3月31日付(3月30日発売)「住宅新報」の「コロナに揺れる住宅・不動産市場 五輪延期 業界に余波 『ハルミ』第2期は6月以降に」の記事を読んで驚愕した。次の文面だ。
「主要大手ディベロッパー10社が事業主となる『ハルミフラッグ』の第2期の販売開始時期が6月以降に延期されることが3月23日に発表された。五輪開催の1年延期で、竣工も22年秋からずれ込むことが確定した」
小生は「晴海フラッグ」の販売延期が「3月23日に発表」されたことも「竣工がずれ込むこと」も全く知らなかった。完全に出し抜かれたと思った。
記者という商売は、他社(他者)に〝抜かれる〟(先駆けを食らう)ことを耐え難い屈辱と感じる習性が身につき、もっとも嫌う。逆に他社を出し抜こうとするから勇み足もする。
しかし、ほとんど瞬時に、この記事はろくに取材もせず、あれやこれやの〝専門家〟のコメントで補強した合成酒ともいうべき〝フェイク〟ではないかという疑問が沸々と湧きあがった。「晴海」の販売延期は「発表」されたものではない「事実」を小生は握っていたからだ。
「晴海」の次回販売が延期されることを小生は3月23日(月)のホームページで確認した。すぐ記事にもした(記事参照)。幹事会社の三井不動産にも確認した。「現時点ではオリンピックの開催時期は決まっておらず、竣工、引き渡し時期について確定的なことは言えない」というのが同社広報の回答だった。
つまり、3月23日の時点で「晴海フラッグ」の販売延期は「発表」されていなかった。あくまでも物件ホームページ上での「告知」「お知らせ」の類だ。オリンピックの概ね1年延期が発表されたのは翌日の3月24日(火)で、開催日が7月23日に決まったのは3月30日(月)だ。
同紙の発行日は3月30日だが、編集作業は3月28日(金)までに終了しているはずだから、28日の段階で「オリンピック延期」=「竣工延期」と確定するのはあり得ないと考えた。
そこで、4月1日(水)、同紙と「晴海フラッグ」事務局に次のように問い合わせた。
「私(記者)は、『販売延期を3月23日に発表』ではなく、ホームページで『公開』だと理解していますし、その時点で『竣工も22年秋からずれこむことが確定』してはいなかったと思います。いかがでしょうか」と。
「晴海フラッグ」からは、三井不動産広報を通じて「『3月23日に発表』ではなく、ホームページで『公開』⇒ご指摘の通り」「『竣工も22年秋からずれこむことが確定』⇒こちらもご指摘の通りで、竣工時期については我々からコメントしておりません。現在五輪延期に伴う影響について確認中ですので、現時点では回答を控えさせていただいております」との回答を得た。
記者はこの三井不動産広報の回答を信じる。まだ竣工時期を決めかねているはずだ。
一方、同紙の営業本部からは「正確には、6月以降に延期が確定、竣工はずれ込む見通しとの内容にするべきでした。編集の段階で誤解を生む表現となってしまいました。申し訳ございませんでした」とメールが送られてきた。
しかし、「竣工はずれ込む見通しとの内容にするべきだった」という新報の回答には納得しかねる。仮に「見通し」などと分かったような分からないことを書けば、読者の混乱を招くだけだ。
小生は同紙の記事の「このほど」を止めろとしつこく書いてきた。ものごとを曖昧にするなという警告だ。今回の記事もこれと同根だと思う。日時を大事にしないから、確認もせず適当に「3月23日」と書いたとしか思えない。裏を取るのは取材のイロハだ。「ハルミ」などとカタカナ表記にしたのも理解できない。
百歩譲って、竣工がずれ込む確たる証拠を握っているのであれば、その通りに書くべきだった。
そうでなければ、事の重大性を全然理解していないということになる。何事もそうだが、約束を守ることは至上命令だ。マンションの竣工時期、引き渡し時期(入居開始)を守るのは至上命令であることは業界の常識だ(天変地異の特約はあるが)。事業者やゼネコンの都合で竣工、引き渡し時期が変更されたら、まずその会社は生き残れない。
セザールがいい例だ。同社は上場した後すぐ数物件のマンションの引き渡し時期を変更した。小生はその〝嘘〟を暴いた。それから同社は業績悪化の一途をたどり、結局、東証上場後13年で破綻した。
記事を書いた新報の記者の方にいいたい。過ちては改むるに憚ること勿れ。これを契機に日々生起する事象に真摯に向き合っていただきたい。