RBA OFFICIAL
 
2020/08/27(木) 13:32

従来の総花的提案から脱却 積水ハウス ライフスタイル型モデル「7stories」開設

投稿者:  牧田司

 夢工場.jpg
「関東 住まいの夢工場」

小林.jpg
「小林さんち。」

 積水ハウスは826日、茨城県古河市にある住まいづくりのテーマパーク「関東 住まいの夢工場」内の7棟のライフスタイル型モデルハウス「みんなの暮らし 7stories」のメディア向け見学会を行った。参加した報道陣は約30人。モデルハウスは予約制で91日にオープンする。

「みんなの暮らし 7stories」は「共感」が最大のコンセプトで、従来型の説明的総花的モデルハウスから脱却し、リアルな暮らしを体感できるように名前、家族構成、年齢、職業、趣味、価値観、ライフスタイルなどを具体的に設定し、各家族の暮らしのシーンを表現する空間づくりを行っているのが特徴。

例えば「子育てファミリーの家 小林さんち。」。夫:小林誠(35歳)会社員、妻:恵(35歳)会社員、長女:凛(7歳)、長男:樹(1歳)の家族構成で、共働き夫婦が建てた東京都・若葉台の新築を想定。家族みんなで「衣家事(イエゴト)」を楽しむ空間や子どもがのびのびと遊べる大空間リビング、多様な働き方をサポートする在宅ワークスペースまで居心地よく暮らせる工夫を提案している。

同社住生活研究所長・河崎由美子氏は、「新型コロナの影響で営業スタイルは個別対応型になりつつあるが、今回のモデルハウスはこれまで積み重ねてきた研究所の成果をもとに、向こう10年間楽しめる幸せになれる価値ある住宅をリアルに提案しようというのが本来の狙い」などと開発背景やコンセプトについて語った。

「7stories」の開設により、「関東 住まいの夢工場」は耐震性や断熱性など同社の技術的な強みを展示している技術・構造館と、同研究所が研究を続けている「幸せ住まい」に関する提案をワンストップで体験することができる新しい施設に生まれ変わる。

見学会を実施するにあたって同社は、東京駅と茨城県古河市の関東住まいの夢工場を大型バス2台で送迎したのだが、正席49席に対して二人掛けに一人利用の最大24名という制限を設けるなど万全のコロナ感染予防策を取った。

ガブリエルさんち。.jpg
「ガブリエルさんち。」

外山さんち。.jpg
「外山さんち。」

山本さんち。.jpg
「山本さんち。」

柴門さんち。.jpg
「紫門さんち。」

内藤さんち。.jpg
「内藤さんち。」

森.jpg
「森さんち。」

IMG_7708.jpg
河崎氏

       ◆     ◇

7stories」のモデルハウスを一つひとつ紹介する余裕はないが、コンセプトである「共感」を呼ぶものであるのは間違いない。全体的には、同社の1棟単価は4,000万円近いことからも分かるようにアッパーミドル・富裕層がメインターゲットになりそうだが、〝小道具〟がまたなかなかいい。

「紫門さんち。」には新車なら1,000万円はするポルシェの1998996型の中古車がガレージに展示されている。担当者が「びっくりするほど安く買えた」と話したので、「成約者におまけで付けたらどうか」と聞いたら「車は売りません」とのことだった。

同社のヒット外壁材「ダインコンクリート」をリビングダイニング内に取り込んだ「外山さんち。」の提案にははっとさせられた。これは文句なしにいい。他社も真似るのは必至とみた。

「内藤さんち。」「ガブリエルさんち。」「山本さんち。」に設えてある楽器、書籍、日本酒、ウイスキーなどもコンセプトにぴったりだ。「ガブリエルさんち。」には「獺祭」などの名酒がずらり並べられており、食卓には記者の大好きなアユの塩焼きが7匹(もちろんフェイク)も盛られていた。記者が食べるのは1300円くらいの養殖ものだが、天然ものだったら12,000円以上する。うらやましい。お客さんと話し出したら止まらなくなるかもしれない。

ネーミングもいい。カレンダーは1週間(7日)が基本だし、カラスの子は七つ(羽)、ウルトラマンもセブンだ。北斗七星、七賢人、春も秋も七草、七味唐辛子、七人の侍…みんな七だ。

絵画が趣味で酒をこよなく愛す71歳の小生も自分の好みと、記者としての冷静な視点から「7stories」を評価した。

どれもこれもコンセプトが明確で甲乙つけがたいが、好みからいえば「アートと暮らす家 紫門さんち。」、「音楽を愉しむ家 内藤さんち。」、「和の感性を大切にする家 ガブリエルさんち。」を高く評価した。

平屋住宅の「アクティブシニアの家 山本さんち。」もいいが、過剰な造作家具などが気になり、せっかくの庭・緑を生かしていない間取りもマイナス材料だ。3階建ての「グリーンと暮らす家 森さんち。」は敷地面積が狭い都心居住の人には評価されるはずだ。「三世代家族の家 外山さんち。」は、子どもとの同居を望まない小生は対象外とした。孫に話して聞かせる自分の歴史などない。

記者としての視点でいえば、「子育てファミリーの家 小林さんち。」がもっとも優れていると思った。家事動線を考慮してキッチンの裏側にも作業スペースを設けたプランがよく、坪単価は7080万円くらいの坪単価も共感を呼ぶはずだ。

そして、何よりもよかったのは、住生活研究所課長・木野村昭彦氏(41)の堂に入る説明だった。開口一番「リアルを表現した」の短い言葉で特徴を言い切った。子どもとの接し方を話したのを聞いて学校の先生経験者かと思ったほどだし、洗濯物を取り込み、アイロン掛けする〝主夫〟を演じて見せたのには絶句した。

小生も〝主夫〟を約10年やったので、家事労働の大変さは分かっている。なぜそんな芸当ができるのか本人に聞いたら、「うちは完全フルタイムの共働きなので、家事は妻と出来る限り平等に分担していて、私も妻と同様に料理や洗濯も普通にこなします。アイロンに関しては妻はあまりせず、主に私が担当しています」と話した。

なるほど。実践の裏付けがあるから説得力がある。木野村氏はこれまで商品開発部門を担当されてきたようだ。営業を担当したら他人の2倍は売れるのではないか。

〝話術〟では、「和の感性を大切にする家 ガブリエルさんち。」を担当した沢辺泰代氏がとびぬけていた。日本文学を研究する大学教授の〝ガブリエルさん〟は実在する人ではないかと思えるほど、具体的でさもありそうな話をすらすらと語った。沢辺さんもまたどんな顧客に対しても適切な対応できる能力の持ち主だ。(経歴を聞けばよかった)

 ハウスメーカーの住宅展示場やデベロッパーのマンションモデルルームは、いったい誰が住むのだろうと首をかしげざるをえない現実離れした提案も多い(とくにフェイクの造花・観葉植物)。顧客が見えていないのだ。「7stories」がモデルハウスのあり方を変えるかもしれない。シズル(sizzle)は住宅にも当てはまる。大変勉強になった見学会だった。

IMG_7680.jpg
「ガブリエルさんち。」の書棚

IMG_7683.jpg
「ガブリエルさんち。」の食卓

IMG_7672.jpg
「外山さんち。」のリビングダイニング

積水ハウス 古河に2億円「イズ・ステージ」と1.2億円「グラヴィス・ヴィラ」(2016/7/17

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン