アークブレイン代表取締役・田村誠邦氏(明治大学理工学部特任教授)から次のようなメルマガが昨日(3月10日)届いた。ご本人の了解が得られたので全文を紹介します。
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新型コロナウイルスの感染拡大で、3月に入ってからは、世の中はすっかり自粛ムード一色になってしまいましたが、皆さんのお仕事はいかがでしょうか?
私も、セミナーやシンポジウムの講演がキャンセルになるなど、少しずつですが実際のビジネスにも悪影響が及んできています。
旅行業やホテルなど、インバウンドの比率の高い業種はもちろんですが、小学校等の一斉休校の通知以来、世の中全体の経済活動の停滞が顕著です。
そしてここにきて、新型コロナウイルスの感染拡大が、「新型コロナショック」ともいうべき、世界同時株安を引き起こしつつあります。
3月9日のニューヨーク市場ダウ平均株価終値は、前週末比2013ドル安の2万3851ドル、7.78%の値下がりを記録し、下げ幅は過去最大となりました。
9日のわずか一日で、米企業全体の時価総額は約2兆ドル(約200兆円)が吹き飛んだ計算になります。まさに、リーマンショック以来の世界同時株安が発生しつつあるのです。
この急落の原因は、もちろん新型コロナウイルスの世界的感染拡大にありますが、直接の要因としては、原油市場の暴落によるものと考えられます。
9日のニューヨークWTI原油先物の終値は、25%安の1バレル31.13ドルと、湾岸戦争が始まった1991年1月に次ぐ過去2番目の下落率を記録しています。
石油輸出国機構OPECと非加盟産油国による協調減産交渉が決裂し、世界最大の石油輸出国サウジアラビアが増産に転じ、供給過剰となる懸念が広がったためと言われています。
原油価格と世界の株価は、実は緩やかな正比例関係にあり、原油価格が上がると株価が上がり、原油価格が下がると株価も下がる傾向にあるのです。
一方、新型コロナウイルスの感染拡大についても、WHOのテドロス事務局長が「パンデミック(世界的な大流行)の脅威は非常に現実的になった」との認識を示すなど、新たな局面を迎えています。
特に、ここ数日の欧米での感染拡大が顕著で、世界経済への重大な影響が避けられない状況になってきました。
イタリアでは9日午後6時現在、数感染者数は9172人(うち死亡者463人)と、3日連続で千人を超える状況が続き、ドイツ、フランスでも感染者数が1,000人を超し、フランスのリステール文化相の感染も明らかになっています。
米国でも8日までに新型コロナウイルス感染が確認された患者は、34の州と首都ワシントンで合わせて少なくとも550人に達しており、ニューヨーク州が非常事態宣言を出すなど、緊張が高まっています。
一方、わが国の状況としては、9日に開かれた政府の新型コロナウイルス対策専門家会議は、国内の感染状況について「爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度持ちこたえているのではないか」という認識を示しています。
しかし、わが国の検査体制が不十分なため、感染者数が実際よりも少なめに出ているとの指摘や、流行は1年程度は続くという専門家の意見もあります。
現在の状況では、世界的な感染拡大が7月までに収束する確率はかなり低く、東京オリンピックの開催自体も、7割くらいの確率で危ないのではないでしょうか。
こうした事態を踏まえて、私たちはいま何をすべきなのでしょうか?
もちろん、新型コロナウイルスに感染しないように十分に気を付けることは重要ですが、それと同時に、世の中の雰囲気に付和雷同することなく、やるべきことをしっかりとやる!そんな姿勢が大切だと思います。
たとえば、リアルの会議やセミナーができないのであればリモートでの開催を準備するといった対応も考えられます。
また、新型コロナウイルスの影響が半年以上続いたときに、自分のビジネスにどんな影響があり、どんな行動をとるべきかをシミュレーションすることも有効かもしれません。
こうした点については次回のメルマガで取り上げたいと思います。
編集後記
先週の金曜日の夜、ある会食の機会があり、丸の内の高層ビルのレストランで食事をしました。100名くらい入れる人気のレストランでしたが、夜の7時には、私たち以外に3組くらい、8時あたりがピークで5組くらい、9時には私たちだけといったように、ガラガラの状態でした。
さらに驚いたのは、夜の10時くらいに小田急線新宿駅で、すでに入線している急行電車に座ることができたことです。
金曜日の夜10時といえば、相当な混雑が当たり前だったのですが、こんな経験は、全く記憶にありません。
3.11の東日本大震災以来の、国を挙げての自粛ムード、実体経済への影響が本当に心配です。
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