RBA OFFICIAL
 
2013/04/11(木) 00:00

国交省「都市再構築戦略検討委員会」に期待

投稿者:  牧田 司記者

国交省「都市再構築戦略検討委員会」に期待

 


「都市再構築戦略検討委員会」

 

 国土交通省は4月9日、第1回「都市再構築戦略検討委員会」(委員長:奥野信宏氏)を開催した。地方都市の活力の維持・向上等を目指し、中長期的な視点で都市構造の再構築に向けた戦略を検討するためのもので、6月下旬までに予算要求、税制改革要望としてまとめる予定だ。

 

◇     ◆     ◇

 

大都市もまた深刻な問題を抱えてはいるが、大都市と地方都市の格差が拡大し、地方都市は人口の減少、高齢化、経済の停滞など危機的な状況にある。地域の再生・活性化は待ったなしだ。「都市再構築戦略検討委員会」といかめしい名称だが、今流行の言葉で言えば「都市再構築戦略」はリノベーションプランだ。委員のメンバーにデベロッパー代表がいないのは残念だが、素晴らしいプランが提案されることを期待したい。

 以下に各委員の発言をほぼ発言順に紹介する。記者席はお尻が痛くなる硬い丸椅子のみで、そこにずっと背筋を伸ばし2時間近く座りっぱなし。聞き取りにくい発言もあり、記者のメモる力も退化しているので正確でないこともあることを了承いただきたい。議事概要は国交省からホームページに公表される。

奥野信宏氏(中京大学理事)  私は「アジサイ型集約都市」と呼ばれる人口が2,000人から5,000人ぐらいの単位の一次生活圏を確保するコンパクトシティがテーマになると考える

根本祐二氏(東洋大学大学院教授)  これまでの都市計画が成功したのか失敗したのか、何ができて何ができなかったかをきちんと総括することが必要。DID(人口集中地区)についてももう少し分析すべき(この点については国交省は第3回会合で報告すると答えた)

辻琢也氏(一橋大学大学院教授)  コンパクトシティを形成する要件を明確にすべき。地方都市は農業もそうだが商業・サービス業の空洞化が著しい。今後民間レベルで自立的な都市を維持できるのか

寺島実郎氏(日本総合研究所理事長)  再構築には三つの〝柔らかな〟視点が必要。一つは高齢化の問題を深く洞察すること。 65歳以上を高齢化人口と呼ぶが、私は高齢化人口を生産人口に組み込むことも必要だと考える。二つ目は技術革新要素を取り入れることだ。コンビニと携帯は都市を劇的に変えた。三つ目は移動という要素だ。リニアは遠い世界でなくなった。固定観念で考えず、柔らかな発想で考えることが必要

若林資典氏(みずほコーポレート銀行産業調査部長)  ハード・ソフト両面に分けて考えるべき。ハードでは未利用地の利用などを規制も含めてお金のかからない方法が必要。住宅ローンなどは地域によって異なっていい

村木美貴氏(千葉大学大学院教授)  「身の丈にあった再整備」「規制できるのか」「コンパクトな暮らしやすさ」などについてもっと論議すべき

岸井隆幸氏(日本大学教授)  広域的な視点で地方都市のあり方を考えるべきだし、地方を鼓舞するシステムも必要。車社会の是非も考える必要がある

藤木正和氏(三協立山社長)  人口42万人の富山市はよくやっている。高岡市も学びたい

小澤吉則氏(長野経済研究所調査部長)  人口10万人以下の都市は工場が去り若者がいなくなる構造が深刻。10万人以上の都市はシャッー商店街化が止まらない。中心市街地の空洞化はとめどなく広がっている

正田寛氏(太田商工会議所会頭)  太田の街は人口が若干増えている

藤沢久美氏(シンクタンク・ソフィアバンク代表)  アテンションエコノミーが注目されているように、自治体によってはいろいろチャレンジして成功しているところもある。そういう事例に学びたい

 

◇     ◆     ◇

 

 記者は寺島氏が「もっと柔らかな視点が必要」と発言したことに注目した。今から3年前、国交省の「建築法体系勉強会」で学習院大学教授の櫻井敬子氏が同じような発言をしたのを思い出した。櫻井氏は「建基法も都市計画法も息の詰まる法制度。もっとおおらかにアイデア、仕組みを考えてもいいのではないか」と語っていた。

 寺島氏も櫻井氏も専門は都市計画ではないが、専門外の有識者から見ると都市計画法も建築基準法も窮屈な法律に見えるようだ。そのために、寺島氏が語った「全国一律の平板な空間しかできない」という指摘は的を射ていると思う。

 この点について、検討委員会の終了後、国交省都市局長・川本正一郎氏が「これまでの都市計画のツールは市街化区域と調整区域に分け、用途地域を決めていく税や金融と切り離した形で進めてきたが、これでいいのかという疑問もある。既存のツールにとらわれず論議していただきたい」と一歩踏み込んだ発言をしたのに注視したい。

 また、根本委員が「施設」と「機能」の文言について言及し「論点がクラクラしている」と発言したのにも興味をそそられた。根本委員は、本来街の機能を維持すべき手段である施設が自己目的化していると指摘したと記者は理解した。

 門外漢の記者の考えを言わせてもらえば、戦後の都市計画は出発時点で間違っていたと思う。都市計画法の理念にある「都市計画は、農林漁業との健全な調和を図りつつ」(第2条)というのは名ばかりで、都市と地方、都市と農村を対立軸として考えたことが間違いだったのではないか。「市街化を促進すべき地域」「市街化を抑制すべき地域」という文言にそれが端的に示されている。

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン