トーセイが竣工完売した「THEパームス相模原パークブライティア」を見学した。スーパーを併設したJR相模原駅圏最大級の全243戸で、地域との親和性に配慮したランドプランが優れている。
物件は、JR横浜線相模原駅から徒歩5分、相模原市中央区相模原三丁目の商業地域(建ぺい率80%、容積率500%)に位置する敷地面積約4,301㎡の15階建て243戸。専有面積は57.68~75.75㎡、坪単価は175万円。建物は2020年2月末に竣工済み。デザイン監修は南條設計室。設計・監理・施工は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。
2018年秋から分譲開始し、キャンセル住戸は発生したがほぼ3月末までに完売。5月に引き渡しも完了した。来場者は約1,000組、歩留まり率は約25%にのぼった。市内の購入者属性は、市内居住者が約7割で、勤務先は市内が約5割、60歳以上の高齢者が2割強。キャッシュでの購入も目立ったという。
現地は、車道・歩道合わせ幅員25メートルのさがみ夢大通りに面したスーパーの跡地。建物は1~2階にスーパー・店舗を配置し、スーパーの利用者の利便性と、地域との親和性を高めるためメインストリート・スーパーに面したもっとも条件のいいエリアに約270㎡の提供公園を設置し、2層吹き抜けエントランス-ライブラリー・フォレストラウンジ-隣地の緑へとつなげる〝グリーンチェイン〟を実現した。
共用部にはゲストルーム、パーティルーム、ライブラリーラウンジ、キッズルーム、スタディルーム、エアリーテラスなどを設置。住戸プランは70㎡台の角住戸を除きすべて57~68㎡台の南東向き2LDK~3LDK。
プロジェクトを主導した同社アセットソリューション第3本部第1事業部サブマネージャー・上野裕二氏は、「戸数は当社物件では過去最大。他社マンションや戸建てとの差別化を図るため共用施設を充実させたのが、広域集客ができ、歩留まり率の高さ、60歳以上の購入比率、キャッシュで買われる方の多さにつながった。プランニングでは、これまで植栽が充実したマンションの販売を担当しており、今回もデザイン監修に南條洋雄氏を起用。隣地の緑の借景と敷地内の緑のつながりを重視したランドプランにした。生垣・中高木は雑木林をイメージし混植にした。高木は私自身が川口の造園業者さんに足を運んで選んだもの。機械式駐車場の外観は敢えてデザインに取り込んだ」と語った。
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横浜線沿線には大企業の工場・研究所などが多く、以前からマンション需要が旺盛だが、他の沿線と連絡する新横浜、長津田、町田、橋本を除き戸建てとの競合もあり、単価的には坪200万円の壁が厚く、数年前には坪150万円を割る物件も分譲されるなどグロス志向の強い沿線だ。
同社のマンションはもう少し強気の価格設定も可能だと思ったが、当時、他社物件との競合もあり、冒険はしたくなかったのだろう。坪175万円はリーズナブルな価格ではないか。
優れているのはランドスケープデザインだ。隣地のソメイヨシノの大木などの借景と調和するよう敷地四囲に緑地帯(歩道状空地)を巡らせ、提供公園(公開空地)と合わせ緑をふんだんに盛り込んでいる。記者が見たところ、メインストリートにはイチョウの街路樹や植え込み以外、緑を配した建築物はほとんどないので、異彩を放っていた。
緑地帯、提供公園は市の建築基準条例に基づいて整備されたものだろうが、メインストリートに面して約270㎡の公園を配するなど、総合設計制度に適合した建築物以外ではまず常識的には考えられない。過去に事例がないか記憶を手繰り寄せたが、一つも思い浮かばなかった(住居系立地はかなりあるが)。
この点について、上野氏は「提供公園は市に譲地するから計画に不要な場所(建築計画の影響の少ない場所)を譲地するのがセオリー。最も良い場所を購入者が得るべきというのが業界の常識なので、社内でも賛否両論があった。施工の長谷工さん、南條設計室とも何度も検討を重ね実現した」と経緯を語った。
取材後、併設されているスーパーで昼食代わりに缶ビールを買い、提供公園のベンチに腰掛けて飲んだが、公園-2層吹き抜けのエントランスラウンジ-隣地まで数十メートルにわたる緑が見渡せた。商業エリアのマンションこそ、このような地域との親和性を重視すべきだとつくづく思った。市も「この公園はマンション事業者から提供されたものです」くらいの銘板を設置していいのではないか。
提供公園