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2019/09/22(日) 14:01

アナログの世界に楔 IoT活用で物流市場を変える Hacobu多業種と連携し課題解決構想

投稿者:  牧田司

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左から三木氏、桜井氏、佐々木氏、土川氏、浦川氏(東京ミッドタウン日比谷で)

 企業間物流の最適化を目指す2015年創業のスタートアップ企業Hacobuは9月19日、他業種企業との取り組みを通じ、オープンな物流情報プラットフォーム「MOVO(ムーボ)」上で物流ビッグデータを蓄積・利活用することで、ドライバー不足等の物流課題を解決する「Sharing Logistics Platform®(シェアリング・ロジスティクス・プラットフォーム)」構想を発表した。

 同社は既に大和ハウス工業やアスクルと連携し物流拠点を軸とした課題解決に取り組んでおり、今回、日野自動車と三井不動産との資本業務提携を締結した。

 構想を発表した背景には、10兆円以上と言われる企業間物流は紙・Fax・電話などのやり取りが多い〝アナログの世界〟であるため、①入荷・出荷計画がスムーズに進まず車両の待機時間が長い②車両手配が煩雑、属人化③車両位置、配送状況が見えない-という物流の三重苦を抱え、ドライバー不足、46%と言われる低い積載率、温室効果ガスの排出や騒音などの環境問題、廃棄ロスなどの多くの問題を抱えていることから物流クライシスと呼ばれる状況がある。

 こうした課題を解決する同社のIoTテクノロジーを活用した物流情報プラットフォーム「MOVO」上でやり取りされる物流ビッグデータの種類と量は飛躍的に伸びており、2018年8月の3万件から2019年8月は16万件と5倍強に増加。同社は2023年までに我が国全体の10%当たる480万件の月間トランザクションを目指し、2030年には自動運転トラック輸送サービスの土台にする構想を持っている。

 パ-トナーシップを結んだのは大和ハウス工業、アスクル、Sony Innovation Fund、日本郵政キャピタル、日野自動車、三井不動産。以下、以下、記者発表会に出席した各社代表のコメント。

Hacobu代表取締役社長CEO・佐々木太郎氏 「物流クライシス」という大きな社会課題を解決するために心を一つにして取り組むことに大きな社会的な意義を感じている。粉骨砕身していく

大和ハウス工業取締役常務執行役員・ダイワロジテック代表取締役社長・浦川竜哉氏 2017年9月にHacobuと資本業務提携を締結した。次世代型物流ネットワークの実現を目指し、更なる付加価値を提供できる物流施設開発を進めていく

アスクル執行役員 フューチャープラットフォームアーキテクチャECR本部プロキュアメント統括部長・桜井秀雄氏 2019年2月に旗艦センターのAVC関西で「MOVO」を導入し、大幅な待機時間削減を実現した。今後も対象センターの拡大に取り組んでいく

ソニーVP Sony Innovation Fund Chief Investment Manager・土川元氏 Hacobuの将来に大いに期待している。同社のテクノロジーは、実効性のあるソリューション提供ができることを証明してきた

三井不動産常務執行役員 ロジスティクス本部長・三木孝行氏 他業種企業の皆さまと社会的物流課題の解決に向け共に取り組んでいけることは大変嬉しい。Hacobuとの連携強化を図っていく

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「Sharing Logistics Platform®(シェアリング・ロジスティクス・プラットフォーム)」概念図

◇       ◆     ◇

 物流は門外漢だが、三井不動産や大和ハウス工業などの記者発表会、施設見学会は極力参加するようにしており、今回の佐々木社長の話は分かりやすく非常に勉強になった。

 よく分かったのは、トラック市場は企業間物流が10兆円以上、宅急便が3兆円という巨大市場(分譲マンション市場はせいぜい6兆円か)であり、上場会社も40社近くあるにもかかわらず〝アナログの世界〟(佐々木社長)であることで、だからこそ〝物流クライシス〟という言葉に象徴される危機感を抱いているということだった。

 大和ハウス工業や三井不動産などのどちらかといえば後発のデベロッパーの物流事業が大幅に伸長しているのは、様々な手法を駆使し〝アナログの世界〟からの脱却を目指してきたからだろうと思う。今回の「Sharing Logistics Platform®(シェアリング・ロジスティクス・プラットフォーム)」構想は物流市場を一変させるのか。

◇       ◆     ◇

 どうしても理解できなかったことが一つあった。佐々木社長が「46%という低いトラック積載率」と話したことだ。46%は当たり前ではないかと記者は考えた。A地点から荷物を満載してB地点に運び、荷物を降ろしてA地点に戻れば積載率は50%ではないかと。

 そこで、佐々木社長に聞いた。佐々木社長は即座に「まともな運送会社は帰りも荷物を見つけて運ぶんです」と。

 なるほど。紀伊國屋文左衛門と一緒だ。文左衛門は大坂からミカンを積んで江戸に運び、帰りは塩鮭を満載して大坂に運んで巨万の財をなした。

 もう一つ、突っ込んだ。「社長、社長はデジタルプラットホームの提案を行ったら〝絵に描いた餅〟と受け入れてくれなかったと話したし、2023年には月間トランザクションは日本全体の10分の1にするとも話したが、残りはどうするのか」と。佐々木社長は「残りも必ずやります」ときっぱり。三木氏が「佐々木社長のパッションに惚れた」というのも納得した。

 

 

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