今週の業界紙には欣喜雀躍もし、怒り心頭以外の言葉が見つからないほどの衝撃と怒りを覚えた記事も読んだ。以下、率直に書く。
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まず、住宅新報の本多信博氏の名物? コラム「居酒屋の詩(うた)」。突然休載してから〝中2週〟で復活した。年齢は記者と同じ70歳。競走馬に例えれば7歳馬8歳馬だ。この時期の〝中2週〟の出走は乾坤一擲の勝負か、あるいは孫に媚びを売る正月の年玉の資金にする駄賃稼ぎかよく分からないのだが、(小生は読んでいないが)いつもと変わらぬ酔っ払い記事に乾杯!
だが、しかし、「日本酒は浦霞をいただいたが久しぶりに90点をあげることができた」は意味不明。料理がおいしかったのか、店の雰囲気がよかったのか、店主(男のよう)の立ち居振る舞いに酔ったのか、「浦霞」を久々に飲んだからなのか全然伝えて切れていない。
本多さんよ、記者が連れていく店を紹介することを条件に、小生の奢りで飲もうではないか。多摩市限定の「原峰のいずみ」は絶品だし、東急プラザ渋谷の7階「荒木山」だったか、タダで飲ませてもらった「底なし」も旨い!
えっ、今回で記事連載は77回目とか。嬉々キキキキ、ケケケケ。
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週刊住宅は、通算599回目の「住宅ジャーナリスト・櫻井幸雄の現場レポート 先端(さき)を読む」に目が留まった。怒り心頭とはこの記事だ。概略は次の通り。
櫻井氏は某有料サイトに月3本、プロ向け記事を今月から発信すると書いている。「新聞社、出版社の有料サイトと比べると、割高である。わたしの場合、月3本で消費税込み1100円!」とし、「少数の読者のために、渾身の記事を書こうと思っているのだが、そうなると、課金を上げざるを得ない」と弁解、「驚くほど読者が少なければ、やめるのも簡単だろう、と逃げ道を用意しての出陣である」と率直に本音を明かす。
さらに、「有料記事は、不動産会社や販売会社への直接取材で聞き出した開発秘話や販売の工夫などを紹介する」とし、「インターネットサイトで、個別物件の特徴を深掘りし、『ここがスゴイ』とほめると、今は『広告目的ではないか』と白眼視される。一方で、間違った知識、浅い取材で物件をけなすと、『歯に衣着せぬ、客観的な記事』と賞賛されたりする。その多くは客観的ではなく、恣意的なのだが、ウケがよい」と、これまた正直に自らの記事に対する読者の声を紹介している。
そして、「プロ向けの有料記事であれば、褒める記事を思いきり書くことができる」と締めくくっている。
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無料であろうと有料であろうと、読まれようが読まれまいが、そんなことは書き手の勝手だ。小生が怒り心頭に発したのは櫻井氏の読者に対する接し方だ。
櫻井氏は、業界の多くの方が認める数少ない「ジャーナリスト・評論家」だ。一般の人向けに「狙い目マンション」を多く紹介している。この記事は読者にとっては無料なのだろうが、一目見て、いわゆるパブリシティ(広告)であることが類推される。「『広告目的ではないか』と白眼視される」のを承知で書いているのではないのか。小生などはこの種のパブリシティはほとんど読まない。チェックするのは物件概要が中心だ。これはうそをつかない。
一方で、「間違った知識、浅い取材で物件をけなすと」賞賛されたりし、「客観的ではなく、恣意的」に書いた記事の「ウケがよい」と堂々と書く。
信じられない。誰だって「間違った知識、浅い取材」で書くことはあるかもしれない。しかし、それを自覚しなから「物件をけなす」ことなど絶対しないはずた。デベロッパーに失礼だし、何よりも「評論家」としての櫻井氏を信用して読む読者に対する冒涜、裏切り行為だ。櫻井氏はウケを狙ったそのような記事を書いてきたのか。人の人生を左右するかもしれない高額商品をそんなふうに扱うのか。
そんな櫻井氏の「褒める記事」「渾身の記事」とは何だ。櫻井氏は小生の2倍以上、年間200件くらいのマンションを取材し、褒めているのではないか。それでもまだ足りないのか。
「開発秘話」などは伏せるから価値がある。その秘話を月1100円(1本333円)で売り飛ばすとはどういうことか。どこも絶対〝秘話〟(恥部)など明かさない。リーク記事そのものだし、情報を流す業者も痛くもない腹を探られることにならないのか。
百歩譲って言えば、恥部は暴くものだ。堂々とさらけ出されたらみんな目を背ける(小生は凝視するかもしれないが)。
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小生は前職で、師と仰ぐ故・佐藤美紀雄氏の名物コラム「佐藤美紀雄のワンポイント時評」の編集を担当した。20年以上は続いた。もう時効だから明かすが、佐藤氏は松本清張と同じくらいのひどい悪筆家で、プロの植字屋さんもお手上げだった。小生がいい加減な赤を入れただけで入稿すると、わざと「マン(〇)ション」などと校正ゲラを出してきた。安い一升瓶を買って、職人さんにお詫びしたことも度々あった。
しかし、佐藤氏のコラムは圧倒的な人気を呼んだ。読者のみなさんは信じられないだろうが、「佐藤先生に褒められたいから」優れた商品企画のマンションを企画するデベロッパーがあった。佐藤氏は毒舌家ではあったが、大手、中小を問わずいつも公平、是々非々で論じたからだ。
佐藤氏の前にも後にも、わが業界には「評論家」はひとりもいないと思う。小生は他の評論家先生たちを「御用評論家」「業界妾」と書いたくらいだ。
評論家であろうと誰であろうと、霞を食っては生きられない。糊口を凌ぐのは容易なことではないのも分かる。
だが、しかし、読者を裏切る、もてあそぶ記事を書いてはならない読んでくれる読者は一人だっていいではないか。野垂れ死んでも心を売ってはならない。。小生は〝記事はラブレター〟を死守する。