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2021/02/04(木) 21:28

帝国ホテル 激安のサービスアパートメント 業態変革を促すきっかけとなるのは必至

投稿者:  牧田司

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帝国ホテルプレス・リリースから

 帝国ホテルは2月1日、「帝国ホテル サービスアパートメント」を開始すると発表した。当面は期間限定で、入居開始は3月15日から7月15日まで、タワー館の客室3フロアの一部を改修し、99室をサービスアパートメント利用とするもの。受付開始の2月1日から申し込みが殺到し、すべて満室となっている。

◇       ◆     ◇

 同社がサービスアパートメントを始めると聞いたとき、サービスアパートメントは珍しくもなんともないから、そのままスルーした。どこか新たに施設を建設するのだろうと思った。稼働するのは1、2年先だろうと。

 ところが、そうではなかった。日比谷(内幸町)のホテル内99室をサービスアパートメント方式に切り替えるというものだった。

 驚いたのはその料金だ。スタジオ/STUDIOタイプ(約30㎡)で月額(30泊)36万円(1日12,000円、坪3.6万円/月)というではないか。

 これはもう破格の安さだ。新型コロナの第一波で緊急事態宣言が発出されたとき、アパグループが1泊2,500円(客室面積は15㎡以下のはず)のキャンペーンを張ったときも驚いたが、今回はそれ以上の衝撃を受けた。

 新型コロナの蔓延で何が正か邪か善か悪か判然としない世の中にあって、記者の行動範囲は部屋の中だけで思考力も退化の一途をたどっているが、この料金は激安だとほとんど瞬時にはじき出すことができた。(小生の頭は全てをマンション価格に置き換え、利回りを計算できるように進化している)

 どれだけ安いか。まず一般論からいって、仮にここがオフィスだったら坪賃料は5万円/月以下はありえない。30㎡でざっと50万円だ。マンションを建てるなら坪2,000万円くらいだろうから2億円だ。これでも利回りを3%として賃料は月額50万円だ。

 これだけでもかなり安いことがわかるが、料金にはシャンプー類、歯磨き・シェービングセット、くしなど各種アメニティ類、室内清掃ならびにリネン、タオル、寝間着類交換(一週間に3回)、コーヒーメーカー、共同利用スペース「コミュニティルーム」での朝食用のパンの提供のほか洗濯乾燥機、電子レンジ、オーブントースター、アイロン利用ができ、ホテルラウンジでのコーヒーまたは紅茶が飲み放題で、ホテル駐車場、フィットネスセンター、プール、サウナも無料だ。このほか、ランドリー料金月額30,000円、ルームサービス月額60,000円は定額制だ。

 他のサービスアパートメントとも比較してみよう。記者が初めてサービスアパートメントを取材したのは2002年、三井不動産のオークウッドジャパンの第1号物件だった「オークウッドレジデンス麻布十番」だったが、43㎡の月額料金は49万円(坪3.8万円)だった。同じころ、サービスアパートメント事業を積極的に展開していたスペースデザインを取材したが、「ビュロー高輪」の賃料の高さに驚愕したことがある。料金は忘れたが、現在は25㎡で30万円(坪4万円)だ。

 いかがか。さらに、いつもの貧乏人根性を丸出しにして、損得を勘定した。コーヒーは1,500円(税別)だし、ルームサービスに名物カレーライスを注文したら2,500円(同)はする。1日コーヒーを2杯、カレーライスを1回食べれば、月額にして10万円得することにな。その他の割安サービスを含めれば数十万円の割安感がある。申し込みが殺到し、ほぼ当日で満室となったのは当然だ。 

 だが、しかし帝国ホテルだってちゃんと計算しているはずだ。毎日コンビニで弁当と水の値段以下のまがい物の発泡酒を買って客室内で飲食するような人は皆無で、1杯1.200円のビールを注文するだろうし、備え付けの数千円もする酒を飲むだろうし、コースで3万円くらいする食事もするだろうから…きっと2人利用で1泊10万円くらいになるだろうと読んでいるはずだ。

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 同社は1月29日、2021年3月期第3四半期決算を発表。新型コロナの打撃は大きく、売上高166億円(前年同期比61.6%減)、営業損失84億円(前年同期は42億円の利益)、経常損失44億円(同44億円の利益)、純損失86億円(同30億円の利益)となった。

 サービスアパートメントを開始したからといって赤字幅を大幅に縮小できるはずはなく、オリンピック開催もどうなるか不明なので予測は難しいが、同社はその先を読んでいるのは間違いない。業態の変革に一石を投じる覚悟で今回の発表となったのではないか。その意思を広く伝えるための破格の料金設定だと理解した。他のサービスアパートメント事業会社とは一味も二味も異なった事業展開を指向しているはずだ。同業他社も追随するのは必至と見た。

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 昨日(2月3日)は、午後2時過ぎに取材を終えてから一服を兼ねてビールかワインでも飲もうと都心のあるホテルに立ち寄ったのだが、レストランは朝食サービスしか行っていないと伝えられた。営業しているのはどこにでもあるチェーン店の飲食店のみだった。これではコロナを避ける意味がないと、たばこを1本吸ってそのまま帰った。

 これまでも何度も書いた。一律の飲食店の時短要請などやるべきではない。コロナ自警団のほうが怖い。ゼロリスクはありえない。いま一番安全なのはホテルだ。多少料金は高いが安心料と考えれば割安だ。喫煙室だってどこも備えている。

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