RBA OFFICIAL
 
2020/06/18(木) 13:28

〝冬の時代ではない〟沢柳氏 「With & Afterコロナでのホテル戦略」セミナー

投稿者:  牧田司

 オータパブリケイションズは6月17日、「With & Afterコロナでのホテル戦略ウェビナー」と題するZOOMによるオンラインセミナーを開催した。オータパブリケイションズ マネージングディレクター・岩本大輝氏、キャブ代表取締役・苦田高志氏、tripla代表取締役・高橋和久氏がそれぞれ講演したほか、日本のホテル投資アドバイザーの先駆けと言われるジョーンズ ラング ラサール・沢柳知彦氏(立教大学大学院特任教授)がインタビュイーとして、宿泊施設のこれからの集客、オペレーションについての見解を述べ、参加者からの質問にも答えた。

 視聴者は、ホテル、旅行業界を中心に一般の人も含め定員の500名いっぱいにのぼった模様で、関心の高さをうかがわせた。

◇       ◆     ◇

 昨日は日本政府観光局(JNTO)が2020年5月の訪日外客数を発表した。訪日客は新型コロナの影響で4月の2,900人をさらに下回る1,700人(前年同月比99.9%減)となるなど、壊滅的な状況が続いている。

 訪日客がほぼゼロになったことで、32兆円といわれる旅行市場はうち約15%を占める外国人による4.8兆円が消え、「かつてないマーケット」(岩本氏)となっており、ADR(客室単価)、RevPAP(客室1室あたり収益)の数値は急落、ホテル平均稼働率は10%程度と言われている。

 こうした状況を受け、各氏は悲嘆に暮れているのではないかと思ったが、そうではなかった。前向きな発言が相次いだ。(苦境をどう乗り切るかがウェビナーのテーマだから当然と言えば当然だが)

 岩本氏は、「需要の中心は国内。Afterコロナでビジネスユース、レジャーが期待でき、海外旅行消費分4.9兆円が国内消費へ向かうとポジティブに考えるべき。ホテルの本質は変わらない。〝魅力あるホテル〟〝勝つ定義〟を問い直し、ターゲットはどこか、武器は何か、自社のリソースを活用してデザインすることが重要。安易な過剰対策はむしろ逆効果」などと話した

 苦田氏は、「コロナの影響を受けホテルサイトアクセスは25~27%落ち込んでいるが、ITリテラシーが高い余暇時間がある若者をターゲットにしたホテルは伸びている例もある。今後はマイクロツーリズムが増加するはずで、若い人が重視するSNSでの#ハッシュタグを活用すべき。重要なのはSIPS※」と述べた。

※(Sympathize=共感する)Identify(確認する)Participate(参加する)Share&Spread(共有・拡散する)

 高橋氏は、同社が開発したAIを活用したtriplaチャットボットによって、サイト予約比率を大幅にUPさせ、収益率の向上につながっていることを語った。

 沢柳氏は、「市場の8割は国内需要。旅行マグマは溜まっている。冬の時代でもない。本格的な需要回復は新型コロナのワクチンが開発される1~1.5年先だが、リモート・オンライン需要の増加は、旅行中でも仕事ができ、塾の授業などが受けられるようになる」などと新しい可能性を指摘した。

◇       ◆     ◇

 ホテル・観光は門外漢だが、コロナ前はマンションデベロッパーが「欲しい土地はホテルと異業種のN社に全部持っていかれる」と嘆いていたので、今後の展開次第で適地は再びマンション用に変わるのではないかと考え視聴した。

 「高値で仕入れられたホテル用地は、今回のコロナの影響でマンションデベロッパーに投げ売りされることにならないか」と質問もした。

 沢柳氏は、「それはない。市況が回復するまで着工せず駐車場などにするのではないか。そもそも、資金を融資した銀行が損切り処分するはずがない」と否定した。

 なるほど。リーマン・ショック後の銀行とはいまは違うということか。当時は手のひらを返すように融資を中止し返済を迫ったため、軒並み中堅デベロッパーが破綻した。

 にわかホテル業者はそんな余裕はないような気もするが…。

◇       ◆     ◇

 視聴者からは、「アパ直」限定で一泊2,500円(税サ込)で泊まれる6月末までの期間限定「新型コロナウイルスに負けるなキャンペーン」をアパホテルが全店(656ホテル101,402室)で行っていることは「不当廉売ではないか」という質問が飛んだ。

 沢柳氏は「難しい問題だが、不当廉売には該当しないのではないか」との見解を示した。

 この問題は記者も分からない。下記に公正取引委員会の考え方を示す。「不当廉売」は、①正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであって、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの②不当に商品又は役務を低い対価で供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあることで、「供給に要する費用」とは,廉売行為者の「供給に要する費用」であり、業界一般の「供給に要する費用」又は現実に存在する特定の競争者の費用ではないとしている。

公正取引委員会 不当廉売に関する独占禁止法上の考え方

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン