フージャースアベニューの分譲戸建て住宅地「デュオアベニューつくば吾妻」を見学した。つくばエクスプレスつくば駅から徒歩7分の公務員宿舎跡地に開発された全82区画で、1区画当たり敷地面積が約200㎡(60坪)以上の素晴らしい住宅地だ。
物件は、つくばエクスプレスつくば駅から徒歩7分、つくば市吾妻三丁目の第一種中高層住居専用地域、第二種住居地域(建ぺい率60/70%、容積率200%)に位置する全82区画。1区画当たりの敷地面積は約200㎡(60坪)以上で、価格は6,000万円台~8,000万円台。建物は2×4工法2階建て。施工・設計・監理はエステーホーム。販売代理はフージャースコーポレーション。
2018年から分譲開始され、すべて完売となった。
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取材を申し込んだのは、3月22日付でフージャースホールディングスが筑波大学建築デザイン専攻の学生アイデアを採用した3戸の住宅が完成したと発表したからで、プレス・リリースをコピペして書く記事に価値はないと判断し、そもそもこの住宅地がどのようなものか全然知らず、自分の目で確認するためでもあった。
現地は、つくば駅出口(A2)すぐの中央公園・中央図書館・美術館・つくばエキスポセンターを抜けた住宅地としては一等地。記者はつくば駅圏のマンションを10件くらいは取材しているが、このような低層住宅街が駅近にあるのは全然知らなかった。他の出口はみんな商業エリアだ。
住宅地にたどり着いたとき、その素晴らしさに圧倒された。何が素晴らしいかといえば、いかにも戸建て住宅街らしいゆったりしたオープン外構&電線地中化の街づくりだったからだ。最近見学するのは敷地が30坪、広くてもせいぜい40坪くらいのものばかりで、敷地が60坪もある最近の大規模住宅地は、小田急不動産の「南大沢」しか知らない。
ランドスケープデザイン・住戸デザインもいい。同社の戸建てのデザインが10年前くらいに一変したのはよく知っている。設計・施工を今回のエステーホームなど(他では津田産業)に切り替えたからだ。
街並みをみて、見学の目的の一つは達成された。今回を見逃していたら、ずっと知らないままになっていただろう。やはり記者は現場見学が大事だ。
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もう一つの見学の目的である学生さんのアイデアについて。これは、2018年、同大学芸術専門学群・建築デザイン演習および同大学院芸術専攻デザイン領域群・建築デザイン特別演習の一環として「住み継ぐ家」をテーマに企画・設計コンペを行い、39名の学生・大学院生の提案のうち優秀作3案を選び、その設計意図とデザイン提案を活かした住宅3棟を設計・施工したものだ。
最優秀賞に選出された染谷美也子さん(芸術専門学群3年生、当時)設計の「ハウス・オブ・プランツ」は、居間や食堂と庭の空間を一体としてデザインしたのが評価された。染谷さんの案は、東京建築士会開催の「第18回 住宅課題賞2018」の審査員賞である「高橋賞」を獲得している。
優秀賞に選出された安喜祐真さん(芸術専攻博士前期課程1年生、当時)設計の「土間のある家」は、玄関から台所にかけて土間空間を広く取った大胆なプランが、リュウ・T・ペニーさん(豪・クイーンズランド大学4年生・短期留学生、当時)設計の「本棚のある家」は、知的な仕事に携わる住民が多いと考えられるつくば市に建つ住宅ならではのアイデアがそれぞれ評価された。
この3戸のうち、染谷さんとリュウさんの提案住宅を見学した。安喜さんの提案を具現化した住戸はすでに入居済みで見学できなかった。
正直に書く。同社は不特定多数に売る建売住宅だから勇気がなかったのだろう。学生さんのプランは一部しか採用していないのは残念だった。
しかし、3人の方は悲観することなどない。みんな素晴らしいし、入選しなかった方も多分独創的な提案を行ったはずだ。入選することだけが目的でない。その過程が大事だと思う。
さて、「ハウス・オブ・プランツ」は、離れの子ども部屋(仕事場などにもなるはず)を提案しているのがいい。デベロッパーは良さを理解していても売れ残りを心配し採用するところは少ないが、記者はかつて、西武不動産が「所沢」の1億円以上の住戸に素晴らしい離れを採用したのを見学し、そのほかでもいくつか見ている。30坪の敷地では無理だが、この種のプランはもっと増えていい。
もらった資料では、染谷さんは2階に子供部屋とほぼ同じ広さの浴室を提案している。これは資料には記載がないだけで、浴室だけではないはずだ。何に使うのだろうか。
リュウさんの提案は記者も大賛成。家全体が書庫のようだ。しかし、リュウさん、造りつけの書棚を建売住宅で提案するわが国のデベロッパーはほとんど皆無です。どのような本を読んでいるか、人に知られたくない人もたくさんいます。これが課題だと思います。絵画、その他置物などにも対応できるといいと思います。
安喜さんの「土間」の提案は、ハスウメーカーやデベロッパーもよく行うプランだ。実際に建てられた住宅はリビング・ダイニングに面したところに「テラス」として設置されているので、安喜さんの意図とは少し違うのではないか。安喜さん、これも許してやっていただきたい。記者も「土間」は内と街や隣近所の人たちとの外を緩やかにつなぐ空間だと思っています。