コロナウイルスなんぞに負けてなるかと、攻撃的テレワークを実行してから10日が経過した。実行前と実行後の記事配信比率は17:21本だ。実行後は取材キャンセルが激増し、そのために単なるコピペ記事にせざるを得なくなった部分もあるが、覚悟を決めれば難局を乗り切れることを少しは証明できたのではないか。
今日は日曜日。取材も入っていないし、することもないので暇に飽かせて住宅着工戸数について徒然なるままに書き記すことに決めた。
令和2年1月の首都圏マンション着工戸数は前年同月比22.3%減の3,065戸となり、4カ月連続して前年同月を下回った。平成31年4月~令和2年1月では前年同期比5.5%減の45,505戸となっている。都県別に見ると、東京都28,903戸(前年同期比2.2%減)、神奈川県9,137戸(同16.2%)、埼玉県3,630戸(同25.4%)、千葉県3,835戸(同36.5%増)だ。
この数字だけでは何も読み取れないが、マーケットとしては東京都が年間約35,000戸、神奈川県は約10,000戸、埼玉と千葉県は各5,000戸、合わせて約55,000戸程度が常態となり、中長期的には年間50,000戸を維持できるかどうかではないかと思っている。
記者が気になるのは、着工戸数減より基本性能・設備仕様の退行だ。
別表は、平成26年度と30年度の全国と首都圏の分譲住宅の着工戸数、床面積、1戸当たり工事費、坪単価を比較したものだ。
注目すべきことの一つは、物件の小型化・床面積の減少だ。全国の着工戸数は4年前より3.6%増加しているのに床面積は逆に6.1%減少し、首都圏も減少率は着工戸数より床面積のほうが大きくなっている。全体として面積が縮小していることを示している。
1戸当たり工事予定額もなかなか興味深い。着工戸数が増えた神奈川県は工事費が減少していることだ。これは明らかに価格を抑制するためだと思われる。一方で、千葉県が大幅に増加しているのは、工事費上昇を吸収できなくなった結果だとも受けとれる。また、東京都や神奈川県の工事費は埼玉や千葉県より低いのは、これもまた分譲価格を抑えるための苦肉の策と読める。
このように面積が縮小し工事費も抑制気味なのに、坪単価はこの4年間で東京都は19.2%も上昇し、他県も大幅にアップしている。
これ以上に基本性能・設備仕様レベルダウンを端的に物語っているのは階高・天井高だ。
三井不動産レジデンシャルが9年前に分譲した坪単価500万円の「パークコート六本木ヒルトップ」の標準階の階高は3,400~3,450mm、最上階は4,150mmもあった。廊下、キッチンの天井高も最低でも2.350mmあり、ペントハウスの天井高は3,000mmだった。
これは例外としても、数年前までは少なくとも2500mmは確保され、レベルの高い物件のリビング天井高は2600mmくらいあった。
ところが最近のリビング天井高は2500mmあれば高いほうで、2400~2450mmが標準になりつつある。今話題の「晴海フラッグ(HARUMI FLAG)」のリビング天井高は確か2500mmだった。近接する三井不動産レジデンシャル「パークタワー晴海」も三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス晴海タワーズ」もリビング天井高は最低で2600mmだった。
天井高が低くなっているのは自治体の高さ規制の影響でもあるが、高さを低くすればその分だけコンクリート、鉄筋などの使用量を抑えられるからコストも圧縮できる計算になる。値段を据え置きにして、中身の量を減らしている日用品・お菓子類と一緒だ。
これだけでも今のマンションのレベルダウンがよく分かる。それ以上なのが設備仕様だ。例えば、数年前までのキッチンカウンターなどは御影石かシーザーストーン、フィオレストーンが標準だったのに、最近は人工大理石が主流で、バックカウンター、吊戸棚などはほとんどがオプションで、床材・壁の仕上げに突板・挽き板、御影石を採用する物件が姿を消し、ディスポーザー、食洗機、スロップシンクなとも同様、オプションにしているケースも目立つ。最近はトイレもチェックしているが、メーカーこそ異なるが仕様レベルはみんな似たり寄ったりだ。
価格が上昇する分だけ質が落ちているのがいまの市場だが、これは大手の市場占有率が高まっており、各社が都心、駅近、コンパクトなどにシフトしていることと無関係ではない。市場を独占すれば、意のままになるのは経済の大原則だ。
そして、大手デベロッパーの〝右に倣え〟というのはわが国の国民性の反映で、流れに身を任せるのも選択肢としては悪くないのかもしれないが、敢然と反旗をひるがえすデベロッパーの出現に記者は期待しているのだが…。
現段階で最高品質のマンション三井不動産レジデンシャル「パークコート六本木ヒルトップ」