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2021/02/27(土) 13:06

コロナ禍 貧困、飢餓、健康福祉、不平等解消などSDGs達成の妨げに PR総研調査

投稿者:  牧田司

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PR総研は2020年3月、(一社)日本記念日協会の認定を受け3月17日を「みんなで考えるSDGsの日」に制定。SDGsの「17 Goals」にちなみ、毎月17日に情報の発信や交流を中心とした取り組みを行っている

 共同ピーアールのシンクタンクである共同ピーアール総合研究所(PR総研)は2月26日、報道関係者を対象にSDGs広報に関するインターネットアンケート調査「SDGs広報2020年の振り返りと2021年の展望」の結果をまとめ公表した。

 調査は、テレビ・新聞・雑誌・ラジオ・Webなど報道関係者を対象に2020年12月18日~2021年2月11日に行われたもので、回答者は136人(選択式・一部記述式)だった。

 調査によると、SDGsの有効性については「2030年までの目標として有効である」と回答したのは83.8%で、2030年までの17ゴールの達成見通しは「2分の1程度」以下とする選択が8割に達し、コロナ禍がSDGs達成の妨げになっていることが浮き彫りになった。

 SDGsの取り組みに対するコロナ禍の日本での影響では、「1.貧困撲滅」「2.飢餓撲滅」「3.健康と福祉増進」「10.不平等解消」の4項目で「達成から遠のいた」が6割超で、一方で「達成に近づいた」評価では、「9.産業と技術革新」項目が32.4%でトップ(「達成から遠のいた」はが33.1%)だった。

2020年の振り返りでは、「SDGsに関する企業・団体からの情報発信は増加している」が80.1%、「17ゴールのうち優先して発信されている項目は「7.エネルギー」、「5.ジェンダー平等」、「13.気候変動対策」、「最も印象に残ったニュースは「2050年カーボンニュートラル宣言」、「ガソリン車販売全廃」が上位に挙げられた。

 注目キーワードでは、全体では「DX」および「withコロナ/アフターコロナ」「地方創生」を3割以上が選択した。

 このほか、「企業や団体によるSDGsの取り組みについては、今後さらに積極的に「取材したい」 が70.6%、「特に取材したいもの」の1位は「商品・サービスや製造プロセス等にSDGsを採り入れる取り組み」、次いで「トップ・マネジメントの考え方や戦略」、「プレスリリースなどの広報活動で重視する要素」の1位は「ファクト(取り組みの事実)」が66.2%、「固有性(独自性・先進性)」27.2%、「経済性(マーケット・ビジネス価値)」26.5%など。

SDGsメディアアンケート結果リリース公表用20210226.pdf
SDGsメディアアンケート結果【詳細レポート】20210226.pdf

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 時宜を得たアンケートだと思う。記者は、アンケート方式の調査は好きではないが、「飲み会」はもちろん、自分を成長させる機会を自ら絶つような取材の誘いを断ることはこの40年間ほとんどしてこなかったので、回答することにした。136分の1は記者だ。アンケート結果について感想を以下に述べる。

 まず、回答者の数が136人だったことについて。PR総研は100人以上を目標にしていたようなので目標は達成できたのだろうが、やや少ないような気もする(日本新聞協会の2020年のデータだけでも記者数は約18,000人)。自由回答で「2020年、最も印象に残ったSDGsに関するニュースは何ですか」には「CLT活用など木造建築物の増加」と回答し、「『SDGsへの取り組みに積極的だ』と感じる企業や団体名」では「積水ハウス 企業理念が『人間愛』〝世界一幸せ住まい〟を目指す取り組み」と書いた。同社の取り組みが立派なのは、社員一人ひとりが〝自分は17項目のうち何に貢献するか〟を自覚していることだと思う。

 積水ハウスを挙げた人は他にも1人おり、グループ全体で10人以上あった「TOYOTA」や6人の「Panasonic」には及ばないが全体で8番目(同数が多数)だった。他の住宅・不動産会社は大和ハウス工業を挙げた人が1人。

 コロナ禍が与えたSDGsの取り組みへの影響についての回答は大変参考になった。

 「日本において、新型コロナウイルス感染症の拡大により達成に影響があったと思うSDGsのゴールはどうですか」という問いに対して、達成から遠のいたが最多となる項目は8(貧困、飢餓、健康と福祉、質の高い教育、働きがいと経済成長、人や国の不平等など)という結果は記者もそう思う。

 その一方で、「産業と技術革新の基盤を作ろう」(32.4%)「エネルギーをみんなそしてクリーンに」(21.9%)に次いで「達成に近づいた」と評価された「住み続けられるまちづくり」(20.3%)はやや意外で、複雑な思いがする。

 「住み続けられるまちづくり」は住宅・不動産業界の大きな課題の一つで、最近はコンパクトシティ、スマートシティなど先進的な取り組みも増えてはいるが、難問は山積している。

 主なものを列挙すると、都市と地方の格差拡大、東京への一極集中、空き地・空き家の増大、自然災害に対する脆弱性、旧耐震の木密地域、高齢者の孤独死、待機児童、貧困ビジネスと紙一重のセーフティネット住宅、生活保護世帯の増加、都市公園・緑地の荒廃、生物多様性の減少…上げたらきりがない。

 そしてまた、近年の地価・建築費の上昇で分譲住宅は価格が上昇する一方で、専有圧縮、狭小住宅の増加など質の低下、居住環境の悪化はどんどん進行している。住宅難民が激増しないか心配だ。

 もう一つ。これは予想されたことではあるが、SDGsに関する企業・団体からの情報発信のうち、17ゴールのなかで特に優先して発信されていると感じるものについては、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」(45.6%)「ジェンダー平等」(37.5%)「気候変動に具体的な対策を」(35.3)が高い数値を示した他方で、「平和と公正をすべての人に」(0.7%)「飢餓をゼロに」(5.1%)「安全な水とトイレを世界中に」(5.1%)「陸の豊かさを守ろう」(5.9%)「人や国の不平等をなくそう」(6.6%)などが低い数値にとどまっているのはとても残念だ。

 コロナ禍で、政治家の収賄、高級クラブのはしご、女性蔑視発言、高級官僚の賭け麻雀、接待問題などが噴出しているが、これらはアンケート結果の裏返しだ。政治家や官僚の不正や不平等社会を許す諦めがわれわれにないとは言えないし、「平和」を叫ぶと非国民扱いされる政治風土はずっと温存されているのではないか。

 「飢餓」は食品ロスと表裏一体となすものであり、「安全な水」もそれこそ湯水のように水資源を費消する国であることの自覚の欠如だ。

 PR総研も、「注目度が低い項目はすなわち重要性が低いというわけではありません。むしろ、こうした項目についてこそ光を当てる知恵と工夫が情報発信者に求められ、目標への取り組みとともに成果も適切にアピールしていくことが必要です」と総括しているが、これはメディアの課題でもある。

 SDGsが掲げる17の項目はみんな人類普遍の永遠のテーマであり、ゴールなどそもそもないが、今回のアンケートをきっかけにより力をいれて取り組んでいきたい。


 

 

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