西武ライオンズは3月8日、投資額約180億円、工期3年3カ月をかけてリニューアル工事を進めてきた「メットライフドームエリアの改修計画」のすべての施設が完了したのに伴い、竣工式を行った。当日はオーナーの後藤高志氏(西武ホールディングス社長)のほか、代表取締役社長・居郷肇氏、辻発彦監督、施工主の鹿島建設・押味至社長などが出席し、メディア関係者に施設を公開した。公式戦開幕日の3月26日(金)には一部の施設を除きオープンする。
改修計画は、「ボールパーク化」と「チームと育成の強化」の2つを軸に、2017年12月から工事が開始されており、自然豊かな周辺環境と半ドームという特性を活かすことで、開放感に満ちた、四季折々の風情が楽しめるボールパークを目指し、屋根の外側の広がりを有効に活用して大型フードエリアやこども広場などを整備した。
また、ライオンズ トレーニングセンター(室内練習場)、若獅子寮、CAR3219フィールド(西武第二球場)など選手の育成環境面についても施設を刷新し、野球に集中できる環境を整備した。
野球観戦以外にも楽しめる「ボールパーク化」に加え、選手の練習・育成環境の刷新を行ったことにより、「ファンにとっても選手にとってもより満足できる施設」へと変貌した。
ドーム内で行われたセレモニーで後藤オーナーは次のようにあいさつした。
「事故や遅延なく、予定通り『メットライフドームエリアの改修計画』の完了を迎えることができたことを、大変うれしく思っております。
メットライフドームエリアの改修計画には、『ボールパーク化』『チームの育成/強化』という2つの目的がありました。さまざまなエンターテインメント性の高いものを用意させていただいたことで、年齢、性別を問わずあらゆる世代の方に埼玉西武ライオンズの試合、そしてコンサートなどのイベントを心からエンジョイしていただけると思います。『チームの育成/強化』については、既に完成しておりますライオンズ トレーニングセンター、若獅子寮、さらにはCAR3219フィールドを整備したことで、若手のプレーヤーの育成、強化に存分に活かされることを期待しております。
コロナ下の中で、行動変容、価値変容、などを言われる時代ですが、プロ野球の開幕により、多くのファンの皆さま、国民の方に希望、元気、勇気、笑いをお届けして、日本を元気づける大きな力になっていきたいと考えております。西武グループの理念である『地域・社会の発展、環境の保全に貢献する』、『安全・安心、そして快適なサービスをご提供する』という理念に基づいて、このメットライフドームエリアをしっかりと運営していきたいと思います。
続いて、辻監督は次のようにあいさつした。
「グランドオープンを迎える年に、監督として指揮をとれることを大変うれしく思っております。この改修工事を経て、本当に新しい座席も増えた中で、先ほど『アメリカン・エキスプレス プレミアム ラウンジ』に足を運び拝見しましたが、ゆったりとした環境で野球を楽しめる素晴らしい場所だと思います。選手たちと同じ目線で野球を楽しめる、近くで選手と触れ合える、そんな素晴らしい場所を、メットライフドームの大きな目玉のひとつとして皆さまに楽しんでいただきたいです。
そして、メットライフドームの新たな歴史の幕開けとなるこの2021シーズン、日本一という大きな目標に向かって戦ってまいります」
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ここまでの記事はほとんど球団のプレス・リリースのコピペ。過不足なく伝えられたと思う。以下が、西鉄・西武ファン歴60余年の記者の独断と偏見の記事。やや我田引水的な部分もあるが、極力客観的に書くつもりだ。西武が嫌いな人もお付き合い願いたい。
素晴らしい施設が誕生した。記者は他の取材が入っており、公開された施設のうち半分くらいしか見学できなかったが、見学した施設は多分〝日本一〟だと思う。
その前に、どうして三重県出身の記者が西鉄ファンになったのかの経緯を紹介する。
熱烈なファンになったのは、知将・三原修監督時代の1956年から1958年まで読売巨人軍を下して日本シリーズ3連覇を達したあたりだ。ご存じない方も多いかもしれないが〝神様仏様稲生様〟が流行ったころで、中西太氏のほか、すでに鬼籍に入られた豊田、関口、仰木、高倉、島原の各氏らが活躍した時代だ。記者は7~9歳だった。
強かったからファンになったわけではない。伏線があった。小さい頃のことはよく覚えていないのだが、4歳年上の頭の悪い兄は捕手をしており、キャッチボールをしても記者に手加減などしなかった。別棟の風呂や便所の下見板、戸板などをどれだれ壊したことやら。兄との仲は最悪となった。1954年、記者が5歳のときだ。西鉄と中日が日本シリーズで対決した。中日・杉下投手が3勝するなど4-3で中日が日本一になった。当然、兄は中日ファン。ならば俺は負けた西鉄を応援しようとそのとき決めた。西鉄が負けたことがその後の記者の性格形成に大きな影響を与えた。
西鉄が西武に身売りされても心変わりなどせず、ずっと応援してきた。後藤オーナーは1949年の2月生まれで、記者より2か月年上だが、西武ファン歴は記者の方が長いはずだ。
さて、肝心の施設。トレーニングセンター、CAR3219フィールド、エントランスゲート、レンガサークル、ライオンズチームストア プラックス、3塁側コンコース新飲食エリア、グリーンフォレスト デリ&カフェはみんな素晴らしい。
トレーニングセンターは12球団最大級の広さということだ。内野フィールドエリアは内寸50m×50m、メットライフドームと同じ人口芝が採用されており、試合と同様の環境で練習が可能。ブルペンは5レーン、バッティングは4レーン。一部空調設備付き。ファンも練習風景を見学することができる。トレーニングセンターと全4層の若獅子寮(28室)は廊下でつながっており、野球に集中できる環境を整備したという。
記者は、神宮球場しかトレーニング室を見たことはないので比較は難しいが、雲泥の差だと思う。施設全体のスマートスタジアム化も行っているそうなので、投球や打撃データを駆使して選手育成に生かせるはずだ。
寮は門限が定められているが「門限破りはいない」(球団広報=本当かしら)そうだ。清原氏はしょっちゅう門限を破ったはずだ。
ライオンズチームストア プラックスは2階層で、600㎡を誇る大型旗艦店。ファンはたまらないだろう。
残念ながら、バックネット裏のアメリカン・エキスプレス プレミアム、4人掛けテーブル4、6~8名が利用できるバーティテラス、ブルペンかぶりつきシート、立見席ステンレスカウンター、パノラマウッド4など17種の客席や、これまでは芝生席だった外野に設けられた4,374席の指定席は見学できず、さらにベンチ内の空調設備も見ることができなかった。
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セレモニーが行われた約20分間、記者は〝夏熱く冬寒い〟球場の欠点はよくわかってはいたが、後藤オーナーや辻監督がスーツ姿なのにコートを着たままはというのはいかにも失礼だと思い、コートを脱いで震えながら必死にメモを取った。
後藤オーナーも辻監督も〝ペナントレース奪還〟〝日本一目指す〟をそれぞれ1~2回、合計で6回は口にしたはずだ。記者は、日本シリーズで勝つのは容易だと予想するが、目の上のたん瘤・ソフトバンクを倒すのは容易ではないと思う。現有勢力ではどうひいき目に考えても〝神様仏様稲生様〟のような計算が立つ投手が足りない。
しかし、練習環境は間違いなく日本一だと思う。これで、毎年のように続いていた全日本クラスの人材の流失に終止符が打たれると確信した。西武の黄金期(何度目になるのか)が始まる。
もう一つ、球団、野球ファンの方々にいかに西武が優れたチームであるかの客観的データを紹介する。
記者は以前、ドラフト選手の現役稼働年数を数日かけて調べたことがある。確証があったわけではないが、〝西武がナンバーワン〟という確信があったからだ。結果はその通りだった。次位は広島だったか。
スカウト陣の目利き力が優れていることの証左だ。そしてまた、監督やコーチに就任するスタッフの数も西武が他を圧倒しているはずだ。辻監督が就任した2017年には、ソフトバンク・工藤公康氏、ロッテ・伊東勤氏、中日・森繁和氏の西武出身者4人が監督をそれぞれ務めた。12人の3分の1だ。
もういい加減止める。辻さん、優勝できなくてもいい。行きつけのヤクルトファンの酒屋の親父は「いいんじゃないですか。西武は選手の育て方がうまい。儲かればいいんです」と、後藤オーナーが喜びそうな言葉を発した。ヤクルトがんばれ。
あっ、一つ肝心なことを書き忘れた。大型ビジョンは従前のものより2倍になり、臨場感溢れるものになった。その大型ビジョンの下の1塁側のフェンスには「野村不動産グループ」の広告が掲出されていた。
このほか住宅・不動産関係の広告では「住友不動産」が1塁側、「菊池建設」が3塁側の天井部分に掛かっていた。
「ボールパーク」に唯一欠けているのはやはりホテルだ。首都圏の他の球場は全て立派なホテルが近接している。
菊池建設の広告(3塁側)