国土交通省は12月16日、令和元年空き家所有者実態調査結果をまとめ発表した。
調査は、空き家に関する基礎資料とするため5年ごとに実施しているもので、今回は平成30年住宅・土地統計調査から無作為に抽出した約12,000件を対象に行い、有効回答があった約6,000件(回答率47.7%)の結果をまとめたもの。
結果のポイントは以下の通り。
(1) 空き家の5割超は腐朽・破損がある。別荘や貸家・売却用等以外の「その他」の空き家では、腐朽・破損がある割合が6割を超える。
(2) 空き家の約4割は、最寄りの鉄道駅から2,000m以上離れているが、貸家用の空き家の約半数は、鉄道駅から1,000m未満に立地。
(3) 所有世帯の約7割は、空き家まで1時間以内の場所に居住。貸家用やその他の空き家を所有している世帯は、比較的近くに居住している割合が大きく、1時間以内が8割を超える。
(4) 空き家の管理頻度は、「月に1回~数回」の割合が最も大きく約4割。二次的住宅・別荘用の空き家の利用頻度についても「月に1回~数回」の割合が最も大きく約4割。
(5)空き家を取得した際に、登記の名義変更や新たに登記を行った割合は約8割。
(6) 今後5年程度の利用意向は、「空き家にしておく」が約3割、「賃貸・売却」や「セカンドハウスなどとして利用」がそれぞれ約2割。
(7) 賃貸・売却の場合の課題は、「買い手・借り手の少なさ」「住宅の傷み」「設備や建具の古さ」の順になっている。
(8) 寄付・贈与の意向があるもののうち、一定の費用負担を伴っても寄付・贈与をしたい人の割合は、約4割であった。
(9) 空き家にしておく理由は、「物置として必要」「解体費用をかけたくない」「さら地にしても使い道がない」の順になっている。
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「空き家」は大きな社会問題になっているが、記者はテーマが大きすぎるので手におえず、現場取材も難しいので深入りしてこなかった。
先日のことだ。神楽坂に取材する機会があったので、「神楽坂ホン書き旅館」(2007年/新潮文庫)でも紹介された「和可菜」に寄ってみた。文庫が出版されたころはまだ営業されていたような気がするが、この日は明らかに「空き家」になっていた。前面道路の幅員は2mあるかどうかなので、前途を思うと悲しくなった。
このような4m道路未満のいわゆる既存不適格建築物の「空き家」がどれくらい存在するか分からないが、東京都23区でもっとも空き家が多いとされる豊島区の平成25年の調査では、住宅総数の15.8%の約3万戸の空き家のうち4m未満道路に接道するもの37.2%に上っている。
他の都市も同様だ。京都市東山区では幅員4m未満の道路に接する空き家割合は47.8%で、上京区(44.5%)、山科区(44.2%)、右京区(41.0%)なども4割を超える。
国交省の調査と併せ考えると絶望的になってくる。後段冒頭に「深入りしない」と書いたが、記事は両刃の剣だ。下手をすると空き家解消どころか地域崩壊を引き起こす危険性もある。添付した8年前の記事にはアクセスが殺到した。具体的な地名を出していたら袋叩きにあったのだろうと思うと今でも恐ろしくなる。
限りなく限界集落に近い郊外団地 人口4割減55歳以上の人口比率は48.7%(2012/7/27)