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2020/05/11(月) 13:19

新型コロナ 感染経路不明者が減らない理由 〝闇社会〟〝二重就業〟も一因

投稿者:  牧田司

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 東京都の新型コロナウイルス感染者が8日連続して100人を切った。「3密を避ける」「接触8割削減」を柱とした緊急事態宣言が一定の効果を発揮していることは明らかだと思う。この先、いつ宣言が解除できるか、その材料を持ち合わせていないので何とも言えないが、「感染経路不明・調査中」の患者の比率が一向に減らないのは気掛かりだ。

都が発表したデータによると、これまでの感染者4,868人のうち感染経路不明・調査中の患者は45.4%に達している。ほぼ2人に1人の割合だ。都ははっきりしたデータを公開していないのだが、年代・男女別データからはその理由らしきものがおぼろげながら分かってきた。

別表に、都の感染経路不明者を図表で示した。4月以降で50%を切ったのは10日間しかないが、感染者が166人を記録しながら38.6%だった412日は中野江古田病院で87人の感染が判明した日だ。また、感染者165人のうち経路不明者比率が28.5%だった51日は43人の感染が判明した墨田区の「山田記念病院」だ。

このほか、50%を割った424日、27日、28日、30日、54日、6日などは高齢者の感染比率がいずれも高い日だった。

つまり、経路不明者が少ない日と高齢者の感染割合が高い日はほぼ一致しており、濃厚接触者を特定することが比較的容易ということを示している。

その逆に、若年層・働き盛りの感染比率が高い日は経路不明者が多いということが分かる。例えば91人の感染者が判明し、うち76人(83.5%)が不明だった413日は2050代の感染比率は84.5%だった。

注目したいのは、感染者が多くても少なくても、この比率に変化はないことだ。これは感染経路を調査する人的不足問題だけではない別の理由があることをうかがわせる。

政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の尾身茂・副座長は51日、「クラスター対策班が極めて疲弊している」と語ったが、「疲弊」の原因は、〝個人情報の壁〟に阻まれ、感染源を特定できない現場の無念・徒労感が背景にあるように思えてならない。

若年層・働き盛りの感染者は、家族が攻撃の矢面に立たされるのを恐れ、また勤め先に〝迷惑〟をかけたくないという意識が働き、調査にしり込みする図式だ。本来は被害者であるはずなのに〝加害者意識〟を植え付けるところに新型コロナの恐ろしさがある。

もう一つ、考えたのは「3密」にもう一つ「秘密」が加わる〝二重就労〟〝闇営業〟の存在だ。新型コロナウイルス 感染症対策専門家会議「新型コロナウイルス 感染症対策の状況分析・提言」(5 4日)で「これまで、医療福祉関係施設を除けば、接待を伴う夜間の飲食店や居酒屋において、多くのクラスター(集団感染)が発生したことが分かっている」と指摘しているが、これは働き盛りの男性と、10代後半から20代の女性の感染者割合が高いことと符合する。

若い女性に感染者が多いのは、それだけ行動範囲が広いという理由のほかに、〝接客〟が売りの飲食・風俗業の〝闇営業〟の存在が浮かび上がる。

データは2004年なので少し古いが、労働政策研究・研修機構の「公式統計に現れない隠れた副業の規模と実態」でBRICs 経済研究所代表・門倉貴史氏は、アンダーグラウンド・エコノミーで就業している者の数は, 暴力団関係者が約8.7万人、風俗関係者が約14.1万人、そして外国人不法就労者が約20.7万人で、これにダブル・ジョブ(二重就業者=アルバイト)の298.0万人を合わせ、正規の労働力人口(就業者数+失業者数) 6,642万人の5.1%に相当する約341.5万人存在すると分析している。

仮に、このアンダーグラウンド・エコノミーの就労者の1%が感染しているとすれば約3.4万人だ。現在のわが国の感染者数15,747人(510日現在)の倍だ。こうした人たちが感染を拡大し、さらにまた、これらの施設で感染した人が感染源を秘匿したがるのは容易に推測される。不法就労が明らかになり、アルバイトを禁止した企業の就業規則違反が明るみに出るからだ。多くの企業が呼び掛けている終業時間後の外食自粛要請に背馳することも問われかねない。

新型コロナは〝社会的弱者〟である高齢者と〝闇社会〟をあぶりだす点では公平といえば公平だが、どうすればいいか明快な答えは出てこない。

門倉氏は、「今後、多くの企業で名ばかりのワークシェアリングが導入されることになれば、失業率は低下せず、しかも国内で雇用される労働者の多くは労働時間の短縮・収入の低下に直面することになるだろう。この結果、失業者の多くはやむを得ない事情でアンダーグラウンドの経済活動に従事することになり、また就業者についても、目減りした給料を補うために、空き時間を利用して副業に就こうという強いインセンティブが働く可能性が高い」と警鐘を鳴らしている。

 

 

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