新型コロナは老若男女、富める者も貧しき者も賢者も愚者もあまねく平等に降りかかり、この世の中のありようを映し出す鏡のようだと書いてきた。福岡県北九州市の感染状況は東京都とはまるで異なる様相を呈しており、地方中核都市の実態が浮き彫りになっている。
別表は、8月12日現在の同市の感染者534人のオープンデータのうち年代・性別が不明の21人を除いた511人の年代・性別の属性を表・グラフに表わしたものだ。東京都と比較していただきたい。
年代・性別では20代女性が最多で78人。以下、20代男性50人、30代男性39人、70代男性34人、70代女性31人と続く。若い世代が多いのは東京都と同じだが、高齢者や年少者などにもまんべんなく広がっていることが分かる。
職業別では無職158人、医療スタッフ・医療関係スタッフ・医療従事者・介護施設スタッフ・介護施設職員・高齢者施設スタッフ130人、保育・幼稚園児・小学生・中学生29人(このほか性別・年齢不明の世代が約20人)、会社員・経営者80人、学生32人、自営業14人、飲食関係12人、アルバイト9人、教員8人、高校生4人などとなっている。不明・調査中は32人。
医療・介護関係者の感染者が全体の25.4%を占めているのが大きな特徴で、この医療・介護関係者の年代も20~30代の若い人が圧倒的に多いのが注目される。
感染経路不明・調査中が少ないのも特徴で、50%大きく上回っている東京都と対照的だ。飲食関係者が12人と少ないことからも〝夜の街〟とは無縁のようだ。市の新型コロナ担当者は「夜の街? 飲食店はほとんど閉まっています」と話した。
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全国で非常事態宣言が解除された5月25日から4日後の29日、記者会見した北橋健治市長は「4月30日から5月22日まで23日間、感染者はゼロだったが、5月23日(土)から28日まで6日連続で43人の陽性患者が発生した。事態が急変した。第2波の真っただ中にあると認識している」と危機感を募らせ、「感染拡大を防ぐため「(PCR検査や経路不明などを)徹底的に調査する」と述べた。
その後、同市での感染者は少なくなったが、7月下旬から再び増加に転じ〝第3波〟と呼べそうな状況にある。8月14日現在の累計感染者は548人に達している。うち死亡者は8人。入院患者は93人。人口10万人当たり累計感染率は54.6人で、全国平均の約40人を上回っている。
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北九州市と言えば、われわれ団塊世代は中学時代、八幡製鉄所(現日本製鉄九州製鉄所八幡地区)を中心に鉄鋼・化学・窯業・電機などの工場が集積する京浜、中京、阪神と並ぶ四大工業地帯の一つとして教わった。門司、小倉、若松、八幡、戸畑各市の名前を覚えた。八幡製鉄(その後新日鉄八幡)は社会人野球やラグビーの名門としてもよく知られた。村田英雄の「無法松の一生」もよく歌った。
しかし、他の〝鉄の町〟と同様、産業構造の変化に伴い、存在感はどんどん低下していく。
この20年間は福岡市と対照的に人口減少が目立ち、2005年に100万人を割り込み、ここ数年間は毎年5,000人前後減り続けている。現在の人口は約93.6万人だ。平成31年の65歳以上の高齢者人口比率は30.5%(全国28.3%)に達しており、20ある政令指定都市でもっとも高い数値となっている。
新型コロナは〝平等〟に降りかかると冒頭に書いたが、だからこそなのか、社会的弱者を叩く〝不平等〟社会をあぶりだしているのは…。