらいだ。
例えば「北千住」。発表会があったのは1月23日(金)で掲載は2月5日号だから2週間も空いている。当然他紙はとっくに報じている(弊紙のwebは当日)。さすがに他紙と同じ記事は書けないと判断したのかもしれないが、書こうと思えば1月29日号で書けたはずだし、それくらいのインパクトがあるマンションだった。北千住で坪単価が400万円に迫るなど業界関係者はだれも予想しなかったはずだ。なぜその驚きを記事にしないのか。この種の記事は刺身と一緒、鮮度が命だ。腐臭が漂うような記事を書いていたら読者は離れる。
週刊住宅の展望記事はどうか。新報よりはましかもしれないが、見出しに「問われる商品企画」とあるのに、その商品企画そのものについての言及がほとんどない。記事にあるように価格設定と商品企画に的を絞った記事を書くべきだった。「晴海の価格を見てから決断したい」という顧客が目立つのであれば、「HARUMIフラッグ」について核心に踏み込むべきだ。
小生は2016年に都が土地を売却した時点で「坪単価は250万円」と書いた。その当否を探るべく近く記事を書くことにしている。その要諦は「特定建築者募集要領」にある「敷地譲渡契約締結後、東京都の事由により事業計画を変更する場合及び特定建築者が応募時に提案した資金計画に比べ著しく収益増となることが明らかとなった場合は、敷地譲渡金額について協議するものとします」だと思う。いったい「著しく」とはどの程度のことなのか。事業者11社の中でもっとも収益率が高い東京建物の粗利益率は29.7%(2018年12月期)だが、三井不動産レジデンシャルは20%前後だろうし、低いところは10%あるかどうかだ。モノサシの基準をどこにするかで「著しい」もまた異なってくる。
仮に「著しく収益増」となったらなったで、当初の開発法による不動産鑑定の適否、鼎の軽重が問われる。この点について都は、「弁護士などと相談しながら『著しく』という文言も含めて何が協議対象になるか判断していく」(都市整備部)としている。
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批判ばかり書いてきたが、キラリと光る記事もあった。1月29日付新報1面の「住まい選びは街選び 上」という見出しの企画記事では、埼玉県のキャンペーン「住むなら埼玉!」が紹介されていた。
県のキャンペーンは明らかに流山市の〝母になるなら流山〟の二番煎じだが、県住宅課へのホームページアクセス数は毎月2万件くらいだったのが倍増どころか多いときは7万件くらいに増加していると書かれていた。
いま、「埼玉県民にはそこらへんの草でも食わせておけ」という大炎上しそうなキャッチフレーズが踊る魔夜峰央氏の自虐的漫画「翔んで埼玉」が県内で爆発的にヒットし、映画化もされるのだという。結構なことだ。
しかし、同紙の連載は次号で「柏の葉」を紹介したきり2回で終わってしまった。やるなら徹底してやるべき。多摩ニュータウンもやってほしい。小生は〝美しくなるなら多摩〟〝死ぬまで多摩〟を提案しているのだが…。
面白い囲み記事もあった。2月4日号の週刊住宅1面コラムにいきなり「行く川の流れは絶えずして、しかも下の水にあらず」とあった。これは必ず落ちがある、川の下にまた川があると読み進めたが、何もなかった。川に落とされなかった。人のことは笑えないがギャハハハハ。