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2020/03/29(日) 16:07

新型コロナが変えるライフスタイル 郊外住宅が脚光浴びる時代が来るか

投稿者:  牧田司

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左からスズメ、ハト、シジュウカラ?

 新型コロナ対策という受け身の消極策ではなく、攻撃的な姿勢で臨もうとテレワークに突入して1カ月が経過した。取材に出かけたのは11日(15件)だ。取材件数は月に30件くらいあるので半減したことになる。これは新型コロナに対する怯えではない。デベロッパー、ハウスメーカーの発表会がなくなり、マンション取材などもことごとく断られたためだ。断っておくが、小生は齢70を超えるれっきとした高齢者で糖尿病を患っており、酒もよく飲み喫煙者だ。自分が感染しても誰にも文句は言わない。

 この間、各社から送られてくるニュース・リリースをコピペして記事にはしているが、自らが情報の発信源でないので忸怩たる思いは募るばかりだ。

 もう現場取材による記事ネタが尽きた。かといって、どこかの評論家みたいに、マクロデータをこねくり回し、競馬予想紙(これはこれで立派)と同じような無責任な記事など書きたくない。

 -ならば、どうするか。以下は、つれづれなるままに、日暮らし、パソコンに向かって思いのままを綴る。まあ忘備録のようなものだ。

◇       ◆     ◇

 作家の島田雅彦氏は気になる作家の一人ではあるが、一世代以上の年齢差があるのでこれまで島田氏の小説を読んだことはない。ところが、世紀末を描いた「カタストロフ・マニア」が3年前に発売されたことを思い出し、読み始めた。

 「カタストロフ・マニア」は、「なぜか自分以外には誰の姿も見当たらない…。治験バイトのため入っていた病院で、長い眠りから覚めたシマダミロクは驚愕する。事態を解明すべく都心に向かった彼が他の生存者たちの力を得て知ったのは、『太陽のしゃっくり』を引き金に原発危機、感染症の蔓延、ライフライン停止が同時発生し、人類が滅亡へとまっしぐらに突き進んでいること。そんな絶体絶命の状況下で、看護師の国枝すずに囁かれた言葉がミロクの頭をよぎる。『最後の一人になっても、頑張ってくださいね』。驚異の想像力で我々の未来を予見する、純文学×SFの到達点!」(「BOOK」データベース)という触れ込みだ。

 丁度半分くらいまで読み進めた。近未来どころか、まさに今現実に起きていることが綴られている。以下に引用する。

 「…感染者その家族の方は外出禁止です。市内各所のバリケードで封鎖された地域は立ち入り禁止です。監視員は隔離地区の外に出ようとする者、また隔離地区に侵入しようとする者を阻止してください。医師は随時、各地域を巡回しており、順番に診察を行っています。診察の結果、感染の疑いのない方は保健所の健康証明書を発行しますので、それを持参し、速やかに安全地帯に避難してください。健康証明書を持っていない方は移動が禁じられています。安全地帯への移動は専用バスでお願いします。自家用車や自転車、徒歩での移動は許可がなければできません。

 監視員に届け出のあった死者は感染、非感染を問わず、指定の場所で仮埋葬を行います。火葬場は現在、電気の供給と燃料供給が途絶えているため稼働できず、全員が仮埋葬となることをご了承ください。また死亡者の出た家屋への弔問はお控えください。

 水や食料品は配給制になっています。巡回車が各地域に届けますので、スーパーやコンビニ等の商店での略奪行為は慎んでください」(45ページ)

 「噂によれば、すでにワクチンはできていて、ヒトへの投薬実験も行われており、大量生産体制に入っているそうです。けれども、皆さんに投与されるまでにはまだ時間がかかるでしょう。ワクチン投与は公平に行われるのが理想ではありますが、裏では優先権を巡る熾烈な駆け引きが行なわれているのです。この非常事態にあっても、資本の原理は生きていて、貧困層は後回しということになるでしょう。製薬会社にとっては、大きなビジネスとなるわけですが、そのきっかけをテロリストが与えたということは、両社が裏でつながっていることを勘繰りたくもなります。また、貧困層や高齢者の人口が減れば、福祉や医療にかかるコストも軽減されることになり、政府はウイルス蔓延を政治利用して、恣意的に人口調節を図ろうと考えているかもしれません」(50ページ)

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◇     ◆     ◇

 〝事実は小説より奇なり〟-使い古されたフレーズではあるが、島田氏の小説と同じことが現実社会で行われていることを今朝(3月28日)の朝日新聞デジタル版は伝えている。北京市郊外の村を取材した記者のレポート記事だ。

 「一度外出した住民が村内へ戻るには、煩雑な手続きが必要になる。まず、体温測定と消毒をその場で済ませる。次に、過去14日間に汚染が深刻な地域に入っていないことを証明する。これは、中国の携帯電話会社が無料で提供を始めたGPS履歴サービスを利用する。それもクリアすると、健康状況などの問診を受け、顔認識機能付きのカメラでデータを記録した後に、ようやく門が開く仕組みだ。

 副郷長の田赫氏は『約4500人の住民すべてをこのシステムで厳しく管理している。この地区から感染者は出ていない』と胸を張った」

 一方で、ジェトロ(JETRO)海外調査企画課の3月28日付レポートは次のように報じている。

 「フィリピンのセブ州は3月21日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、翌22日午後3時から65歳以上および学生の外出を終日禁止すると発表した。医療機関に受診する場合は除くが、外出の際は身分証の携行が求められる。

 セブ州はさらに州内の企業に対して、3月24日以降は一部の業種を除いて従業員の50%以上の在宅勤務などのテレワークを義務付けるとした。…。

 同州はさらに、3月24日からバー、カジノ、理髪店、運動施設など全ての娯楽施設の閉鎖、スポーツ大会などのイベント開催の禁止を決定。また、自宅周辺で10人以上集まって行う野外劇、ダンス、ビンゴといった催し物も禁止するとした」

 ジェトロはまた、3月26日付でドイツの新型コロナ対策について次のように報告している。

 「追加された1,225億ユーロの補正予算では、ウイルス拡散防止策(個人保護具の調達、ワクチン開発と治療法の開発促進、連邦軍による支援サービス、および住民への情報提供)に35億ユーロ、パンデミックへの緊急対策用として550億ユーロ、保証および保証の分野で考えられる請求について約59億ユーロの引当金増額、中小企業への給付金500億ユーロなどが盛り込まれた。特に注目されていた中小企業ならびに零細企業(従業員10人未満)に対する支援は、融資ではなく給付金(課税対象)に決定され、2020年3月11日以降に発生した損害を対象として、従業員5人以下(フルタイム相当)の事業者に対しては3カ月分の資金繰り支援として、最大9.000ユーロの一括支払い、10名従業員以下(フルタイム相当)の事業者には同じく最大15,000ユーロの一括支払いとなっている」

◇       ◆     ◇

 記者は先日の小池都知事と昨日の安倍首相の〝演説〟を注意深く聞いた。「感染拡大・重大局面」「オーバーシュート」(オーバーヘッドシュートなら記者もよく知っている)「ロックダウン」(ロックアウトは経験している)「3つの密」(小生は女性の蜜には抗えない)などおどろおどろしい言葉の割には具体性に乏しく、これでは危機感をあおるだけで危機に瀕している人々は救われないだろうと感じた。

 安倍首相が「間髪をいれず」(小生は〝かんぱつ〟と聞こえた)と発表してから2週間経つではないか。ドイツやフィリピンとはえらい違いだ。

◇       ◆     ◇

 絶望感に打ちひしがれている記者だが、救いはある。一昨日(3月27日)、住友不動産の「シティタワーズ東京ベイ」の取材の帰りだ。

 この日は、テレワークではなく有休休暇を取っていた。午前早くから別の取材があり、昼食を食べていなかったので有明駅前の大和ハウス「ダイワロイネットホテル 東京有明」に立ち寄った。喫煙室が備わっていることも確認した。

 メニューをみてびっくり。何と「東京ホワイト」のクラフトビールがあるではないか。このビールは野村不動産「ノーガホテル上野東京」で飲んだことがあり、とても美味しかった。早速注文した。値段は700円で、野村のホテルより200円も安かった。午後2時30分頃だ。

  すると、スタッブの方が「3時からですと、500円でお酒が飲み放題で、食事も2品で1000円の特別コースがあります」と宣うではないか。〝えっ、あと30分待てば…〟という言葉をビールと一緒に飲み込み、「それじゃ、3時になるまで散歩してきますので、それを注文します」と外に出た。

 その時撮った写真だ。スズメ、ハト、シジュウカラ? は親子か夫婦か恋人同士かは分からないが、濃厚(濃密か)接触などものともせず相寄り添い、閑散とする駅前の広場に〝チュウチュウ〟〝クッククック〟〝スキッスキッ〟とはしたないラブコールを送っていた。

 彼ら彼女らの愛に満ちた交歓場面を写真に収め、ホテルに戻りビールを立て続けに3杯飲み、食事をした。〆て2,200円。都心ならこの倍はする。〝住めば有明、飲むなら有明〟だ。

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「ダイワロイネットホテル 東京有明」

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この2品で1000円。飲み物は500円で飲み放題

 最初に戻って島田雅彦氏。島田氏が最近発信しているエッセイ「空想居酒屋」の一節には次のようにある。

 「しばらく出社を控え、形式的な会議や顔つなぎの営業や仕事してるふりをせずにいると、今までのオフィスワークがいかに無駄だったかをつくづく思い知ってしまうのではないか、と。たまたま、自宅待機中の気晴らしにドライブに出かけ、風光明媚な田舎の風景や温泉、素朴な食事に接したりしたら、会社に戻るのがバカらしくなってしまうに違いない。
 疫病の蔓延は大きなライフスタイルの転換をもたらすことになりそうだ」

 新型コロナがいつ収束するか分からないが、テレワークはごく当たり前になり、〝駅近〟より、郊外住宅地がもてはやされる時代がやってくるのを期待したい。

 本日まで熱も倦怠感もない。ビールもハナニラも匂いと味は大丈夫。マンション市場の変化を嗅ぎ取る嗅覚も健在だと思う。

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道端に咲いていたハナニラ(左)とヒメオドリコソウ

 

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