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2021/08/31(火) 12:00

「しつこく繰り返し」仕上げる月例レポート トータルブレイン副社長・杉原禎之氏

投稿者:  牧田司

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杉原氏

 読者の皆さんは、トータルブレインの「月例レポート」をご存じか。記者は故・久光龍彦社長には長谷工コーポレーション時代から懇意にしていただいており、久光氏が1999年10月に同社を設立された以降も定期的にお会いしていたので「月例レポート」の存在は知っていたが、中身はほとんど知らなかった。お会いしてもそのまま飲み会になだれ込むパターンがほとんどだったし、レポートはマクロテータを寄せ集め、久光氏の独自の視点で分析しまとめたもので、契約先のデベロッパー幹部との会合に携える参考資料の類だろうとしか考えていなかった。

 ところが今年2月、同社取締役副社長執行役員・杉原禎之氏(58)から「2020年 首都圏マンション販売 実態検証」と題した月例レポートを頂いて驚愕した。

 A4判20ページに 各月ごとの首都圏マンション市場動向など 他の調査会社も発表しているデータの分析のほか、全供給物件303物件のうち、同社のデベロッパーへの独自の売れ行きヒアリング調査によって「販売好調」と回答があった110物件のデータと好調要因が表にしてまとめられ、好調要因や苦戦要因の分析、所見が述べられていたからだ。この種のレポートは他ではまずないはずで、とても新鮮に映った。

 そして先日、今度は「2021年前半戦 首都圏マンション市場総括 及び後半戦以降の課題と展望」と題したレポートをもらった。

 体裁は2月にもらったものと同じで、2021年前半(2020.12~2021.6)の全供給232物件のうちヒアリングの回答が得られた197物件(全物件に占める割合84.9%)について分析を加え、「販売好調」と回答があった105物件の概要や好調要因が綴られている。回答率84.9%というのが凄いし、初めて聞くデベロッパーの物件もたくさんあった。

◇       ◆     ◇

 さらに驚いたのは、月例レポートは、もちろんスタッフの手を借りてだが、杉原氏が一人でまとめ上げたものであることを聞かされたことだ。

 杉原氏は、久光氏が会社設立する際に長谷工を辞め、一緒にトータルブレインを設立した最古参の一人だ。杉原氏とはこれまでもマンション市場について情報交換し、久光氏らと同席した飲み会で歓談もしているが、会社の中でどんな業務に携わっているのかなど個人的なことはほとんど知らなかった。

 その杉原氏が、1月と8月を除く年10回のレポートを2000年4月の第1号から2021年9月現在、通算216号のレポートを自ら作成していたことを初めて知った。

 そして今、杉原氏は久光氏が行ってきた毎日3~4社、月に50社のクライアント回りを引き継いでいる。もちろん自ら作成した月例レポートを携えて、刻々と変わるマンション市場について語るためだ。

 朝早く出社するのも久光氏とよく似ている。「朝7時前には出社しています。すぐレポート作成にとりかかりますが、毎回1ページ目からレポートを読み直しするのを日課にしています。毎回 最初から読み直していくのが大事で、そうすると、言いたいことが伝えきれていないとか、言い回しが悪い部分や 新しい発見などが見えてきます。毎日文章の中身を書き換えることになりますが、しつこく繰り返すことで、レポートの中身もより濃くなると思います。」

 -記者は実践できないが、これは物書きには参考になるはず。記者が好きな作家の丸山健二さんは、小説(文章)は少なくとも7回は校閲すべきと作家志望に説いている。

 レポートのテーマ選びにも心を配っている。「デベロッパーが悩んでいる事や、興味がある事がテーマでなければ相手(デベロッパー)にも伝わりませんし、そもそも聴いてもらえません。テーマ選びにはプレッシャーがかかりますが、四方八方アンテナを張り巡らせています」

 そんなに働いて大丈夫かと思ったので聞いたら、「これまで病気で休んだことはありません」とのことで、「仕事を終えるのは夕方、遅くとも6時ごろ迄には終えます。1日集中してものごとを行えるのはせいぜい3時間くらいですので、夜遅くまで働いても生産性は上がりません。仕事後は よくジムでサウナに入りますが、大汗をかいて1.5~2キロくらい体重が落ちますので、家で500ミリ缶のビール3本を飲むのがストレス解消法です」と語った。

 杉原氏のお勧めは、クラフトビールの「よなよなエール」と聞いたので早速飲んでみた。350ミリリットル入り1缶250円くらいで少し高いが、じっくり味わって飲むのにはいい。たまに飲むことに決めた。

◇       ◆     ◇

 久光氏は一昨年末、稼ぎ頭の営業担当の佐々木睦氏を社長に、そして最古参・最年長の杉原氏を副社長に、専務には設計担当の井上文孝氏と管理担当の高橋郁夫氏を据える人事を決めた後、フィリピンの海で好きなスキューバダイビングを終え船に上がった直後に急死された。

 久光さん、小生のような年寄りの痩せの太鼓腹(判か)など何の突っ張りにもなりませんが、後任の優秀な方々に任せて大丈夫。業務受託50社、年間120~130件のマーケティング調査受託というのは過去最高ではありませんか。「業績は順調」と杉原さんから聞きました。永遠にお眠りください。

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