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2021/07/16(金) 17:52

個人「不動産エージェント」の普及を 〝先進企業〟3社が合同セミナー

投稿者:  牧田司

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左から豊永氏、水智氏、本田氏(虎ノ門ヒルズビジネスタワーで) 

 TERASS、ケラー・ウィリアムズ・ジャパン、リストサザビーズインターナショナルリアルティの3社は7月15日、報道陣向け「不動産エージェント合同セミナー」を開催した。個人エージェント(仲介者)が大半を占め、で社会的地位も高い米国の「不動産エージェント」をわが国でも普及させようと〝先進企業〟3社が手を組んでアピールしようというのが目的のようで、話はとても面白く説得力があり、記者はすっかり支援者になった。

 セミナーの冒頭、TERASS代表取締役社長・江口亮介氏、ケラー・ウィリアムズ・ジャパン代表・寺田香織氏、リストサザビーズインターナショナルリアルティ広報・市原奈津美氏がそれぞれ「不動産エージェント」の導入背景や実績などについて説明。

 江口氏は、2012年にリクルートに入社し、SUUMOの広告企画、商品戦略などに関わり、2019年4月、「もっと自由に働ける環境を作りたい」とベンチャー企業として同社を起業。日本でも様々なサービス分野で店舗からポータル、個人経済へと大きな流れが生じており、不動産仲介業でも同じ流れが起きるのは必至と語った。コロナ禍が追い風となり、同社の2021年2月現在の累計仲介取扱高は34.2億円となり、2023年3月までにエージェントを500人に増やす計画を掲げている。

 寺田氏は、ケラー・ウイリアムズ(KW)の2020年度のエージェント+スタッフは約19万人、取引数は約126万件、取引高は約44兆円、加盟店は1,060+店と世界最大の規模を誇り、2019年12月に日本に進出してからKW TOKYOだけでも約50名のエージェントが活躍しており、計画中も含めて7店舗で展開すると語った。

 市原氏は、同社はオークションハウス「サザビーズ」を起源とし、高級不動産売買の取引を得意としており、北海道から沖縄まで全国各地の物件案内や顧客対応が柔軟に行え、働きやすい環境を整えるため2021年4月にエージェント制度を導入したと話した。正社員とエージェントの雇用関係も選択制で柔軟に対応しており、宅建の資格がなくても現地案内や現地調査を行えるのが特徴のようだ。近い将来50人体制に増やす計画だ。

 引き続いて、江口氏をモディレーターに、ケラー・ウィリアムズ・ジャパン所属の豊永美悠氏(36)、TERASS所属の水智崚氏(30)、リストサザビーズインターナショナルリアルティ所属の本田貴大氏(35)によるトークセッションが行われ、それぞれエージェントを選択した動機・目的、お客さんの反応、課題などについて語り合った。

 豊永氏は、約60万人のフォロワーを持つインフルエンサーとしても活躍しており、オーストラリアでライセンスも取得している。「結婚-妊娠-出産-子育て-介護といった生き方とは異なるもっと多様性に富んだ継続できる働き方があるのではないかと、8年前、オーストラリアに住んでいたときエージェントになることを決断した」と語り、顧客とは売買成立後も付き合いが継続できており、「女性の方がどんどん参加してほしい」と呼び掛けた。

 水智氏は、「不動産業界が大嫌いな住宅購入専門エージェント」という肩書がついており、「不動産業界は大きな課題を抱えている。サラリーマンは役割が分担されており、利益を上げるためのノルマも課せられている。これでいいのかとずっと考えてきた。もう自分でルールを決めてやるしかないと決断し、購入者サイドに特化してエージェントを始めた。働き方の選択肢が増えることは業界のためにもなるはず」「前職では1日11~12時間の勤務時間と往復2時間の通勤時間を要した。無駄も多かった。今では以前と比べ4分の1くらいの業務量で、前職と同じくらいの報酬が得られている」と語った。水智氏は購入者向けのユーチューブの発信にも力を注いでいる。

 本田氏は、同社のトップセールスマンにもなった経歴の持ち主で、「10年近く営業職に就いてきたが、いろいろな方とお付き合いするうちに不動産営業だけでは満足できなくなってきた。もっと楽しく面白い人間になろうと。そこで会社とも相談してエージェントになった。雇用されているときのように休日の申請を出さずに済み、好きな時に旅行もできる」と、現在のエージェントに満足しているようだった。

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江口氏

◇       ◆     ◇

 「不動産エージェント」の将来性を暗示するかのような、実に楽しい分かりやすいセミナーだった。

 前の取材を済ませ、会場となっている「虎ノ門ヒルズビジネスタワー」に着いたのが12:30頃。セミナーまで1時間30分の空きがあった。まず一服と喫煙室に入ったら、だしぬけに「開所利用のルールをお守りください。ルールが守られない場合は、予告なく閉鎖させていただく場合がございます」と、すぐに合成とわかる慇懃無礼な声を背後から浴びせかけられた。小生に向けられた声かと思ったら、そうではなく1分間に10回も繰り返した。

 エンドレスでしゃべらされる機械も大変だなあと同情しつつ、残りの時間をどうするか思案し、ひとまず「虎ノ門ヒルズ」のガーデンを散策してから、コロナから逃げるため3階にあるオープンタイプのレストランでノンアルコールの白ワインとビールを飲んだ。ワインはぶどうジュースそのもので、ビールはホップの味はしたが何だか炭酸が強く薬草の香りがしたので満足できなかった。

 そんな後だったので、セミナーの1時間というものはイライラが雲散霧消し、本物の酒を味わったようなとても爽快な気分になった。

 主催者のその後の配慮もよく行き届いている。いつでも何度でもセミナーの模様を視聴できるようYouTubeのURLメールが送られてきたし、追加の質問にも答えるという。これほど丁寧な対応は10に一つあるかないかだ。

◇       ◆     ◇

 ただ一つ、「不動産エージェント」が消費者から圧倒的な支持を得るには大きな壁・課題があるような気がする。「安心・安全」の取引が担保できるのかという点だ。アメリカではエージェントが当たり前になっているといっても、わが国では男女を結びつける仲人のような売り手と買い手の双方から報酬を得るシステムが定着している。その是非はともかく、企業の看板が消費者の「安心・安全」を保障してくれるのは事実だ。

 一方で、エージェントは、弁護士のような仕事ではあるが、法的には規制するものはないはずで、悪意のエージェントをどう排除するのかという課題は残る。そうでなくとも不動産取引にはトラブルがつきものだ。本物の詐欺師というものは、自分が騙していることを自覚していないから始末が悪い。額が額だけに、取り返しのつかない事件にも発展しかねない。

 とはいえ、弁護士資格のように難しい資格制度を導入するのは現実的ではないし、宅建資格でいいかどうかについても異論がでるはずだ。米国はどうなっているかわからないが、米国方式がそのままわが国に通用するのか。今度はこれをテーマにセミナーを開いてほしい。さらにまた、不動産流通会社に属している営業マンを加えたセミナーを開けば参加者が殺到するのではないか。

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虎ノ門ヒルズステップガーデン&オーバル広場

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