毎号面白い特集記事を組んでいる「週刊ダイヤモンド」の6月22日号の「最新版 倒産」記事には仰天した。「(倒産の)危険水域 ランキング完全版423社」のうちワースト250社に不動産会社が実に43社も入っているではないか。不動産業で上場している企業は145社(ネットによる)だから、約3分の1は危ないというのだ。
発表されたランキングの中には、確かにどうして存続しているのか不思議なくらいの〝死に体〟企業はあるが、何と東京建物のワースト22位を筆頭に東急不動産ホールディングスが52位、住友不動産が77位、野村不動産ホールディングスが81位、三井不動産が163位、三菱地所が174位、つまり上場不動産会社の売上高ベスト6社が〝堂々〟と200社までに入っている。この6社が〝危ない〟のであれば、他の不動産会社で〝安全〟なのはどこか知りたいくらいだ(逆に〝安全〟ランキングを発表すれば、雑誌は爆発的に売れ、株価も暴騰するのではないか)。
なぜ驚天動地のこのようなランキングが発表されたか。同誌は冒頭で①金融機関の融資の厳格化②人手不足③後継者不在④米中貿易戦争-などを背景に挙げ、6年ぶりに倒産危険度ランキング特集を復活させたとその理由を明らかにしている。
記者もこれには同意する。説得力があると思う。スルガ銀行の不適切融資は今後不動産業界全体に波及するのではないかと恐れている。
だが、しかし、わが不動産会社のベスト6全てが〝危ない〟と書かれたら反論しないわけにはいかない。
同誌によると、調査は①運転資金の増加分=資金繰り②内部留保③税引前営業利益④時価総額と有利子負債の額⑤総資産回転率-の5つの倒産危険度(Zスコア)を機械的に数値化して行われたもので、1.81未満は「倒産の懸念を否定できない」としている。
さすがに、大手デベロッパーのほかほとんどの電力会社や鉄道会社もランクインしていることに気が引けたのか、「不動産会社や鉄道会社のように、業種の特性上、他業種に比べ有利子負債が大きくなりやすく、総資産が膨らむ傾向にある業種の場合は、スコアは低めに出やすい」と言い訳をしているのだが、この機械的な処理に全て問題がある。
不動産業は有利子負債が多い業態であることは言うまでもない。バブル崩壊で売上高を上回る負債を抱えていた多くの企業が破綻したのはそのためだ。
しかし、超低金利の現在、有利子負債の多寡が即企業の存続につながるかどうかは分からない。負債を抱える力があるかどうかを見るべきだ。
そして、記者がもっとも不適切だと思うのは総資産回転率の計算だ。不動産業はプロジェクトが多額で長期化するケースが多く、マンションでも土地の仕入れから分譲-引き渡しまで最低2年はかかる。再開発の案件などでは数年どころか四半世紀に及ぶものも少なくない。
その間の景気の動向、地価変動リスクが伴う。これを危険といえば危険だが、そうした様々なリスクに耐えられる体力として資産は極めて重要なファクターになってくる。保有資産が大きいからこそ、回転率は低くてもビッグプロジェクトに取り組めるのが大手デベロッパーだ。回転寿司屋と不動産業を同じまな板に載せるからこんな結果になる。
同誌は、ストレートに数値をはじき出すのではなく、業種に応じて補正すればまったく異なった結果が出るはずだ。まあ、しかし、今回の特集は倒産危機の警鐘を鳴らした意味のある企画だと思う。