積水ハウスとマリオット・インターナショナルは10月7日、地方創生事業「TripBase(トリップベース)道の駅プロジェクト」の一つの「フェアフィールド・バイ・マリオット・栃木宇都宮」ホテルを開業した。同日、関係者、メディア向けにオープニングセレモニー・内覧会を行った。
セレモニーの冒頭、挨拶に立った積水ハウス取締役専務執行役員・石井徹氏は、「『TripBase道の駅プロジェクト』のポイントは3つ。1つ目は道の駅にホテルを隣接させた点です。地域を渡り歩く拠点として宿泊に特化したホテルです。2つ目は新しい旅のスタイルの提案です。目的を定めずに、知られざる魅力スポットを巡り、偶然の出会いを楽しみながら渡り歩く。“旅の新たな価値”を提案できればと思います。3つ目はアライアンスです。これまでに25道府県の自治体、36社のパートナー企業の皆様と事業連携を進めています。2025年までに25道府県、約3,000室まで規模を広げていく」などと語った。
続いて登壇したマリオット・インターナショナル日本・グアム担当エリアヴァイスプレジデントのカール・ハドソン氏は、「マリオット・インターナショナルは世界中で成長し続けており、世界には7,400以上のホテルがあります。その中でもフェアフィールド・ブランドは30年以上にわたりゲストの皆様に家族のようなおもてなしをして参りました。『フェアフィールド・バイ・マリオット・栃木宇都宮』は、日本で55番目のマリオットブランドのホテルとなり、マリオット・インターナショナルが日本に初めて導入する、“道の駅に近接”したロードサイド型ホテルです」と紹介した。
来賓として出席した宇都宮市長・佐藤栄一氏は、「年間140万人のお客様が訪れる『道の駅うつのみやろまんちっく村』の中にホテルを作っていただいたことで、大谷観光含めた宇都宮の大きな財産になっていくものだと思います。行政も一体となり、おもてなしの心で育てていきたいと思います。今後、県内の自治体が連携して盛り上げていくことで、栃木宇都宮がさらに成長していけるように努力してまいりたいと思います」と歓迎の言葉を述べた。
施設は、東北自動車道宇都宮ICから車で約5分、宇都宮市新里町に位置する宿泊特化型の3階建て延べ床面積約3,100㎡。客室は87室で、広さは全室25㎡。ルームチャージ(大人2人と子ども1人)は1万円。
約46haの滞在体験型ファームパーク「道の駅うつのみやろまんちっく村」に隣接しており、同施設内の露店風呂を利用できるほか地元産食材を使った料理やオリジナル餃子、園内で醸造された地ビール、イチゴの摘み取り体験やイチゴのスイーツ作りなどか行える。カール・ハドソン氏は、コロナ過にもかかわらず満室稼働したと報告した。
両社は2018年、「TripBase(トリップベース)道の駅プロジェクト」を立ち上げ、2020年10月6日に開業した岐阜県2か所のホテルに続く3か所目。今後2025年までに全国25道府県の自治体、36社のパートナー企業と連携し約3,000室規模へ拡大する予定。
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ホテルは積水ハウスの十八番〝5本の樹計画〟も盛り込まれているのが特徴の一つだが、客室に入った途端、飛び上がらんばかりに感動した。床は郊外マンション市場を席捲しつつある直床のそれと比べてはるかに柔らかく、子どもだけでなく家族みんながトランポリンを愉しむような心地にいざなってくれるのではないかと思った。
客室の広さは全て25㎡で天井高は2400ミリくらい、浴槽はなし、冷蔵庫はあるがくしや髭剃り、浴衣・バスローブもなし(パジャマはあり)など設備仕様・アメニティなどは他の宿泊特化型でもそうないのではないか。
アメリカの小説などによく登場するモーテルに似ているのかとも思ったが、ホテル担当者に聞くと、それらよりは豪華だということだった。共用部を含め施設全体が火器の使用は不可となっているのにもびっくりした。客室1室あたりの投資額は約2,000万円。
感動はもう一つあった。電通PRによるセレモニー・内覧会に関するオフィシャル素材提供が画像も映像も完ぺきだったことだ。
記者はこの種の取材ではいつも登壇者が話すのを必至にメモし、記事にしている(時にはテープに残すこともあるが)。同社はその手間を省いてくれた。前段の各氏の挨拶は全てコピー&ペーストしたものだ。
しかし、情報提供が完ぺきであるからこそ取材する記者の眼力が試される。コピー&ペーストすれば〝講釈師見て来たようなウソをつく〟ことも可能だが、提供されていない情報をどのように探り出し、記事にするかが問われる。今回の取材でそれができたかどうかは自信がない。
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取材で楽しみにしていたのは栃木弁を聞き、名物郷土料理「しもつかれ」やイナゴの佃煮・ふりかけなどを食べることだった。
栃木弁は、語尾に〝だべ〟〝だっぺ〟などと濁音・半濁音を付けるのが特徴で、聞きようによってはひどく乱暴で汚く、人を小ばかにするような響きもあるが、伊勢の〝な言葉〟のように丸く収めこむような働きもする。
カール・ハドソン氏が「皆さま、こんにちは。本日は『フェアフィールド・バイ・マリオット・栃木宇都宮』にお越しいただき誠にありがとうございます」「お客様が家族的で温かさとともに楽しんで頂くことを心から願っています」などと日本人以上に美しい日本語でもって心のこもった挨拶(小生は英語をまったく解せず、この部分だけがよく聞き取れた)をされたので、宇都宮市出身の佐藤市長も「いいホテルだっぺ」などと返すのを期待していたのだが、全然話されなかったのは残念だった。
しかし、隣接する「ろまんちっく村」を訪れていた地元の方々からは栃木弁を堪能させてもらったし、「しもつかれ」やイナゴの佃煮についても話を聞くことができた。記事にはしないが、昔の栃木の人たちは厳しい環境を生き抜く術を身に着けていたことが分かる。慣れないと「しもつかれ」やイナゴの佃煮はちょっと食べられない。
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「ろまんちっく村」にある温泉・プールを備えた宿泊棟「ヴィラ・デ・アグリ」も見学させてもらった。内観は、施設案内などの張り紙がべたべたと張られていたのは割引材料だが、大谷石をふんだんに用いており、こちらも素晴らしい施設だ。東日本一の施設にランクされたこともあると聞いた。
客室は10室。新型コロナ前の稼働率は95%に達していたという。6名利用の客室料金は大人1人4,990円。客室に風呂はなく、露店風呂付の大浴場がある。もちろん男性用のみ覗いたが、小生より体重が3倍はありそうなトドそっくりで、湯上りのピンクどころか赤茶けた豚の丸焼きそのものの素っ裸の人を見て息が詰まりそうになった。
よせばよかった。貧相な裸体をさらけ出すことになるこの種の風呂を記者は好きではない。どこだったか、助平根性も手伝って男女混浴の風呂に入っていたら、前を隠すこともなく寸胴の大年増が群れをなして闖入してきたときは、襲われるのではないかと恐怖を感じ、すごすごと逃げだしたのだが、〝ゲラゲラ〟と嘲笑する声が背後から襲ってきたときは鳥肌が立った。
皆さんはそんな経験はないか。露天風呂は年齢制限を設けるべきだ。