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2021/03/20(土) 18:50

多点居住(5か所)を実践 有元さん×八木さん 小野さんが進行役 FRKのセミナー視聴

投稿者:  牧田司

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 不動産流通経営協会(FRK)が3月20日行った「第15回FRK住まいと暮らしのセミナー」をオンラインで視聴した。料理研究家・有元葉子さんと長女の建築家・八木このみさんによるトーク「有元葉子 私の住まい考 家と暮らしのこと」がテーマで、ケアリングデザイン代表理事・小野由記子さんがファシリテーターとなり、有元さんと八木さんファミリーの5つの家について約1時間30分にわたって語り合う内容だった。400人以上の人が視聴したもようだ。

 紹介された5つの家とは、「イタリアの家」「自宅」「田園調布のキッチンスタジオ兼用の家」「野尻湖の別荘」「自宅兼事務所の葉山の家」だった。

 まず、イタリアの家。購入したのは1996年で、14世紀に建てられた壁の厚さが1mもある石造りの家だ。

 有元さんは東京の賃貸マンションに住んでいたのだが、旅行が好きで1年の間に3~4カ月は海外で暮らしていた。最初はイタリアのトスカーナがいいと思っていたが、なかなか適当なものが見当たらなかった。旅行中、紹介されたトスカーナの隣の田舎町にあるレストランを利用しようと車から降り立った瞬間、〝ここに住もう〟と直感で決めたそうだ。「そこは敷地の大小に関係なく、値段が同じ。土地代がないのにびっくりしました。空間に価値を見出す考え方がとても面白い」と感じたそうだ。1年かけてリノベーションし、今でも住んでいる。

 「小さい窓から入る光と、そこから見える景色が絵になっているんですね。30年近く経過しても全く変わらない。それがいい」と有元さんは話した。インテリアは古い家具とB&Bを組み合わせたら居心地がよくなったという。

 2つ目に紹介されたのは、キッチンスタジオを構えている田園調布からそう遠くない自宅。築30年の中古マンションで、「ひどい状態でしたが、部屋の窓から見える緑が素敵で、緑があれば大丈夫」と決断した。八木さんがフルスケルトンリノベーションした。躯体のコンクリを巧みに生かしているのが特徴だ。

 3つ目は、キッチンスタジオを兼ねた田園調布の集合住宅の家。敷地の前には緑の空間があり、そこに植わっていた大きなケヤキが伐採されることになったので、周辺の住民と一緒に署名活動を行って残したエピソードも明らかにした。その後、ケヤキが植わっている土地は有元さんが取得し、「欅ガーデン」として近隣住民と管理しているという。有元さんは「植物は力がありますね。街と人を結びつける」と語った。

 4つ目の野尻湖の別荘は66㎡のがけ地に八木さんが設計して建築したもの。暖炉を兼ねた薪の熾火で料理をするととてもおいしいのだそうだ。メンテナンスは大変だが、有元さんは「大変と思ったら住めない。楽しむこと」と語った。

 「葉山」は100坪の敷地に八木さんが持家兼建築事務所として建築したものだ。2年前に竣工した。八木さんは、「最初、土地から探したんですが、予算がなくて無謀にも1,000坪1,000万円で探してくださいと不動産業者さんに頼んだんですが、さすがにそんな土地はなく、何年もかかって予算も上がったので、すぐ裏が山の鳥の鳴き声が聞こえる高台造成地の中古住宅を購入し、それを取り壊して建てました」などと取得の経緯を語った。(八木さん、1,000坪1,000万円なんて、山林ならともかく調整区域でも首都圏では買えるかどうか)

 記者は、話を聞きながらいつものように値段をはじき出した。これは書かないが、新築なら億単位の値段がするはずだ。

 二地域居住どころか多点居住を実践できるのは、もちろん経済的な余裕が最大の理由だろうが、自宅が仕事場にできる職業だからだと思う。有元さんは「私は外食などしませんから、コロナで変わったことは全くありません。家の中に1日中いても平気です」、八木さんは「私は自宅が仕事場ですから」とそれぞれ語った。

 5つの住宅に共通するのは、自然や街とのつながり、緑の借景だった。設計・デザインで参考になるのは、「自宅」の収納は天井までとはせず、数十センチの空間を設け、その部分を鏡張りにしていることだ。限られた空間を広く感じさせる工夫だ。これは新築でも中古でも生かせる。

 有元さんが最後に語った「何事も工夫次第。〝身の丈〟が大事。料理も考えることと、その前に感じることが大切です。調味料でも、例えば醤油。なめてみて感じることです。そして材料は何だろう、どうして運搬されるのだろうと考えることです」というのがとても印象に残った。

◇      ◆     ◇

 記者はFRKがこの種のセミナーを行っているのを全然知らなかった。視聴の案内もFRKではなく、ファシリテーターとして参加している小野さんのケアリングデザイン事務局からだった。小野さんとはしばらくお会いしていないので、どのようなことを話すか、とても興味があり視聴することにした。西武ライオンズのオープン戦を観ながらの視聴だったので、前段の記事は間違っている部分もあるかもしれない。ごめんなさい。

 小野さんに初めてお会いしたのはもう13年も昔だ。当時、圧倒的な人気になった「アクアリーナ」を始め、「パークシティさいたま北」「フォレシアム」などのインテリア仕様、モデルルームデザインを担当されたのが小野意匠計画代表の小野さんだった。

 素晴らしいデザインに記者は驚愕し、お会いしたくて取材を申し込み、快く受けていただいた。その時の記事も添付した。ぜひ読んでいただきたい。当時の基本性能・設備仕様レベルの高さも分かっていただけるはずだ。今の新築より数段優れている。

 小野さんは2013年にケアリングデザインを立ち上げてから、マンションのモデルルームデザインを手掛けなくなったような気がする。残念だ。また戻ってきてほしい。

 有元さんの料理について。前述したように有元さんを全然存じ上げないのだが、オンライン画像に映っている有元さんをかみさんが観て、「シンプルな料理が特徴で、女性で知らない人はいない。わたしがいつも作っている漬けマグロとアボガドの料理もその一つ」と種を明かした…ン? なるほど、とてもおいしい。かみさんのオリジナルだとずっと思っていたが…。

「モデルルームでは 新鮮な暮らし方の提案が要」小野意匠計画 代表・小野由記子さんに聞く(2008/6/2)

 

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