最近ずっと気にかかっていることの一つに分譲マンションの専有面積圧縮と一戸建ての敷地の狭小化がある。一戸建てについては取材不足なのでさて置くとして、マンションについて書く。
ご存じのように、分譲マンションの専有面積は用地・建築費の上昇に反比例してどんどん縮小している。今年上半期の東京都23区新築マンションの平均面積は70㎡を大きく割り込み、64㎡(長谷工総研のデータ)に落ち込んでいる。66㎡が〝広めの3LDK〟と言われた昭和50年代に逆戻りした。
その最大の理由は用地・建築費の上昇だが、もう一つ見逃せないのは市場の変化だ。
バブル崩壊までは単身者をターゲットとした市場はなかった。今はどうかというと、2015年の東京都の単身世帯割合は47.3%に上っており、夫婦のみの世帯と合わせると64.6%にもなっている。
その意味ではデベロッパーが単身者やDINKSなどにターゲットに絞り、かつ専有面積圧縮により価格を抑えるのは当然ともいえる。敢えて面積を60㎡台に抑え、子どもが生まれても何とかもう一つ居室を設けることができるように工夫された2LDKが売れているのも理解できる。
だが、しかし、どう考えても70㎡以下の3LDKがその機能を果たせるとは思えない。これまで何度も書いてきたことだが、夫婦の部屋と子ども部屋の広さが同じとはどういうことか。かつて流行った〝2戸1エレベーター〟〝両面バルコニー〟〝センターイン〟はもはや死語となり、戸建てでは常識のロフトに似た上部収納・下部収納プランも姿を消した。世の中は田の字型プランのオンパレードだ。商品企画も明らかに昭和の時代に逆戻りしている。
とまあ、ここまで書いてきたのだか、デベロッパーの〝いくらかかると思っているのだ、買える人はいるのか〟といった反論も聞こえてきそうだ。
なるほど。この30年間、可処分所得はほぼ一貫して減少している。消費者もない袖は振れない。坪単価300万円、20坪で6,000万円のエリアは23区から郊外へと勢力を拡大しつつある。居住格差、通勤格差は就労・賃金格差も加速させる。
かくてわが労働者階級はやうやう貧しくなりにけり。