この前、どこかのテレビ局が、〝住みたい〟ではなく〝住みやすい〟街ランキングで「川口」がトップになったと報じた。
そのまま見過ごしてもよかったのだが、新型コロナの影響で現場取材が極端に減った分だけストレスがたまり、無聊をかこつ小生の胡乱な神経を刺激するものがあった。以下は暇に飽かせて調べた住みたい街やら住みやすい街についての小生なりの見解だ。もちろん人それぞれ。誰がどこに住もうが住みたいと考えようと勝手だ。それに異論をはさむ意図は全くないことを最初に断っておく。
この〝住みやすい街〟は、アルヒ(ARUHI)の「住みやすい街大賞」のことで、①住環境②交通利便性③教育環境④コストパフォーマンス⑤発展性の5つの項目について住宅評論家などが審査して発表しているものだ。
これによると2021年のベスト10は①川口②大泉学園③辻堂④有明テニスの森⑤大井町⑥たまプラーザ⑦小岩⑧花小金井⑨千葉ニュータウン中央⑩浦和美園の順だ。
前年2020年のベスト10は①川口②赤羽③たまプラーザ④柏の葉キャンパス⑤入谷⑥王子⑦武蔵小金井⑧小岩⑨ひばりが丘⑩東雲で、2019年は①赤羽②南阿佐ヶ谷③日暮里④川口⑤柏の葉⑥勝どき⑦南千住⑧千葉ニュータウン⑨小岩⑩矢向の順だ。
冒頭に書いたように〝そうなの〟と受け流してもいいのだが、川口、赤羽が選ばれるのになぜ浦和、大宮、所沢はないのか、浦和美園、矢向、辻堂、東雲などと同レベルの街は数百か所はあるのではないかという疑問が沸々と湧いてきた。一方で坪単価400万円もするたまプラーザが上位にランクされる…この選定の根拠がまったく理解できない。
また、この大賞にはシニア向けも紹介されており、2021年は①武蔵小山②南大沢③平塚がベスト3だ。
南大沢がシニア向けというのも不思議だ。ここには葬儀場も老人向け施設もあるが、坂も多くバリアフリーに問題がある。アウトレットパークもシニア向け商品は少ない。
わが街・多摩センターのほうが南大沢と比べたらポテンシャルははるかに勝ると小生は思う。駅前のスーパーはものすごく安いし、金がなくても散歩する公園などに事欠かない。とはいえ、シニア向けに選ばれたら猛反発する。判断するのは他ではない、消費者だからだ。
どうもこの大賞は、他のランキングに対抗するためか差別化を図るためか、あるいは選者の趣向の反映なのか判然としないが、恣意的というか政治的な不快な臭いが芬々とする。デベロッパーの影もちらほら見え隠れするといっては失礼か。どこそこのラーメン、餃子がおいしいなどというB級グルメ紹介サイトと同じかそれ以下だ。
これよりは、いわゆるMAJOR7の全国のマンション購入意向者約78万人を対象にした「住んでみたい街アンケート」のほうが〝王道〟を行くような気がする。あれやこれやの前提条件をつけずストレートに消費者に聞いているからだ(結果としてMAJOR7が分譲するエリアが上位にランクされることはあるが)。
その最新の第32回の結果はどうか。①恵比寿②目黒③吉祥寺④自由が丘⑤横浜⑥品川⑦中目黒⑧表参道⑨二子玉川⑩代々木上原がベスト10だ。以下、⑪広尾⑫四ツ谷⑬代官山⑭東京⑮麻布十番⑯豊洲⑰飯田橋⑱渋谷⑲青山一丁目⑳茗荷谷㉑たまプラーザ㉒池袋㉓荻窪㉔鎌倉㉕中野㉖みなとみらい㉗代々木㉘学芸大学㉙高輪ゲートウェイ㉚市ヶ谷㉛白金台㉜三鷹㉝新宿㉞三軒茶屋㉟新浦安㊱目白㊲浦和㊳田町㊴神楽坂㊵白金高輪がベスト40だ。
これと似たものでは、リクルート住まいカンパニーの関東圏に居住している20歳~49歳の7,000人を対象にした「SUUMO住みたい街ランキング」調査がある。
2020年では①横浜②恵比寿③吉祥寺④大宮⑤目黒⑥品川⑦新宿⑧池袋⑨中目黒⑩浦和がベスト10。以下、⑪渋谷⑫東京⑬鎌倉⑭中野⑮表参道⑯自由が丘⑰赤羽⑱二子玉川⑲さいたま新都心⑳武蔵小杉㉑船橋㉒北千住㉓立川㉔たまプラーザ㉕柏㉖川崎㉗海老名㉘荻窪㉙三軒茶屋㉚藤沢㉛千葉㉜桜木町㉝三鷹㉞上野㉟津田沼㊱秋葉原㊲舞浜㊳みなとみらい㊴つくば㊵青山一丁目がベスト40。
このほかのランキングも紹介する。長谷工アーベストはWEBアンケート形式の「住みたい街(駅)ランキング」を発表しており、今年の首都圏ランキングでは、①横浜②吉祥寺③大宮④浦和⑤立川⑥三鷹⑦恵比寿⑧品川⑨池袋⑩船橋の順でベスト10入りしている。
大東建託も「住みたい街(駅)ランキング」を発表している。①吉祥寺②横浜③恵比寿④みなとみらい⑤鎌倉⑥自由が丘⑦中目黒⑧新宿⑨大宮⑩池袋の順。
LIFULL HOME'Sは「買って住みたい街」ランキング。2020年のベスト10は①勝どき②恵比寿③三鷹④北浦和⑤東京⑥八王子⑦浦和⑧町田⑨二子玉川⑩大井町の順。
まだある。東洋経済新報社の「住みよさランキング」だ。安心度、利便性、快適性、富裕度の4項目20指標を全国の自治体ごとに数値化し、順位づけしているものだ。
2020年は①野々市市(石川)②文京区③武蔵野市がベスト3。ベスト10のうち6市が石川、福井県。首都圏では渋谷区が13位、21位に新宿区、23位に立川市、24位に台東区、29位に豊島区がランクされている。
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以上、様々なランキングを紹介した。東洋経済のランキングは調査指標に問題があるといいたいのだが、言い出したらきりがない。ここでは言わないことにする。ランキング全体で共通するのは、選ばれた街(駅圏)のマンション坪単価は一部の郊外を除き300万円を突破することくらいか。
注目したいのは東京だ。過去のランキングを調べていないが、少なくとも10年前までは20位にも入っていないはずだ。住む街として認識されていなかった「東京」を日本の中心地としての地位を不動のものにした三菱地所はさすがというべきか。
記者も懐具合や家族、仕事のことを考慮に入れず、住みたい街をあげるなら真っ先に東京駅を中心に日本橋、銀座を選び、その次に赤坂、青山、六本木、神楽坂、神保町、大森、三浦半島などを選択する。わが多摩センターは年寄りには結構つらい。
東京、日本橋、銀座は文句なし。どうして三菱地所は東京駅周辺でマンションを分譲しないのか不思議だ。坪3,000万円でも安いと思う。神保町は本好きにはたまらない街だし、大森は「馬込文士村」を散歩したいからだし、三浦半島は海が好きだから選ぶ。
吉祥寺は選ばない。いいのは井の頭公園周辺だけで雑多な街だ。自由が丘は何度行ってもよく分からない街だ。
〝穴場〟などはないが、強いてあげるなら、どこのランキングにも一駅も選ばれておらず、割り負け感が著しいわが京王線と東武スカイツリーライン(東武伊勢崎線)、京急線だ。
京王線は2022年度の完成を目指し、笹塚駅-仙川駅間の道路と鉄道との連続立体交差事業を行っている。25か所の踏切をなくし、この間の7駅は高架駅となる。そうなれば一挙に利便性が高まる。
東武スカイツリーラインはとっくに複々線化がされており、日比谷線、千代田線、つくばエクスプレスとの接続もされている。遅延がもっとも少ない沿線の一つだ。
山がちの海岸線を走る京急線は、車窓からの光景が目まぐるしく変わりすっかり遠足気分にしてくれるのがいい。真夏に制服姿の青臭い防衛大の学生に出会うと性的興奮を覚えるし、せわしなく行き交う船が止まって見える観音崎ホテルからの眺望は全てを忘れさせてくれる。
JRと並行して走っているためか、負けてなるかと予定時刻より早く着きすぎて国交省から目玉を食らったというのもほほえましいではないか。
成長が見込める街(駅)では京葉線南船橋をあげたい。穴中の穴はここだ。いま三井不動産レジデンシャルが駅前でマンションを分譲しているが、坪単価は204万円だ。東京駅まで約30分。これほど安いエリアはまずない。
隣接する駅前の市有地約45,242㎡の再開発計画も決まった。三井不動産グループが商業、物販、飲食、サービス、公園のほかマンションも建設する。ここも劇的に変わるはずだ。
もう一つ。記者は街(駅)のポテンシャルを左右するのは①ホテル②デパート③緑環境、歴史・文化を感じさせる施設の3つだと考えている。ホテルは冠婚葬祭機能を備えたもので、デパートは最近流行らないので大型商業施設に置き換えてもいい。緑環境は街路樹や公園など、歴史・文化施設はコンサートホールなどだ。
この3つを満たす街(駅)は、山手線ターミナルなどを除くと意外と少ない。東京都は立川、八王子、神奈川県は横浜、みなとみらい、川崎くらいで、埼玉県と千葉県は皆無だ。(わが多摩センターはかつてこれを満たしていた)
まだまだ書きたいことはあるが、この辺でやめておく。言いたいのは〝住めば都〟だ。消費者の方々は雑音に惑わされず賢明な選択をしてほしいということだ。