保存料や化学調味料を一切使用しない、素材のおいしさをそのまま味わえる飲食店「薪火グリルazer(アゼル)」が11月22日(金)、小田急線「代々木八幡」駅近くでオープンする。開業を控えた11月15日(金)、マスコミ試食会が行われた。
「azer」はペルシャ語のアゼル=炎という意味で、保存料や化学調味料を一切使用せず、エゾシカや軍鶏などのジビエ、短角牛、豚、鶏などの肉や自然栽培の季節の野菜のグリルやサラダが提供される。人気NY系グリルレストランに長年勤務した川端康介氏が独立して開業するもの。店は、小田急線代々木八幡駅から歩いて数分、渋谷区富ケ谷1-51-12。広さは20席/10.4坪。
出店に当たっては、飲食店の独立・開業支援を行っている株式会社上昇気流がサポートしている。
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案内状が届いたときは〝不動産に関係ない〟とためらったのだが、〝誘われたら断らない〟のが記者のモットーなので参加した。「命を大切に頂く」コンセプトがいいではないか。
店内は、サクラの薪がパチパチと音を発し、勢いよくめらめらと燃えていた。田舎育ちの記者は、焚火を囲みながら大人たちのあけすけな身もふたもない猥談を含む世間話を聞きながら育ち囲炉裏火、炭火、漁火、迎え火、送り火、煙火などは日常だったし、付け火などは全くなかったのでとくに驚きはせず、逆に、ゆらゆらと揺らめく暖炉にはらはらと涙し魅入った青春時代を思い出したのだが、最近の人はこのような炎を見る機会はほとんどなくなったのではないかと感慨を新たにした。
この日供された蝦夷鹿ロース、短角牛Lボーン、プラザオラ(塩漬け)、赤ナス(ヒゴムラサキ)、豚サラミなどは最高に美味しく、本場ドイツ・ゾーリンゲンのナイフの切れ味もよかった。
中でも赤ナスが絶品だった。薪火の遠火で10分くらいかけてじっくりグリルされたもので、マシュマロのように柔らかく、口腔に甘みが広がった。生でも食べられるのに、たっぷり時間をかけて蒸し焼きされるナスも食べられ甲斐があるというものだ。「本当はもっと時間をかけたかった」と話したスタッフの声にまた驚いた。
鹿肉も美味しかったのだが、鹿と言えば、そのまま冷凍保存し、スライスしてルイベ状で刺身として食べるのが一番おいしい。赤みの色が美しく、低カロリーなので記者のような糖尿病でもたくさん食べられる。日本酒はもちろん、ワインは赤でも白でもいける。いつもお世話になっている競走馬を思い出し、〝かわいそう〟が先立つ馬刺しとは比べものにならない。
鹿の生肉を食べたことからE型肝炎を発症した事例が報告され、厚労省が自粛を呼びかけたことから飲食店では供されることがなくなった。残念。
店の印象としては、薪を燃やすための酸素を送り込む機器と排煙設備の音がやや気になり、店舗デザインにもっと工夫を凝らすべきではないかと感じた。料理を引き立たせる音やデザインの役割は大きいはずだ。
まあ、残り火のような記者などの年寄りがメインではなく、火傷を恐れず愛やら恋の火蓋を切るのにもってこいの店なのだろう。隣の女性に「30代ですか」と口火を切ったら、「53歳です」と返ってきた…。会話に点火するどころかたちまち消火鎮火した。