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2021/10/30(土) 13:37

23区のマンション「3LDK」75㎡の不思議「≠」専有面積そのまま公表 東京カンテイ

投稿者:  牧田司

 不動産流通研究所の10月29日付「R.E.poot」は「首都圏の3LDK新築マンション、面積徐々に縮小」の見出しを付け、次のように報じている。

「東京カンテイは28日、全国主要都市における2000年以降の3LDK新築マンション専有面積の推移を調査、分析結果を公表した。

 首都圏における20年(9月まで)※の3LDKマンションの平均専有面積は、東京23区75.05㎡、横浜市71.39㎡、さいたま市70.15㎡、千葉市71.98㎡。タワーマンション等で面積の広いプレミアム住戸が設定されるケースも多いことから、23区が最も広かった。他の3都市は60㎡台目前となっている」

 ここまで読んで、記者は何かの間違いではないかと思った。「LDK」は単に居室の数のみを表示するもので、専有面積と「≠」ではないとはいえ23区の3LDKが最大であるはずがないと。

 続けて「R.E.poot」は次のように書いている。

 「東京23区の面積帯別構成比率の推移をみると、50㎡台以下が1.1%(20年通年比0.1ポイント低下)、60㎡台前半が7.1%(同0.8ポイント低下)、60㎡台後半が24.2%(同3.2ポイント上昇)、70㎡台前半が38.7%(同4.7ポイント低下)、70㎡台後半10.8%(同1.0ポイント低下)、80~90㎡台12.4%(同2.6ポイント上昇)、100㎡以上5.7%(同0.6ポイント上昇)」

 この部分だけ読むと、80㎡以上の供給が増えているほかは全て減少しているので、23区の3LDKが他市より広いのは、この80㎡以上の3LDKをカウントしているからだろうと判断した。

 参考までに紹介すると、建築基準法には居室(LDKも含む)の広さに関する規定はなく、あるのは床面積の7分の1以上の採光のための開口部や窓を設けること、換気のための開口部の面積を床面積の20分の1以上確保すること、天井高を2100ミリ以上とすることのみだ。

※「20年(9月まで)」とあるのは「21年(9月まで)」の誤り

◇      ◆     ◇

 まさか東京カンテイがそのようなデータを公表するわけがないと思ったので、元データに当たった。記者の推測通り、「R.E.poot」の報道は正確ではなかった。東京カンテイのレポートは次のようにある。

 「東京23区における専有面積別の新築マンション供給シェアの推移を見てみると、直近にかけては70㎡台(特に広めの「70㎡台後半」)のシェアが縮小する一方で、「60㎡台後半」の存在感が増している。プレミアム住戸に該当する「80㎡台~90㎡台」と「100㎡以上」の合計シェアは10%程度まで縮小する時期もあるが、この10年間では概ね15%~20%の水準を維持している」

 つまり、70㎡台のシェアが縮小し、「『60㎡台後半』の存在感が増している」(存在感が増すとは「幅を利かす」という意味だろう)ということだ。なのに、3LDKの面積は23区が最大となっているのは、前段で書いたように「≠」の専有面積とLDK表示を機械的に処理しているからだ。

 では、10年以上前の23区の専有面積はどうだったか。リーマン・ショック前の2004年⇒2021年(9月まで)の供給比率は、50㎡以下0.5%⇒1.1%、60㎡台前半4.5%⇒7.1%、60㎡台後半11.2%⇒24.2%、70㎡台前半26.2%⇒38.7%、70㎡台後半24.4%⇒10.8%、80㎡台~90㎡台29.3%⇒12.4%、100㎡以上3.9%⇒5.7%だ。全体として専有面積が大幅に縮小していることが読み取れる。横浜市も同様で、専有面積圧縮は著しい。

 面積と価格は不可分なので東京カンテイのデータを紹介すると、2010年の首都圏マンションの平均専有面積は65.40㎡で、平均坪単価は202万円だ。2020年の専有面積は61.09㎡へ6.6%(2.6畳大)縮小しており、坪単価は202万円から328万円へ62%上昇している。

 問題は面積と価格だけではない。肝心の基本性能・設備仕様も大きく後退している。例えば敷地面積、用途地域、免震、二重床・二重天井、リビング天井高、外階段側のアウトフレーム、アルコーブ付き、スロップシンク、御影石キッチンカウンター、食器棚、床暖房、食洗機、ミストサウナ、突板フローリング、ワイドスパン…。

 東京カンテイにはこれらも調査して公表していただきたい(データは持っているはず)。価格と面積、基本性能・設備仕様は切り離して語れないはずだ。

 

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