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2013/04/08(月) 00:00

職人技は世界に誇る文化財 ジャーブネットがシンポ

投稿者:  牧田 司記者

職人の技は世界に誇る無形の文化財

「日本ぐらし館 木の文化研究会」第2回シンポ

 


第2回シンポジウム「庭との関係に学ぶ木造住宅の未来」会場

 

 全国の工務店ネットワーク「ジャーブネット」(主宰:アキュラホーム宮沢俊哉社長)と京都に拠点を置く「日本ぐらし館 木の文化研究会」(委員長:髙田光雄氏)が共催して第2回シンポジウム「庭との関係に学ぶ木造住宅の未来」を先に行った。

 同研究会は、日本の伝統と京町家の居住性、そこで育まれた暮らしの文化を現代の「住宅」へ継承フィードバックしていくための産学連合の建築・文化研究を行っており、今回は「家と庭のつくり手」の関連性がテーマ。協賛したアキュラホームのニュースリリースから要旨を紹介する。

 

◇     ◆     ◇

 

 まず、京都大学大学院教授・髙田光雄氏は「庭との関係に学ぶ木造住宅の未来」について解説。庭に関わる現代的課題として「地域居住文化の継承・発展」と「地球環境への配慮」の2点をあげ、作庭のポイントとして、①四季にとどまらない微妙な季節の変化を楽しむ②環境調整機能の確保③領域形成機能の確保④住まい手が働きかけることによって生まれる「住みごたえ」の実現⑤マネジメントとセキュリティの考慮--の5点を指摘した。

 「歴史にみる大工と庭師」について基調講演を行った京都工芸繊維大学准教授・矢ケ崎善太郎氏は、「大工は古代からものさしをもって指図をする人であり」「庭師は自然を読み取る優れた能力や吉凶をみる能力など、特殊な能力を持つ者」と紹介。

 「日本の建築は寝殿造でも書院造でも、原則として建物の周囲に縁を設ける伝統があった。対して、茶人たちによって作られ始めた数寄屋建築はそれとは正反対のもので、千利休の茶室になると縁は完全になくなり、土間から畳に直接上がる『くぐり木戸』が発明された。このように建物の際まで露地の土間が深く入り込むことによって土庇(つちびさし)がうまれ、ここで大工と庭師の協働が始まった」と語った。

 また「数寄屋大工の覚悟を示す言葉として、『見える部分を何気なく、見えない部分をきちんとすることで本質を間違ってはいけない』『日本の建築は常に手を入れながら維持されるものこそ良い建築である』といった言葉が見受けられる。現代の日本の木造建築は、こういった覚悟をもって仕事をしつづけてきた職人たちがいたからこそ世界に誇る伝統的な建築文化になっている。木造建築の伝統をつくってきた日本の職人たちの技は世界に誇る無形の文化財でもある」と強調した。


高田氏

矢ケ崎氏

 

◇     ◆     ◇

 

 引き続いて行われた事例紹介では木村工務店大工棟梁・木村忠紀氏、京都庭園研究所庭師・比地黒義男氏がそれぞれ携わった事例を紹介。パネルディスカッションでは、京都大学大学院教授・鉾井修一氏、京都大学大学院教授・林康裕氏、京都府立大学教授・檜谷美恵子氏が登壇。それぞれ次のように語った。

 「コストを抑えながら四季折々の自然を感じられる空間を提案することは可能。庭は生き物であり、建築とは異なる感性に働きかける」(比地黒氏)

 「環境工学的にはこれまで、蒸散による冷却効果や通風を促す場として庭の機能を捉えている。最近はさらに、庭や建物下の地盤の熱容量に着目して放熱を促す場としてヒートアイランド対策に積極的な活用ができないかと考えている」(鉾井氏)

 「維持管理について施主を教育する必要がある。メンテナンスして初めて 30 年、 50 年と維持できるものであることを今の施主の多くが教育・継承されていない」(木村氏)

 「庭を愛でる文化を一部の人だけの領域にするのではなく、一般にも広げられるような取り組みが必要」(檜谷氏)

 「木の名前をほとんど知らないといったことが今は普通になっている。文化として育てていく必要がある」(林氏)

 「設計士にはもっと勉強して欲しい。木の名前も知らない設計士がいまだにいる」(木村氏)

 

◇     ◆     ◇

 

 矢ケ崎氏は「職人技は世界に誇る無形文化財」と語った。その一方で、林氏や木村氏は「木の名前をほとんど知らないのは普通になっている」「木の名前を知らない設計士がいる」と指摘した。

 記者もその通りだと思う。まず前者について。昨年、三井不動産レジデンシャルの「目黒」の建売住宅を取材したときだ。職人さんが水平器と定規とコテだけで高さ1mを超えそうなレンガの門柱を作っていた。記者は聞いた。職人さんは「誤差? 2ミリぐらい。ここまでやれる技術?まあ、5年はかかる」と話した。レンガを一つひとつ積み上げ、縦、横、高さの誤差を2ミリ以内に仕上げる技術に感動した。

 平成22年の国勢調査(速報値)によると全国の左官業従事者は87,400人だ。多いか少ないか記者は分からないが、平成12年は152,273人だ。この10年間で42.6%も減少している。平成2年の200,452人と比べると56.4%減少している。それだけ「世界に誇る文化財」が減っていると理解していいのか。マンションも建売住宅も仕上げはサイディング、PC板、クロスなどで、左官が現場仕上げするケースはほとんどなくなった。

 次に後者について。記者は昨年、街路樹について取材した。電話口にでた埼玉県戸田市の担当者は、市内の街路樹の名前を3つぐらいしか言えなかった。マンションや建売住宅の取材などで現地はよく訪れるが、開発担当者なども外構の樹木の名前をすらすらと言える人はほとんどいない。樹の名前、特徴を知らずしてどうして植えるのか。不思議でならない。

 

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