晴海選手村裁判の原告団は9月13日、下記の「選手村マンション増収分折半」に対する原告団声明を発表した。
「選手村マンション増収分折半」の都知事発表に対する原告団の見解」
2016年12月、東京都は晴海選手村用地(13.4ha)を相場の1割弱(1㎡当たり96,700円)で特定建築者(三井不動産レジデンシャルを代表とする11社の企業連合体)に譲渡しました。選手村要因を考慮しても1,653億円にもなる土地を129.6億円で譲渡したので都民の損害額は1,420億円に上ります。いま私たち原告を中心に多くの都民が「投げ売り価格」の是正を求めて立ち上がっています。
こうした中で7月26日、小池都知事は「最終的な住宅分譲販売収入が当初の想定を1%以上上回った場合、増収分の半額を特定建築者が東京都に追納することで合意した」と発表しました。各メディアが一斉に報道したところです。
都知事は今回の措置について「土地の売り渡し価格の問題とは別のカテゴリーの問題である」と説明しており、譲渡価格も「定められた基準に基づき、適正な鑑定の上で決定した」として選手村用地の「評価格(額)」は「適正」であるという態度は変えようとしていません。適正な価格で土地を譲渡したと言うなら、儲けすぎたら増収分折半という今回の措置は何なのでしょうか。適正価格なら事業者がいくら儲けようが構わないことです。
晴海選手村土地譲渡契約書には、異例にも「著しい収益増がある場合譲渡金額の変更を別途協議する」旨の特別条項(土地譲渡契約第2条第2項)が規定されています。激安譲渡価格に対する世論の厳しい批判をかわすための「逃げ道」「目くらまし」として予め設けられたのではないでしょうか。
この規定を適用したという今回の措置・内容にも疑問や曖昧な点があります。
第一に、将来の追加払いがゼロということもあるという点です。販売が完了し、収益がほぼ確定するのは早くても2025~2026年です。激変が予想される厳しい経済環境の下、マンション大不況が晴海フラッグをいつ襲うとも限らないのです。
第二に、何を根拠に「増収分折半」なのか、都の幹部が言う「事業の公共性」云々では説明になっていません。
第三に、なぜ都知事は今回の措置やその発表を急いだのかの疑問です。特別条項では「著しい収益があった場合」ということですから、マンション販売完了予定の6~7年先の協議でもよい筈です。恐らく「土地投げ売り」に対する世論の批判の高まりの結果追い込まれたという面もありますが、その目的は世論・住民訴訟対策、来夏の五輪、都知事選対策であると言っても過言ではありません。
第一期分の住宅販売に関し一部週刊誌は、購入者層は超富裕層及び不動産投資目的の人が多いと報じています。この現実に改めて怒りを禁じえません。私たちは「選手村土地譲渡価格」が適正な評価を踏まえたものとなるよう裁判の取り組みを中心に引き続き頑張る決意です。
以上原告団の見解表明といたします。
2019年9月13日
晴海選手村裁判 原告団
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声明文に口を挟むのもどうかと思うが、以下、記者の考え。
声明文は「激変が予想される厳しい経済環境の下、マンション大不況が晴海フラッグをいつ襲うとも限らない」というが、これは記者も分からない。国内情勢というよりは、米中関係、イギリスのEU離脱、中東情勢など外的要因により我が国経済が大打撃を受けることはありうることだろう。ただ、現在のマンション価格は基本的には実需によって支えられていると思うので、社会経済状況が激変しない限り、「大不況」はあり得ないのではないか。従って、「HARUMI FLAG」の価格が暴落することもないと思う。
声明文は「何を根拠に『増収分折半』なのか」説明になっていないというが、これはそうではない。極めて明白だ。記者は2月の段階で都に「著しい」とはどの程度か問い合わせた。都は、「弁護士などと相談しながら『著しく』という文言も含めて何が協議対象になるか判断していく」(都市整備部)と答えた。(2019/2/12記事)そして、5月の段階で、当初事業計画で示された販売価格の1%を超えたら「著しい利益増」とすることを決定している。1%を超えたら著しいというのは、事業者に酷だと思うが、これはこれで分かりやすい。選挙対策云々はどうか。
声明文が言う「購入者層は超富裕層及び不動産投資目的の人が多いと報じています。この現実に改めて怒りを禁じえません」というのは理解不明。
「超富裕層」とはどのような層を指すのか知らないが、中心層はアッパーミドルであるのは間違いないとても、小生が考える「富裕層」はむしろ少ないのではないかと思う。「投資目的」の人はいるかも知れないが、記者がお金持ちなら買わない。もっと別のマンションを買う。
「怒りを禁じえません」という矛先は購入者ではなくて東京都に対してだろうが、売れないよりは売れたほうがいいに決まっているではないか。もし、東京都がメダリストのサインや魚拓ではなくて人拓でも壁に残し、オークションにかければ1戸数十万円から数千万円の価値はあると思うが…。何? メダルの総数は1000個くらい? ならば、人気選手も含めて分譲戸数分集めればいい。
原告団関係者も支持者の方も、湾岸でマンションを探している人は選択肢の一つに加えるべきだと記者は思う。価格が高いか安いかはともかく、街全体のレベルは極めて高いと断言できる。(地下駐車場は当初約2,300台が約1,200台に減少した理由は聞きたい)