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2019/09/19(木) 12:10

全国的に地価回復傾向強まる 令和元年 都道府県地価調査コメント(順不同)

投稿者:  牧田司

令和元年 都道府県地価調査コメント(順不同)

さまざまな社会課題を解決し、経済の成長に貢献する

不動産協会理事長・菰田正信氏

 今回発表された都道府県地価調査では、全国平均、三大都市圏ともに上昇が継続し、地方圏では下落幅の縮小傾向が続くとともに商業地では28年ぶりに上昇に転じた。我が国経済が緩やかな回復を続け、地方においても経済の好循環の前向きな動きが生まれ始めていることが地価に反映されたものと評価している。

一方、世界情勢の不確実性が増し、先行きは不透明な状態にある中で、こうした経済の好循環を更に持続、拡大させ、力強い経済成長を実現するには、東京オリンピック・パラリンピック後の対応も見据え、都市・地方ともに更なる活性化を図ることが重要である。

とりわけ、土地・不動産ストックの有効活用を図り、企業立地・産業立地の転換を円滑にし、成長産業によるイノベーションや企業の生産性の飛躍的向上を実現するためには、国内設備投資を安定的に促進し成長力を強化する施策が不可欠だ。

当協会としても、引き続き、時代を先取りした魅力的なまちづくりの推進と豊かな住生活の実現を通じて、さまざまな社会課題を解決し、経済の成長に貢献して参りたい。

地方中核都市でも再開発・コンパクトタウン推進

野村不動産 代表取締役社長・宮嶋誠一氏

今回の地価調査では、全国的に地価回復の広がりが見られ、全用途平均は2年連続で上昇、全体として上昇基調を強めている。地方圏では商業地が28年ぶりに上昇に転じており、とくに地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)における住宅地および商業地の上昇幅は、三大都市圏平均を大きく上回っている。雇用・所得環境の改善や低金利環境の継続を背景に、交通利便性等に優れた地域を中心に住宅需要が堅調であることや、安定した企業業績、インバウンド需要の増加、再開発事業の進展により不動産投資ニーズが高く、オフィスやホテル、商業施設等への投資意欲が旺盛であることが要因と考えられる。

住宅市場に関しては、職住近接や生活利便性を求める共働き世帯やアクティブシニア層を中心に、需要は堅調であり、東京圏を中心に新築分譲マンションの販売価格は引き続き高い水準にある。とくに都心立地や駅前再開発等の新築分譲マンションの評価は高く、この傾向は大阪圏や名古屋圏をはじめ、地方圏への波及も見られる。当社は、三大都市圏に加え、高崎市や岡山市などの地方中核都市においても、再開発事業や多様な機能を集積させた都市型コンパクトタウンの開発に積極的に取り組んでおり、街づくりを通じて豊かなライフスタイルを提供し社会に貢献していく。

オフィスビル市場に関しては、働き方改革や採用強化に対応したオフィス環境の改善ニーズに支えられ、主要都市での需要は引き続き堅調、空室率は過去最低水準であり、賃料の上昇が進んでいる。商業施設・ホテル市場に関しては、外国人観光客をはじめとする国内外からの来訪者増が続いており、主要都市を中心に進出意欲は旺盛である。物流施設市場に関しても、eコマース事業者を中心に先進的な大型物流施設への需要は引き続き堅調に推移するものと想定される。当社は、オフィスビル、商業施設、物流施設、ホテル等においても、マーケットインの発想に基づく開発力を活かし、社会や顧客ニーズの変化を的確に捉えた独創性の高い商品・サービスを生み出しながら、積極的な展開を続ける。

地価調査のトレンドは、不動産取引動向を反映したものとなっており、今後も不動産市場の中長期の指標として注視していく。

ホームグラウンド渋谷で「100年に一度」の開発に注力

東急不動産代表取締役社長 大隈郁仁氏

今回の基準地価では、全国の全用途平均は2年連続で上昇が続くなど地価の回復傾向が全国的に広がっていることが 明らかになった。東京など三大都市圏で住宅地・商業地ともに上昇が継続していることに加え、地方圏でも商業地が上昇に 転じるなど地価上昇の流れが広がっている。これは景気の回復や外国人観光客の増加、雇用・所得環境の改善、低金利 の継続などを背景に地価の上昇基調が全国に波及しているものと捉えている。

住宅地については住宅ローン減税等の政策的支援などもあり、都心立地の物件や駅に近いなど交通利便性の高い地域、住環境の良い地域を中心に地価が上昇している。当社では首都圏の湾岸部で高層分譲マンション「ブランズタワー豊洲」の開発を進めているほか、住まいを起点としたライフスタイル提案型のまちづくり「ライフストーリータウン」として神奈川県内の十日市場や大船でプロジェクトなどを進めている。また、子育て世代への支援サービスを付けた「ブランズシティ調布」、クリニックや当社グループのスポーツプログラムをセットにした「ブランズシティあざみ野」など付加価値を付けた物件開発をしている。関西でも利便性の高い大阪メトロ御堂筋線『中津』駅直結の高層タワーマンション「ブランズタワー梅田 North」を開発し、高級住宅地の兵庫県・芦屋では「ブランズ芦屋 ザ・レジデンス」を展開している。地方圏でも札幌中心部で「ブランズ円山外苑前」の販売を進めている。

 商業地では雇用・所得情勢の改善が続く中で、「働き方改革」に合わせたオフィス環境の改善、採用増によるオフィスの拡張を目的とした移転増加などにより都心部を中心にオフィス需要は好調で、新規オフィスビルの竣工が相次ぐなかでも依 然空室率は低い状況が続いている。特に渋谷ではオフィス需要が供給量を大きく上回る状況が続いており、移転などでオフィスに空室が出てもすぐ引き合いがある状況が続いている。また、外国人観光客の増加などで三大都市圏のほか、地方部でも中心都市、観光都市を中心に商業施設、ホテルの需要も高止まりしている。当社グループでは渋谷駅を中心とする「広域渋谷圏」の開発に注力しており、8月には「渋谷ソラスタ」に東急不動産ホールディングスの本社を移転した。ホームグラウンドの渋谷で「100年に一度」となる大型開発を進めており、今後も物件開発を加速する方針だ。2023年度の竣工を目指した「渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業」も順調に進行している。スタートップとの共創を加速するための施設「GUILD(ギルド)」の開設も進めている。商業施設では12月に渋谷駅前に成熟した大人をターゲットにした商業施設「東急プラザ渋谷」が開業予定だ。広域渋谷圏以外では浜松町・竹芝エリアでも約20万㎡の大型開発を進めており、そのオフィス部分にはソフトバンクグループ本社の入居も決まり、IoTを活用した最新オフィスとなる予定だ。

 地方圏は地方4市(札幌、仙台、広島、福岡)での地価上昇が加速するなど地価の上昇基調が広がっている。なかでも国 内外の観光客が増加したり、交通利便性が向上したり、再開発が進んだりしているエリアでは上昇傾向が目立つ。当社グループもインバウンドの動向をにらみ、グループ会社の東急ステイが中長期滞在型ホテル「東急ステイ」の展開エリアをこれまでの東京都心から札幌、京都、博多など首都圏以外にも広げている。また、リゾート地では北海道・ニセコエリアでスキー場やホテル、別荘の売買事業などをグループ企業とともに展開している。

今後の不動産市場については、国際情勢の変化や10月の消費税増税などの不確定要因はあるものの、企業収益や雇用情勢の改善、設備投資への資金流入、資金調達の良好な環境などが続くことが想定され、2020年の東京オリンピック・ パラリンピック以降も継続して堅調な状態が続くとみている。少子高齢化による単身世帯の増加や空き家問題、「働き方改革」によるオフィス環境の変化等で市場環境の変化が続くなか、ハードだけでなく当社グループの持つ幅広い事業領域という利点を生かしたソフトサービスという付加価値付けをして事業展開を進めていく必要があると考えている。

ビル、マンション事業好調 新規ホテルも続々開業予定

三菱地所執行役社長・吉田淳一氏

令和元年(2019年)の都道府県地価調査は、全国全用途平均が2年連続で上昇したほか、地方圏の商業地が28年ぶりの上昇に転じた。良好な資金調達環境のもと、景気回復や雇用・所得環境の改善が続いており、堅調な住宅需要やオフィス市場の活況はもとより、外国人観光客の増加などを背景に需要が拡大、全国的な地価回復および上昇を実感している。

当社ビル事業においては、魅力ある職場環境の提供による優秀な人材の確保や働き方改革への対応、立地改善といったオフィス環境の改善を目的とした需要が継続している。JR 新宿駅とデッキで直結し、この8月に竣工した「リンクスクエア新宿」は早期に満室となったほか、8000坪超の大型退去があった「日比谷国際ビル」は、専有部の天井高アップ等のリニューアルに加え、ワークスタイルの変化に対応してテナント専用のビジネスサポートラウンジを新設、リラックスしながら働くサードプレイスを提案し、早期埋め戻しと賃料の上昇に成功した。

住宅事業においても共働き世帯やシニア世帯を中心にマンション取得ニーズは底堅く、特に駅近物件や、住環境や交通・生活利便性が優れたエリアに立地する物件の人気が強い。JR恵比寿駅徒歩4分の「ザ・パークハウス恵比寿」(総戸数102戸)や、東京メトロ市ヶ谷駅徒歩4分の「ザ・パークハウス市ヶ谷」(101戸)などは特に好調に推移している。

外国人観光客をはじめ来街者の増加は、商業施設やホテルといった事業展開を加速させている。全国各地で展開する「プレミアム・アウトレット」の「御殿場」は、第4期増床に着手しており、2020年春に増床オープンする。それに先駆け、増床エリア内では小田急グループがホテルや日帰り温泉施設を年内にも開業、滞在型施設としての新たな魅力を付加する。また、当社グループのホテルも20年春~22年秋にかけて、「大阪御堂筋」(352室)、「京都梅小路」(約250室)、「京都二条」(約180室)、「神戸三宮」(約170室)、「京都烏丸御池」(約200室)、「銀座6丁目」(約160室)を続々と開業していく予定。

そのほか、EC市場の拡大やロボティクスの進展といった物流業界の構造的変化により、物流施設需要が引き続き伸長していることから、当社でも首都圏で新たに「海老名」、「蓮田」、「春日部」、「船橋」、「座間」の5物件を開発していく。

 

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